こんにちは、講師のカズです。
サッカーの指導では、練習と試合をどうつなぐかが、とても大切かと思います。ただ、ロンドやポゼッションをやっているのに、それが試合の何につながっているのかが見えにくい、という場面は多くの現場であるかなと思います。
例えば、以下のように感じる方もいるかと思います。
・4対2のロンドは回るのに、試合の人数になると同じことができない
・練習メニュー同士が、どうつながっているのかが説明できない
・8人制と11人制は、そもそも同じサッカーなのかがよく分からない
僕自身、日本で8人制が導入された頃に「8人制はサッカーじゃない」という議論を現場で聞いて、違和感を持っていた時期があります。
この記事では、僕の教材『複雑系としてのサッカー』にも書いている「フラクタル」という考え方を使って、人数が変わっても同じサッカーと言える理由と、ロンドからポゼッション、試合へと練習をつなぐ見方を解説します。この記事を読めば、練習メニューと試合の関係が整理でき、「この練習は試合の何なのか」を自分の言葉で説明できるようになると思いますので、最後までご覧ください。
1. フラクタルとは何か

①ブロッコリーと正三角形の話
フラクタルというのは、まず「自己相似」という言葉で説明されます。
代表的な例は、ブロッコリーです。
ブロッコリーは、全体の房と、その半分ぐらいの房をむしっても、同じようなもこもことした形をしています。
さらに一口サイズに切っても、大きなブロッコリーをそのまま小さくしたような形になっています。
図形で言えば、正三角形です。
一辺が5センチの正三角形と、隣にある10センチの正三角形は、フラクタルであると言えます。
正三角形を組み合わせていくと、より大きな正三角形になっていく。そういった入れ子状の構造も、フラクタルと呼ばれます。
②サッカーを構造的に捉えるための土台
この自己相似という概念が、僕がサッカーを捉えていく上で、とても重要だと考えています。
ロンドでも、ポゼッションでも、ゲームでも、トレーニングをやっていく上で、このフラクタル性を理解しておかないと、練習の意味がとても分かりにくくなると感じています。
少し難しい話かもしれませんが、サッカー指導者であれば押さえておくべき概念だと思っていますので、順番に説明していきます。
2. 8人制はサッカーじゃない、という議論

①「4対4が最高のトレーニング」という考え方
「サッカーはサッカーをすることで上手くなる」という言葉を、皆さんも聞いたことがあると思います。
その流れで、4対4のミニゲームが最高のトレーニングだ、一番ミニマムなサッカーの形だ、という表現がされることがあります。
この「4対4が最高である」という考え方は、オランダサッカー協会が20〜30年前から提唱していたものです。
②11人制がサッカーで、8人制はサッカーじゃない?
日本で8人制サッカーが導入されたのは、12〜15年ほど前だったと思います。
それまでは、ジュニアも11人制でやっていました。
海外では8人制や7人制が採用されているという事例もあって、JFAが日本でも8人制を導入しようとなった時に、現場レベルでは「いや、サッカーじゃないでしょう」という議論がありました。
11人制がサッカーで、8人制はサッカーじゃない、というものです。
僕は当時から「フラクタルだから一緒だろう」と思っていたので、この議論には違和感がありました。
今では8人制が推奨されていますし、年齢が下がれば5人制がいいのではないか、という話も現場で出ています。
③2人退場したら、それはサッカーではないのか
では、なぜ8人制と11人制を同じサッカーと言えるのか、もしくは言えないのか。ここを少し考えてみてほしいと思います。
「8人制と11人制は違う」。もちろん、人数が違うので違います。
ただ、「11人制はサッカーで、8人制はサッカーじゃない」と言った時に、何をもってそう言えるのかを考えると、とても難しいことに気づきます。
僕は性格が悪いので、こう聞きたくなります。
11人の試合で2人退場して、11対9になりました。これはもうサッカーをやっていないのでしょうか。
実際には「サッカーをやっているよ」という話になると思います。
お互いに1人ずつ退場して10対10になった時に、「11人制こそがサッカーだ」と言うのであれば、その試合はサッカーではないものをやっているのか。そんなことはありませんよね。
④人数が変わっても同じサッカーと呼べる理由
つまり、人数によってサッカーの何かが失われることはありません。
11人制であろうが、8人制であろうが、それをサッカーと呼べるのは、そこに「構造的なフラクタル性」があるからだ、と僕は表現しています。
構造的なもの、概念的なものが共通しているからこそ、同じサッカーだと言えるわけです。
そう考えると、4人制であっても、フラクタル的には同じサッカーだと言えます。

3. 4対2のロンドと5対5のポゼッションで、何が変わるのか

①原理原則は、人数が増えても変わらない
ここからトレーニングの話に戻します。
4対2のロンドをやります。次に、5対5のポゼッションをやります。
この時、4対2のロンドの中にあるプレイの概念、つまりプレイのコンセプトが、5対5のポゼッションとの間でフラクタルになっていなければ、それは違うものになってしまいます。
コンセプトというのは、そのチームのプレイモデルでもいいですし、指導者が持っているプレイアイデアでもいいです。
僕の考え方はこうです。
4対2における原理原則、プレイ原則は、5対5の中でも通用するものです。
それが8対8になろうが、11対11になろうが、4対2のロンドの中にあるグループの原理原則は、そのまま拡大していっても、フラクタル性を伴って通用するはずです。
②変わるのは、複雑性だけ
では、4対2のロンドと5対5のポゼッションで何が変わるのかというと、複雑性が増すだけです。
例えば、4対2のロンドで「パスコースがなかったらドリブルで運んで時間を作り、味方がサポートを取り直す時間を作る」というプレイ原則があったとします。
これがチームのプレイ原則であり、サッカーの原理原則であるとすれば、5対5のポゼッションの中でも同じことが言えるはずです。
ところが5対5になった途端、パスコースがない時に「早くスペースに入れろ」となると、何か違います。
同じ現象、同じようなシチュエーションなのに、違うことが求められる。こうなると、選手は混乱してきます。
人数が増えた時に変わるのは、オプションが増える、やるべきことが増える、という部分です。
サッカーの複雑性が増していく、という発想です。
だからこそ、4対2のロンドで言っていることと同じことが、5対5のポゼッションでも、11対11のゲームでも言えるはずだと考えています。
③どの原則を選ぶかは、指導者の考え方でいい
ここで言う原則の中身は、何でもいいと思っています。指導者の考え方によって変わってくるものです。
大切なのは、その原則が人数が増えても変わらないこと、階層を越えて一貫していることです。
4. システム思考の「階層」で練習をつなぐ

①内臓の一部が悪くても、体全体を作り直さない
システム思考の中に、ヒエラルキー(階層)という概念があります。
システムの中にサブシステムがあり、その中にさらにサブサブシステムがある。システムは階層的につながっていて、その階層ごとにフラクタル性があります。
分かりやすい例は、人間の体です。
内臓の一部が病気になったからといって、体全体を作り直す必要はありません。
その器官の限定された一部だけを治療すれば、その階層の機能が修復し、体全体は機能します。
②うまくいかないのは、どの階層の問題か
サッカーの試合も同じです。
11人制の試合でうまくいかないとなった時に、それは11人全体の問題なのか、7〜8人組のシステムの問題なのか、4〜5人のグループの問題なのか、1〜2人の個人の問題なのか。
もし個人の領域の問題であれば、その個人の領域を練習すればいいわけで、チーム全体をトレーニングする必要はありません。
逆に11人全体の問題であれば、11人全体のトレーニングをしなければいけません。
スペインの資料に出てくる「インディビドゥアル(個人・1〜2人)」「セクトリアル(3〜5人)」「インテルセクトリアル(4〜7人)」「チーム全体」という分け方は、まさにこの階層の考え方です。
ゲーム分析でも、トレーニングの構築でも、プレイモデル作りでも、この階層的に見るということがとても大切になります。
③階層を行ったり来たりする視点
現場レベルで言うと、僕の場合はこうしています。
ロンドで個人とグループの領域をトレーニングした時に、ボールホルダーと周囲のサポートの領域において、何らかのプレイコンセプトがあります。
次に、それを5対5や6対6という少し複雑性が増した中で、グループの関係性が保てるかを見ます。
さらに8人、11人と人数が増えた時に、それでも保てるかを見ます。
人数が増えると要素が増えるので別の課題も出てきますが、グループや個人の領域におけるプレイコンセプトには、一貫性がないといけない、ということです。
極端に言えば、4対2のロンドをしながら5対5のポゼッションの一部をイメージしているし、5対5のポゼッションをしながら4対2のロンドのようなグループにフォーカスしている。
この階層を行ったり来たりする視点が持てると、トレーニングがつながってきます。
④「練習と試合がつながらない」を整理する
皆さんの中で「練習と試合がつながらない」と感じている方は、4対2のロンドをやったけれど、それが試合の何なのかが見えない、ということが結構あるかと思います。
そこを整理する時は、階層的に捉えていって、階層を越えて共通するプレイコンセプトを探します。
それは、チームが求めるプレイ原則であったり、サッカーの本質的な原理原則であったりする、というのが僕の考え方です。

まとめ
・フラクタルとは自己相似のこと。ブロッコリーや正三角形のように、大きさが変わっても同じ構造がある
・8人制も11人制も同じサッカーと呼べるのは、構造的なフラクタル性があるから
・4対2のロンドと5対5のポゼッションで変わるのは複雑性だけ。原理原則は変わらない
・同じ状況で違うことを求めると、選手は混乱する。階層を越えた一貫性が要る
・うまくいかない時は、個人・グループ・チームのどの階層の問題かを見る
・階層を行ったり来たりする視点が持てると、練習と試合がつながる
この記事では、フラクタルという考え方を使って、人数が変わっても同じサッカーと言える理由と、練習と試合をつなぐ見方について解説しました。
そこまで難しく考えなくても、もっとざっくりでいいと思います。まずは、いつもやっているロンドの中で「この原則は、試合の人数になっても同じことを言えるか」と一度確かめてみる。そこからで十分だと思います。皆さんの指導現場でも試してみてください!
なお、ロンドからポゼッション、試合形式へと人数を広げた練習メニューを、同じ原則で並べて保存しておくと、練習同士のつながりが自分でも見えやすくなります。僕はそのために、指導者向けの無料アプリを作りました。盤面にアニメーションを付けて練習メニューを作り、クラウドに保存して、他の指導者が公開したメニューを自分の練習に取り込むところまで、スマホから使えます。無料メルマガに登録していただくと、すぐに使えます。
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