こんにちは、講師のカズです。
低学年やキンダーの指導では、しっぽ取り鬼ごっこやドリブル競争といった、遊びの要素が入ったメニューを使う機会が多いかと思います。
僕はこういったメニューを、FUN系、ファン系のメニューと呼んでいます。
ただ、実際にやってみると、子どもたちは楽しそうにしているのに、指導者の側に迷いが出てくることがあります。
例えば、以下のように感じる方もいるかと思います。
・鬼ごっこをやると盛り上がるけれど、これで上手くなるのか分からない
・周りから「遊ばせているだけ」と思われていないか気になる
・遊び系のメニューを、練習のどこに置けばいいのか分からない
僕自身、過去には1日のトレーニングをほとんど遊び系のメニューで組んでみた時期がありました。
確かに盛り上がるのですが、そのときに感じたことがあります。
この記事では、遊び系のメニューがなぜ生まれてきたのかという背景から、それでサッカーが上手くなるのかという正直な話、そして現場でどう使えばいいのかまでを解説します。
この記事を読めば、遊び系のメニューを使うときに迷わなくなり、周りから何か言われても自分の言葉で説明できるようになると思いますので、最後までご覧ください。
1. しっぽ取り鬼ごっこは、なぜ生まれたのか

① サッカーのために作られた練習ではありません
しっぽ取り鬼ごっこをやる理由を聞かれると、多くの方は次のように答えるかと思います。
・楽しいから
・体の向きを覚えられるから
・アジリティやコーディネーションに効果があるから
どれも間違いではありません。
実際に、認知や駆け引き、フェイントといった要素も入っています。
ただ、正直なところ、サッカーとは少しかけ離れている感じがしませんか。
僕は、その感覚は正しいと思っています。
そして、その理由を1段階、2段階と深く考えていくと、面白い発見が見えてきます。
② 背景にあるのは体育の流れ
日本では2000年代ごろに、この手のメニューを扱った書籍がたくさん出ました。
主にジュニアやキンダーを対象にしたもので、コーディネーションや、ドリブル、コントロール、パス、シュートにゲーム性を持たせたトレーニングメニューが数多く紹介されています。
では、なぜそういったメニューが生まれてきたのか。
僕も調べてみたのですが、学術的にこれだと言い切れるものは見つかりませんでした。
その上で、大きく2つの流れがあるように思います。
1つ目は、体育の流れです。
ドイツをはじめとしたヨーロッパには、走る、止まる、反応する、バランスを取るといった動きを、遊びの形で体系化してきた歴史があります。
つまり、もともとサッカーのために作られたメニューではありません。
体育の中で使われていた運動遊びに、ボールを持たせたものが元になっているという見方です。
③ もう一つは、外遊びが減ったこと
サッカー界にとって、より重要なのはこちらだと思います。
まだインターネットもテレビゲームもほとんどなかった時代、子どもたちは外遊びの中でいろいろなことを身につけていました。
木登りをしたり、ストリートサッカーをしたり、鬼ごっこや缶蹴りをしたり。
田舎であれば、秘密基地を作ったり、山に登ったりもしていたかと思います。
そこで身についていたのは、体力だけではありません。
・相手を見て逃げる
・空いた場所を探す
・止まる、ジャンプする、急に方向を変える
・相手を騙す、フェイントをかける
・相手との距離感をつかむ
さらに、年齢がバラバラの中で遊ぶので、ルールを自分たちで作って、自分たちで変更していきます。
小さい子が一人いるから、その子はタッチ3回までOKにしよう。
ここは安全地帯だから入ってはいけない。
みんなが平等になるようなルール、みんなが楽しめるようなルールを作り、さらに今やっている遊びをより複雑にしていく。
そういった機会が、おそらく世界中にあったと思います。
その外遊びの機会が減っていく中で、本来子どもたちが自然と身につけていた能力が失われていきました。
そこで、外で遊んでいたときに培われていたものを、クラブのトレーニングの中に持ち込む。
そういった背景があったはずです。
④ 日本に入ってきたのは2002年のあと
日本の場合は、2002年のワールドカップのあとに、協会がキッズ向けのプログラムを始めたあたりが大きな節目かと思います。
その前後から、アンダー12、アンダー10、アンダー8、キンダーといった年代を対象にした遊び系のメニューが、書籍として一気に増えました。
つまり日本での出版が増えた時期は、発明された時期ではなく、輸入された時期だと考えると分かりやすいかと思います。
2. 正直に言うと、これだけでは上手くなりません

① 1日を遊び系だけで組んでみた時期があります
僕は2000年代に、そういったメニューがたくさん出てきたとき、1日のトレーニングをほぼ遊び系のメニューで組んでみたことがあります。
確かに盛り上がりますし、子どもたちも楽しそうにやってくれます。
ただ、やりながら、これは上手くならないなと感じました。
これは実際に自分でやってみた経験です。
僕のやらせ方が悪かったのかもしれませんが、正直な実感として書いておきます。
② 理由は「代表性」という物差しにあります
なぜ上手くならないのか。
僕は、代表性の問題だと思っています。
代表性というのは、エコロジカル・アプローチで使われる考え方で、簡単に言えば、その練習が試合の状況をどれだけ持っているかということです。
・相手がいるか
・味方がいるか
・ゴールや方向があるか
・攻守が入れ替わるか
こういったものが含まれているほど、代表性が高い練習ということになります。
③ 同じ遊び系でも、代表性は全然違います
ここが大事なところかと思います。
同じ遊び系のメニューでも、代表性はかなり違います。
例えば、3列くらいに並んで、コーンを回ってドリブルして戻ってくるリレー。
これは代表性が低いです。
試合中に、コーンを回って味方とリレーをすることはありませんので。
一方、ボールを持った状態での鬼ごっこはどうでしょうか。
相手がいて、その相手が動くので、観てから決めることになります。
少し代表性が上がるかなという感じです。
このメニューの動きは、こちらの動画で見ていただけます。
そして、3対3や4対4のミニゲームになると、代表性はかなり高くなります。
基本的には、エコロジカル・アプローチや、僕が好きな複雑系の観点からいくと、代表性が高いトレーニングをやったほうがいいということになります。
オランダサッカー協会が以前、それまでのドリルや要素還元的な考え方を否定して、サッカーはサッカーをすることで上手くなるという流れを作りました。
20年、30年ほど前の話かと思います。
サッカーとは何か。
それを考えたときに、この代表性という物差しが関わってきます。
なお、昨日お話しした「楽しさとは何か」という話と、今回の遊び系のメニューの話は別のものです。
そこは混同しないようにしていただければと思います。

3. それでも、遊び系のメニューに価値がある3つの理由

上手くならないと書きましたが、では意味がないのかというと、そんなことはありません。
僕は3つの価値があると思っています。
① 外遊びの代わりになる
今の子どもたちは、20年前よりもさらに外遊びの機会が減っています。
そうなると、クラブやスポーツクラブ、街クラブが、その機会を提供しなくてはいけない時代に入ってきたと言えます。
外遊びで培われていたような要素を、ゲーム性を持たせたトレーニングとして、練習の中に構造的に入れ込む。
これはすごく価値があることかと思います。
② 早期専門化の問題を補う
2つ目は、早期専門化の問題です。
一時期、サッカーを上手くするためには小さい頃からサッカーの専門性をやったほうがいい、という意見がありました。
これは今、かなり否定されています。
早い段階で専門的な指導ばかりをすると、サッカーの技術は伸びるかもしれませんが、その土台となる運動経験が不足する可能性があると言われています。
エコロジカル・アプローチの書籍を読まれた方は、マルチスポーツという言葉をご存じかと思います。
僕も昔は、早い段階からサッカーの専門をやったほうがいいと思っていました。
ただ、長く見ていくと、そうではないなと感じています。
キンダーや低学年のうちは、多様な運動の機会と、運動しながら考える機会をたくさん経験して、ベースを大きく育てる時期も必要かと思います。
プロ選手まで行った方でも、特定の運動能力が欠けているという話を聞くことがあります。

③ 動機づけと継続を生む
3つ目は、動機づけと継続の問題です。
この視点で語られることは、あまり多くないかと思います。
小学1年生がサッカーをやってみたいと思ってチームに入ってきて、いきなりインサイドキックの練習が始まる。
その子にとっては、大人から与えられる作業になってしまうことがあります。
これは実際に僕が聞いた話ですが、近くのクラブに小学1年生が入ってきて、いきなりグラウンドを何十周も走らされて、嫌になってやめてしまったそうです。
そのとき、最近の子は体力がないですね、と言われていました。
そういうことではないと思います。
極端な例ですが、こういったことが現代でも起きています。
子どもたちは、友達がやっているからとか、面白そうだからという理由でクラブに入ってきます。
そこでいきなり専門的なトレーニングを続けて、楽しいと感じる子もいるかもしれませんが、僕の経験上、ほとんどはそうではありません。
鬼ごっこや競争形式、ミニゲームをやると、自分でもうまくできたり、みんなで楽しめたりします。
コーチにやらされているというより、自分から動きます。
自己決定論的な話になりますが、自分で決めて動いているから楽しいという状態です。
そして、遊び系のメニューでは、コーチが叱ることがありません。
しっぽ取り鬼ごっこで子どもを叱ることはないかと思います。
むしろ、いいね、と盛り上げる側に回ります。
その結果、子どもたちの運動量と、頭を働かせて考える学習量が増えます。
つまり遊び系のメニューは、練習を甘くするためのものではありません。
動機づけと運動量、そして外遊びで失われたものを、反復して継続させるために生み出されたのではないかと思っています。
4. 現場でどう使えばいいのか

① 新しく入ってきた選手の入口として
少年団などであれば、体験に来た選手や、新しく入ってきた選手がいるときに使えます。
他の選手は慣れていて、ある程度サッカーらしいメニューができても、入ったばかりの選手はついていけないことがあります。
そこで遊び系のメニューを入れて、まずは楽しんでもらう。
このチームの練習は面白いな、友達ができたな、と感じてもらう入口になります。
② ウォーミングアップとして
もう一つは、ウォーミングアップの段階で入れてから、本題のトレーニングに入っていく形です。
ただ、これは僕のキャラクターの問題かもしれませんが、トレーニングの最初に入れて、はい次から集中してね、という切り替えは、あまり上手くいった経験がありません。
やらせ方の問題かと思いますので、ここは試しながらで良いかと思います。
③ ずっとこれだけをやらないこと
大切なのは、ずっと遊び系の練習をやっていれば上手くなる、という考え方をしないことかと思います。
あくまで、ここまで書いたような内容のところで使っていく。
そうすると、うまく機能するのではないかと思います。
そして、これもまた文脈によって変わります。
チームの状況や、目の前の選手によって、置き方は変わってくるかと思います。
もし今、自分のトレーニングを見ていて、子どもたちが楽しくなさそうだな、活気がないな、と感じている方がいれば、ぜひ一度こういったメニューを試してみてください。
こんな感じでやると盛り上がるんだな、こういう練習構造だと選手が楽しむんだな、という感覚がつかめると、自分の指導スキルも上がっていくと思います。
まとめ
・遊び系のメニューは、サッカーのために作られたものではなく、体育の流れと外遊びの減少という2つの背景から生まれた
・日本で書籍が増えた2000年代は、発明された時期ではなく輸入された時期
・遊び系だけをやっても上手くならない。理由は代表性が低いから
・同じ遊び系でも、リレーは低く、ボールを持った鬼ごっこは中くらい、ミニゲームは高い
・それでも価値はある。外遊びの代わり、早期専門化を補うこと、動機づけと継続の3つ
・使いどころは、新しく入ってきた選手の入口と、ウォーミングアップ
・ただし、それもまた文脈によって変わる
この記事では、遊び系のメニューがなぜ生まれ、どう使えばいいのかについて解説しました。
こういったメニューを引き出しに持っておいて、指導者が臨機応変に出せることが大事かと思います。
皆さんの指導現場でも試してみてください!
僕が作っている練習メニュー作成アプリでは、こういった遊び系のメニューも含めて、盤面を動かしながらメニューを組み立てられます。
作ったメニューはデータとして残るので、去年の自分が何をやっていたかも振り返れます。
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