少年サッカー【練習がうまく回らなくていい理由】複雑系の指導論

こんにちは、講師のカズです。

少年サッカーの指導では、練習が自分のイメージ通りに進まないと、「この練習はまだ早いのかな」と感じることがあると思います。特に低学年を担当していると、ポゼッションをやらせても団子になってしまって、狙った現象が全然出ない、という場面はよくあるかなと思います。

僕自身、スペインから帰ってきてしばらくは、トレーニングをきれいに進めることにとても多くのパワーを注いでいました。ただ、ここ3、4年でその考え方は大きく変わりました。

しかし、以下のような悩みを持つ指導者の方も多いのではないでしょうか。

・狙ったテーマや現象が、練習でなかなか出てこない
・低学年だと練習がガチャガチャして、意味があるのか不安になる
・自分のイメージを選手に伝えても、うまくいかないことが多い

この記事では、「トレーニングはきれいに進まなくていい」という考え方を、複雑系や自己組織化という視点から解説します。そのうえで、それをジュニア年代の現場でどう落とし込むかまでお話しします。この記事を読んでいただくと、練習がうまく回らない時間の見え方が変わって、日々の指導が少し楽になると思いますので、最後までご覧ください。

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1.トレーニングは「きれいに進まなくていい」という考え方

①指導者のイメージ通りに進める指導の限界

トレーニングをするとき、指導者の頭の中には「この練習はこういう現象が出たらいいよね」というイメージがまずあると思います。例えば4対4+2サーバーのポゼッションなら、広がってパスコースを作って、マークされたら動き直す、といった理想の絵ですね。

僕も15年ほどは、その理想に選手を近づけることを大切にしていました。ただ、そのイメージが先行しすぎると、選手にプレーを強制するような形になってしまいます。そうなると選手は息苦しくなりますし、コーチのイメージに合わせようとして、かえってうまくいかないことが多いかなと感じています。

②サッカーは複雑系だから、線形的には積み上がらない

僕は繰り返し、サッカーは複雑系のスポーツだとお伝えしています。テーマを設定して、現象を出して、フィードバックして、プレーを改善する。この流れはとても線形的です。積み上げれば上手くなる、という発想ですね。

でも、本当にサッカーが複雑系だと考えるのであれば、トレーニングも線形的には進まないはずです。「このトレーニングをやったから、この効果が出た」という因果関係は、実際にはとても掴みにくいものだと思います。だからこそ僕は、いろんな刺激を与えながらも、成果は完全にはコントロールできない、という前提に立っています。

③ただし、局所的には線形的な思考も必要です

複雑系や非線形という言葉を使うと、「では線形的な思考やロジカルシンキングは意味がないのですか」と受け取られることがあります。そんなことはないと思います。ある局所的な場面では、線形的な考え方が必要になることもあります。

あくまで大枠、全体として捉えたときに複雑系である、というのが僕の考えです。矛盾するものではなくて、スケールによって見え方が変わる、というイメージで捉えてもらえるといいかなと思います。

2.「選手を見る」ことから始める指導へ

①イメージを与える指導と、選手から始める指導

トレーニングがきれいに進むというのは、「この練習で選手にこういうプレーをしてほしい」という、指導者のイメージから始まる指導になりがちです。悪いわけではないのですが、最近の僕は全く逆から入るようにしています。

まず選手を見ます。選手がどんなプレーをしたがっているのか、何を優先しているのか、どんなことを考えているのかを観察します。そのうえで「では、こういうアドバイスや促しが必要かな」と考えていく順番です。以前アンダー10やアンダー9を担当したときも、2、3回しか練習していない段階で、まず選手を見ることから始めました。

②団子になる練習にこそ意味がある

例えば5対5+2フリーマンのポゼッションを、小学6年生にやらせると、ある程度それっぽく回ると思います。一方で小学2年生にやらせると、団子になったり、フリーマンが近づいてきたりして、全然ボールが回らないことが多いです。

このとき「この練習はまだ早い」と考えてしまいがちですが、僕はそこが少し違うと思っています。団子になるのは、その年代でそのまま試合中に起きている現象だからです。6年生の現象も2年生の現象も、どちらも本物の現象です。早いか遅いかではなく、その現象からどう紐解くかを考えたいところです。

③一人ひとりに違う言葉をかける

団子になったときに、「全員広がって、ポジションはここ」と教え込むと、指導者のイメージを押し付けることになってしまいます。そうではなく、一人ひとりを見て、違う言葉をかけていきます。

ある選手には「プレッシャーがかかったら、一回ドリブルで運んでから出してみよう」。ある選手には「運んだあとに顔を上げてみよう」。ある選手には「離れてもらうのが上手だから、今度は近づいてもらうこともできるかな」。こうして個人の特徴を見ながら紐解いていく。カオスな時間に見えますが、その先に少しずつポジショニングの改善や声が生まれてきます。

3.自己組織化が、これからの時代に求められる理由

①中央制御で得たスキルと、自己組織化で得たスキルの違い

トップダウンで「広がれ、ここに立て」と与えると、自己組織化は起きにくくなります。中央制御で獲得したスキルは、イレギュラーな状況や細かなパターンに対応しづらく、レジリエンスが下がってしまうと感じています。

一方で、選手自身のイメージから広げていくと、自己組織化と創発を経て、選手が自分たちでポゼッションをできるようになっていきます。同じポゼッションに見えても、そこに至るプロセスが違えば、スキルの質は全く変わってきます。自己組織化的に獲得したスキルは、新しい環境にも適応しながら広がっていきます。

②これからの指導者に求められること

現代サッカーでは、状況の変化に臨機応変に対応できる選手が求められます。だとすれば、ジュニア年代のトレーニングも、テーマを出して現象に当てはめる線形的なモデルだけでは難しいと思います。

むしろ、まずやってみて、そこで起きた現象を素早く分析する。選手の状態や認知を見極めて、そこに寄り添いながら、限定合理性を少しずつ拡張していく。そういうスキルが、これからの指導者に必要になると考えています。会社経営や組織論でも、トップダウンではなく自己組織化が求められていますが、指導も同じ方向にあるのかなと思います。

今日お話しした「複雑系としてのサッカー」については、Kindle本として1冊にまとめています。この記事の内容をさらに深掘りしたい方はどうぞ。

まとめ

今回の要点を整理します。

・トレーニングは、指導者のイメージ通りにきれいに進まなくていい
・団子になる練習も、その年代の本物の現象であり、意味がある
・イメージを与えるのではなく、選手を見て一人ひとりに違う言葉をかける
・自己組織化で得たスキルは、新しい環境にも適応して広がっていく

この記事では、「トレーニングはきれいに進まなくていい」という考え方について、複雑系や自己組織化の視点から解説しました。すぐに180度変えるのは難しいかもしれませんが、まずは練習がうまく回らない時間を、選手を知るための時間として捉え直してみると、指導が少し楽になると思います。皆さんの指導現場でも試してみてください!

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