フォーメーションが変化する【少年サッカー】自己組織化で読み解く

こんにちは、講師のカズです。

少年サッカーの指導では、フォーメーションをどう決めるかという話がよく出てきます。
実際、僕のブログの中でも一番読まれているのが、8人制のフォーメーションに関する記事です。

例えば、以下のように感じる方もいるかと思います。

・フォーメーションを決めても、試合が始まると形が崩れてしまう
・配置どおりに動かそうとすると、選手のプレイが窮屈になっていく
・プレイモデルやポジショナルプレイの話が、現場の言葉にならない

僕自身、6年ほど前まではプレイモデルにこだわりすぎて、選手の自由度や即興性を奪っているな、と感じることがありました。

この記事では、フォーメーションを「固定された配置」ではなく「変化するもの」として扱う考え方を、複雑系や自己組織化といった理論背景を交えて解説します。
一般的なフォーメーション論とは少し違う角度の話になりますが、読み終わる頃には、フォーメーションというものの解像度が少し上がると思いますので、最後までご覧ください。

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1. フォーメーションは「プレイモデルの1つ」です

①フォーメーションを見ると、目指すサッカーが見える

フォーメーションと聞くと、多くの方はメリットとデメリットの話を思い浮かべるかと思います。
そもそも備わっている機能性があり、足りない部分はオプションとして足していく。僕もブログやYouTubeで、そういう話を散々してきました。

もう少し違う言い方をすると、フォーメーションもプレイモデルの1つです。
プレイモデルという大きな観念の中に、フォーメーションの設定という項目がある、という関係です。

だからフォーメーションを見ると、そのチームが目指すサッカーが、ある程度わかります。
4-4-2ならしっかり守備ブロックを作っているな、というように、形には特徴が出ます。

②僕は、少し違う扱いをしています

ただ、僕自身はフォーメーションを、少し違う扱いにしています。

今の中学3年生の子たちが小学5年生だった頃なので、5年ほど前になりますが、そこからずっと「フォーメーションが試合の流れで変化するサッカー」を現場で実践してきました。
当時は「フォーメーションがない」という言い方をしていましたが、正確には、変化し続けるプレイモデルということです。

③プレイモデルが、選手の自由を奪っていました

なぜそこにたどり着いたかというと、きっかけは自分への違和感でした。

6年ほど前、僕はプレイモデルにこだわりすぎるあまり、選手の自由度や即興性が失われているな、と感じていました。
フォーメーションというのは、突き詰めるほど、ある種の固定化されたものになっていきます。

その頃、海外の先端の理論を輸入するのではなく、自分でクリエイトすることはできないかな、と考えていました。
おこがましい話ですが、未来の戦術を自分で作れないか、ということです。

当時はフォーメーションの噛み合わせや、ポジショナルプレイといった配置的なアイデアが多く語られていました。
僕はそれよりも、もっとぐにゃぐにゃとしたものを考えていました。アメーバのように形を変えながら、その場その場で即興的にプレイを生み出していく。そういうサッカーになっていくのではないか、と。

2. フォーメーションが変化するとは、どういうことか

①8人制で、3-3-1が2-4-1にも2-3-2にもなる

まず取り組んだのは8人制でした。

選手が臨機応変にポジショニングを取ることによって、ある瞬間は3-3-1、次の瞬間は2-4-1、時には2-3-2、時には1-4-2になる。
外から見ると、名前のつけようがない形が、試合の中で勝手に生まれてきます。

大事なのは、それを僕が指示して変えているわけではない、という点です。
選手が自分でポジションを取った結果として、チームの形が変わっていきます。

②これはカオスではなく、自己組織化です

ここで誤解されやすいのが、「決まりがないなら、ただのカオスではないか」という点です。

僕が5〜6年前から考えていたのは、自己組織化です。
シンプルなルールによって、フォーメーションが勝手に変化していく状態を作る、ということでした。

鳥の大群や、イワシの群れをイメージするとわかりやすいかと思います。
選手が相手のポジショニングを見て、自分のポジションを取る。エコロジカル・アプローチの言葉で言えば、アフォーダンス(行為の可能性)を知覚しながら動いている状態です。

その結果、チーム全体としてはまとまりを持つのに、同じパターンは二度と生まれません。

③スライドパズルのように、1つの穴から動きが連鎖する

考え方のイメージだけ、メタファーで共有します。

子どもが遊ぶスライドパズルを思い浮かべてください。
15ピースが並んでいて、1箇所だけピースが入っていない空白があります。その穴があるからこそ、上下左右にピースを動かして、パズルを組み立てていくことができます。

同じように、フォーメーションの中に1つ、意図的に穴を作ります。
その穴を誰かが埋めると、埋めた選手がいた場所に新しい穴ができる。それをまた別の選手が埋める。こうして、スペースを作る動きと使う動きが連続して起こり続けます。

面白いのは、最初にどのピースを動かすかで、その後の展開がすべて変わっていくところです。
そして最終的に、一番遠くにいるピースの動きは、予想しにくいものになります。これが自己組織化と創発を狙ったプレイモデルの、大まかな仕組みです。

具体的にどうルールを設定しているかは、まだ僕自身が現場で検証している最中なので、ここでは考え方までにしておきます。

3. 中央制御とカオスの、あいだを狙う

①決めすぎると機械になり、決めなさすぎるとカオスになる

フォーメーションやプレイモデルは、細かく設定すればするほど、中央制御的なものになっていきます。
つまり、監督がコントロールする度合いが上がり、選手の動きが機械的になっていきます。

かといって、プレイモデルもフォーメーションも決めません、とすると、今度はカオスになります。

一番重要なのは、トップダウンの中央制御が強すぎてもいけないし、カオスになりすぎてもいけない、という点です。
そのギリギリのところを狙っていくことになります。ポイントは、制約をどこまで強めるのか、どこを緩めておくのか、という設計です。

②初期設定のフォーメーションだけは、必ず決める

ここが誤解されやすいところかと思います。

「フォーメーションが変化する」というのは、「フォーメーションは自由でいい」ということではありません。
初期設定のフォーメーションだけは、絶対に設定します。

僕がジュニアでやっていた時は、3-3-1を基本の初期設定にしていました。
そこから状況に応じて選手がポジションを動かすことで、形が変化していきます。

③レジリエンス機能としてのフォーメーション

なぜ初期設定が要るかというと、これはレジリエンス(回復力)を担保する部分だからです。

選手にとって、形が崩れた時にもう一度戻れる場所。
あるいは、形を崩しに行く時の基準となる場所。スタートポジションに近い意味合いです。

だから選手は、迷ったり困ったりしたら3-3-1に戻して、もう一度システムを立て直すことができます。
試合の中でペースを握れない、相手に主導権を握られている、というようにチームのパフォーマンスが下がってきた時に、システムを回復するための機能として働きます。

フォーメーションは、大きな寄りどころであり、プレイモデルの大枠を示すものでしかない。あとは臨機応変にできるかどうか。僕は今、そういうイメージで扱っています。

4. 「ノイズ」が起きた時の練習も、しています

①ボランチに2人入ってしまった時に、何が生まれるか

ここからは現場の話です。

自己組織化を促していると、時々ノイズが入ります。
基本的には同じスペースにかぶらないように、という設定があります。マークを外す動きでも、1人が裏に行ったら1人は手前に、というような形です。

それでも、本来1人しか入らない場所に2人入ってしまうことがあります。外から見ると、これは一種のエラーに見えます。

面白いのは、このノイズが起きた時の練習も、普段のトレーニングに組み込んでいるところです。
例えばボランチの位置に2人入ってしまった時に、そこで想定していなかったコンビネーションが生まれたり、ボランチでオーバーラップやスイッチが起きたりします。

ノイズが起きたから「できない」ではなく、そのノイズに即興性を持って対応する。
そこで、練習していない動きが生まれてくる。これが創発だと、僕は考えています。

②8人制と11人制はフラクタル。変わるのは複雑性だけ

今は同じ考え方を、ジュニアユースでも2年目になります。

僕はいつも、8人制と11人制はフラクタルだと言っています。
つまり、同じサッカーとして扱うことができる、ということです。では人数が増えると何が変わるかというと、複雑性です。

さきほどのスライドパズルで言えば、9マスに8ピースのパズルと、16マスのパズルの違いです。
盤面が大きくなるほど、スライドする動きのパターンは一気に増えます。

実際にジュニアユースでやってみると、複雑性はかなり増しました。
僕が外から見ていても、どうやって動いているんだ、なぜあの選手がそこにいるんだ、ということが起こります。

③外から見ていて、僕自身が驚く瞬間があります

正直に言うと、この形にしてから、僕が一番面白がっているかもしれません。

そんなことが起きるのか、と外から見ていて驚く瞬間があります。
そして同時に、教えない指導とはこういうことか、指導者が中央制御しないと何が起きるのか、ということが、理屈ではなく現場の感覚として体験できました。

5. まずシステム思考を学ぶことを、おすすめします

①エコロジカル・アプローチは、複雑系を土台にしています

ここまでフォーメーションの話をしてきましたが、お伝えしたいのは配置の技術ではありません。

エコロジカル・アプローチやプレイモデルを本当の意味で理解するには、複雑系やシステム思考を理解しておく必要があると思っています。
エコロジカル・アプローチは、人間を適応型の複雑系として定義しています。土台が同じなので、理論が合致するのは当然です。

だから、エコロジカル・アプローチが難しいと感じる方や、プレイモデルがよくわからないという方は、まずシステム思考から学んでみるのがいいかと思います。
これはサッカーの指導に限った話ではなく、他のスポーツでも、組織や教育の分野でも同じかと思います。複雑系を対象にしているものであれば、同じロジックが成り立つからです。

②フォーメーションの解像度が、変わってきます

こういう知識を押さえると、フォーメーションに対する考え方の解像度が上がります。

4-4-2だからトライアングルがない、4-3-3だからこう、3-3-1だからこう。
そういう見方が、僕の中ではあまり関係なくなってきました。形そのものより、その形がどう変化していけるか、という見方に変わっています。

日本人の僕らは、システムや配置の話が好きなところがあるかと思います。
僕の場合は、従来のフォーメーションの概念とは少し違う扱い方をしている、というだけの話ですが、一つの見方として共有してみました。

まとめ

・フォーメーションはプレイモデルの1つであり、固定された配置とは限りません
・8人制では、3-3-1が2-4-1にも2-3-2にも変化していきます。これはカオスではなく自己組織化です
・スペースを作る動きと使う動きが連鎖する、スライドパズルのようなイメージです
・中央制御が強すぎても、カオスすぎてもうまくいきません。そのあいだを狙います
・初期設定のフォーメーションは必ず決めます。崩れた時に戻れる、レジリエンスの機能を持たせるためです
・ノイズ(エラー)が起きた時の練習もしておくと、そこから創発が生まれます

この記事では、フォーメーションが変化するサッカーという考え方について、自己組織化と創発の視点から解説しました。

いきなりチーム全体でやろうとすると難しいので、まずは「1つスペースを空けておく」というところから試してみるのもいいかと思います。
形が崩れることを失敗と捉えず、選手が自分でポジションを取った結果だと見てみると、練習の見え方が変わってくると思います。皆さんの指導現場でも試してみてください!

なお、練習メニューを図で作れる無料アプリ「TRAINING DESIGNER」を配布しています。
スペースの設定や選手の配置を実際に動かしながら作れるので、こういった形の変化を整理するのにも使えるかと思います。
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