こんにちは、講師のカズです。
少年サッカーの指導で、1対1の守備は多くの方が悩むところかと思います。
僕自身、チームやカテゴリーが変わるたびに、1対1の守備のところは気になりますし、正直、苦戦もします。
例えば、以下のように感じる方もいるかと思います。
・相手がボールを持っている時に、プレスをかけに行けない選手がいる
・1対1の練習では良くなるのに、試合になると行けない
・格上や同じレベルの相手だと、寄せが甘くなってボールを奪えない
以前、読者の方から以下のようなご質問を頂きました。
「少年団の5年生でパパコーチをしています。
プレスをかけに行けず、ボールを奪えない、守備の強度が低い選手に、どのようなアドバイスをすればいいでしょうか。
1対1の練習では『かわされてもいいから、まずプレッシャーをかけて相手の自由を奪おう』『ボールではなく相手にぶつかろう』と声をかけていますが、格上や同レベルの相手だとうまくいきません。
オフザボールのポジションや警戒の意識が低くて、プレスが遅れているのかもしれません。」
試合の状態を見ないと何とも言えない、というのは常にそうですが、とても丁寧なご質問でした。
この記事では、1対1の守備を「体の使い方」「基準値」「チーム全体のプレッシング」「選手の心理」という角度から、僕がジュニア年代でどう指導しているかを解説します。
この記事を読めば、「1対1の練習はしているのに試合で行けない」の理由が、いくつか見えてくると思いますので、最後までご覧ください。
1. 1対1の守備は「体を使えているか」で見る

① 足だけ出してかわされるか、体を寄せられないか
小学生の1対1の守備は、大体2パターンかなと思います。
足だけ出して、あっさりかわされるか。
そもそも体を寄せられないか。
もちろん、激しく行くけれど飛び込みすぎてかわされる子もいます。
ただ、多くの場合、問題は「体を使えていない」ところにあると思います。
全身を使って相手の体を止められない、ということです。
② アプローチ、止まる、寄せる
基本の考え方は、アプローチして、相手がコントロールミスをしたら一発で狙う。
相手の足元にボールがちゃんと収まったら、一回止まる。
そこから寄せる。
アプローチ、止まる、寄せる、の3つのプロセスです。
アプローチして、コントロールの瞬間に突っ込んで止まれず、ワンタッチで剥がされる。
これも結構あります。
そういう選手には、「アプローチしたら止まれ」というところにフォーカスします。
止まった後、間合いが遠すぎるとプレッシャーになりません。
ある程度寄せて、手と足を同時に出して相手の体ごと押すように止めに行くか、相手がドリブルで外しに来たところで体を寄せてボールを奪う。
このあたりが基本のキーファクターになると思います。
③ 裏技:練習中は腕やユニフォームをつかんでいい
それを伝えてもうまくいけない子は、結構います。
腕や腰を使わず、つま先だけで守備をしてしまう子が多い場合、僕は練習のやり方を変えます。
1対1の練習で、「相手の腕やユニフォームを引っ張っていいから、止めてみな」と言います。
もちろん試合中にやっていいという話ではありません。
練習の中だけです。
そうすると、止められないんですよね。
反則をしていいと言われても止められない。
そもそも腕が出ていないからです。
昔から「サッカーはボールを使った格闘技」という表現がありますが、ヨーロッパや南米では、子どものうちから全身を使って体をぶつけ合うのが当たり前です。
一方で日本の子どもは、サッカーは足でやるもの、と思っている選手が多いと感じます。
最初は止められない。
でも、引っ張ったりしながら何とか止まるようになってくると、自然と腕を使ってブロックする癖がついてきます。
僕はこれを、中学生でも、一時期のフェーズとして意図的にやることがあります。
④ キープされた時は「ボールを蹴りに行け」
ボールをキープされて体を入れられた時に、体が離れてしまう子もいます。
その時は、後ろから押すのではなく、「ボールを蹴りに行け」と言います。
ボールを蹴りに行くと、自然と腰が深く入って、相手の体にも触れます。
ファール気味に見えることもありますが、それぐらい行かないと相手にはプレッシャーになっていない、という表現はよくします。
試合中にファールになっているなら、「もう少しこう腕を使いなさい」と修正していきます。
2. 強度の基準値は、どこに置いているか

① スペインで感じた「危ないくらい」の強度
僕がスペインに行く前、日本の子どもはインテンシティ(プレイの強度)が低い、と言われる時代がありました。
実際にスペインに行って見てみると、本当に強度が高い。
機会があれば一度生で見てほしいのですが、一瞬で分かります。
結構、危ないくらい来ます。
留学中の授業で面白かったのが、ドリブルのデメリットの一つに「怪我をするリスクがある」という項目があったことです。
ドリブルをすると、相手が思いきり足を刈りに来るからです。
向こうの文化では、それぐらい激しいものだという前提があるのだと思います。
② 周りが低いと、それが当たり前になる
僕がバルセロナのスクールでコーチをしていた頃、国内で練習してからスペイン遠征に行ったことがあります。
日本のスクールでもスペイン人が指導していたのに、いざ大会に行くと、やっぱり強度が低い。
日本に戻ったら、もっとガンガン行かせよう、となりました。
周りが全体的に強度が低いと、それが当たり前になってしまいます。
ファールがいいとか悪いとかではなく、下手をするとファールになるかもしれないけれど、それぐらい球際に行かなくてはいけない。
その感覚の基準値が、日本の子どもたちの場合は低いのかなと感じます。
普段の環境づくりで、基準をどこに置くかの話かなと思います。
3. プレスが遅れるのは、チーム全体の問題かもしれない

① 「ジェガ・タルデ」=到達が遅い
ご質問にあった「オフザボールのポジションや警戒の意識が低くて、プレスが遅れているのかも」は、可能性があると思います。
スペイン語で「ジェガ・タルデ」という言い方があります。
直訳すると「遅く到達する」。
守備のプレッシングでアプローチが遅れて、外される、ズレていく現象のことです。
名詞のように使われるくらい、よく起きる、やってはいけない現象です。
② ディテールだけをコーチングしていないか
僕の感覚では、チーム全体のプレッシングをちゃんとやっているジュニアのチームは、とても少ないと思います。
試合中のコーチングを聞いていると、フォワードの追い方について「縦を切れ」「中を切れ」とディテールを言うシーンはよくあります。
ただ、その後にパスが出て、次の選手が遅れる、チームとしての連動がうまくいっていない、というところにはあまりフォーカスされません。
つまり、チーム全体のプレッシングの考え方が、選手に落とし込まれていないのだと思います。
僕はあまり「縦切れ」「横切れ」を言いません。
全体のオーガナイズ、全体のコーディネートを作る、という感覚です。
4年生くらいで基本的な全体のプレッシングの考え方をやって、5、6年生になったら、相手のフォーメーションに応じたプレッシングの使い分けをやります。
③ 攻撃の問題は守備に、守備の問題は攻撃に
サッカーは複雑系だと思っています。
グアルディオラがバルセロナの監督だった頃に、「攻撃の問題は守備にあり、守備の問題は攻撃にある」という話をしていましたが、まさにそういうことだと思います。
チーム全体のプレッシングをコーディネートすることで、1対1が強くなる。
逆に、1対1にフォーカスすると、別のところが良くなる。
そういうものなので、「1対1の守備をやっているのに、試合で全然行けない」という経験は、皆さん絶対にあると思います。
意外と、逆から考えてみるとうまくいくかもしれません。
4. 1対1の練習と、ロンドの中の1対1は心理が違う

① 「パスがあるかもしれない」で行けなくなる
1対1の練習をして、守備の対応が良くなることはあります。
試合でも、サイドで「これは1対1だ」と選手が認識できる局面では、対応が良くなります。
でも、例えばボランチが相手のトップにアプローチに行った時。
1対1のように見えて、局面の一部です。
1対1の練習では、守備側は「パスはない」と分かっているので、必ずドリブルしてくる相手への守備になります。
ところが、4対2のロンドの中で守備をすると、「ドリブルなのかパスなのか分からないから、強く行けない」となります。
これが、試合中にも起きているかもしれません。
アプローチした選手の心理の中に「パスが出るかもしれない」があるので、うまく寄せられず、足を出してパスカットを狙う動きになって外される、ということです。
② パスは出されていい。奪い切ることだけを考える
僕はその時、アプローチした選手にはこう言います。
「確かにパスがあるかもしれないけれど、パスを出されるのは別にいい。パスを奪おうとするな」
「まず、その選手からボールを奪うことだけを考えなさい」
パスカットを狙うのは、後ろの2人目、3人目の選手です。
だから、アプローチした選手は体をグッと寄せて、パスは出されていい。
ボールを奪い切ることだけを考える。
そういう指導の仕方をしています。
③ 矛盾させない。ロンドでもポゼッションでも「1対1のつもりで」
1対1の練習での1対1と、ロンドの中の1対1の局面は少し違うので、トレーニングは分けて考えた方がいいと思います。
ただ、その時に矛盾が生じると、選手は混乱します。
ロンドの時には「飛び込むな」と言われ、1対1の練習では「行け」と言われる。
これでは、選手の頭の中で矛盾します。
ロンドだろうがポゼッションだろうが、相手のボールホルダーにアプローチした選手は「1対1のつもりでやりなさい」。
そういう一貫性を持たせるコーチングが必要になると思います。
まとめ
・小学生の1対1の守備は「足だけ出す」「体を寄せられない」の2パターン。問題は体を使えていないこと
・基本はアプローチ、止まる、寄せる。止まれずに剥がされる子には「止まれ」にフォーカス
・練習中は腕やユニフォームをつかんでいい、と言うと、腕が出ていないことに気づく。キープされたら「ボールを蹴りに行け」
・強度の基準値は環境で決まる。周りが低いと、それが当たり前になる
・プレスが遅れる(ジェガ・タルデ)のは、チーム全体のプレッシングを落とし込んでいないからかもしれない。攻撃の問題は守備に、守備の問題は攻撃にある
・1対1の練習とロンドの中の1対1は心理が違う。「パスは出されていい。奪い切ることだけ考える」で、矛盾させない
この記事では、1対1の守備が弱い、プレスに行けない選手への見方と指導について解説しました。
正直に言うと、僕はプレッシングは好きですが、1対1の守備を教えるのはそこまで得意ではありません。
攻撃の方が好きなので、守備をあまりやらない、という僕の悪い癖もあります。
だからこそ、「こうやったらうまくいった」というやり方があれば、ぜひ教えてください。
皆さんの指導現場でも試してみてください!


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講義動画と章立て、スライド、関連記事を1つのページにまとめています。

なお、チーム全体のプレッシングは、盤面に描いて「誰が行って、誰が2人目か」を選手と共有すると、落とし込みやすくなります。
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