こんにちは、講師のカズです。
少年サッカーの練習で、ドリルトレーニングをどう扱うかは、多くの指導者の方が迷うテーマかなと思います。
「サッカーはサッカーをすることで上手くなる」と聞くと、ドリルをやること自体に後ろめたさを感じることもあるかもしれません。
例えば、以下のように感じる方もいるかと思います。
・ドリルは状況判断がないから、やってはいけないのか
・スペインはグローバルでやると聞いたけど、ドリルは古い練習なのか
・自分のチームの監督はドリルばかりやっているけど、これでいいのか
僕自身、若い頃はドリルトレーニングだけをやっていた時期がありました。
この記事では、ドリルトレーニングがなぜ議論されてきたのかという歴史的な背景から、スペインでの位置づけ、そして現場でいつ・どう使うかまでを解説します。
ドリルの本質が分かると、「この場面では使おう」「この場面では使わない」が自然と判断できるようになると思いますので、最後までご覧ください。
1. ドリルトレーニングが議論されてきた理由

①「サッカーはサッカーをすることで上手くなる」
今でもよく聞く話ですが、サッカーはサッカーをすることで上手くなる、という考え方があります。
その文脈では、ドリルトレーニングはサッカーに必要な要素を削ぎ落としすぎているから、あまりよろしくない、と言われることがあります。
一方で、「ドリルめっちゃいいじゃないですか」と、ドリルを積極的にやる指導者の方もいます。
ネガティブに見る人もいれば、ポジティブに見る人もいます。
なぜこのような議論になるのかというと、その裏には大きな背景があります。
② オランダで起きた論争と、元祖クーバートレーニング
30年ほど前のオランダには、ドリルトレーニング一本で、個人からグループ、そしてチームまでを育て、ハイレベルなプレイヤーにするという考え方がありました。
それがメソッド化・体系化されて、当時はかなり広まったのだと思います。
これがクーバートレーニングです。
今、日本にもクーバーコーチングがありますが、その元祖となったものです。
元祖のクーバートレーニングは、当時の世界トップのテクニカルな選手たちのプレイを分析して切り出し、ドリブルの仕方、ターンの仕方、フェイントの仕方を、まず個人レベルで体系化しました。
さらに、ワンツー、オーバーラップ、スイッチといったグループでのコンビネーションまでをまとめ、それを幼稚園生から中学生ぐらいまでで、どう落とし込んでいくかというメソッドを作りました。
僕の知っている範囲では、現在のクーバーコーチングのカリキュラムやトレーニング方法とは、大きくかけ離れているのではないかと感じています。
僕は高校生の時にこのビデオを見て、小学3年生がこんなことをできるのかと、とても衝撃を受けた記憶があります。
若い頃には映像を譲ってもらってダビングし、最近になって、元祖のVHSをネットで見つけて購入しました。
ものすごくよくできたドリルトレーニングで、当時としてはかなり革命的だったと思います。
③ 複雑系の考え方と、要素還元論
一方で、オランダサッカー協会は「そうではない。サッカーはサッカーをすることで上手くなる」という立場を取り、そこで論争が起きていたようです。
では、なぜそのような考え方が出てきたのか。
僕が30年ほど前に日本で出版された書籍などを読む限りでは、当時すでにヨーロッパの先端のトレーニングの考え方の中に、複雑系の考え方があったのだと思います。
ヴィトール・フラーデが戦術的ピリオダイゼーションを提唱したのも、30年から40年前です。
それまでは、サッカーを戦術、テクニック、フィジカル、メンタルに要素還元して、トレーニングしていました。
テクニックならドリルトレーニング、フィジカルならグラウンドの外での走り込みやダッシュ、というような形です。
そのテクニック面の代表例が、ドリルトレーニング(アナリティコ)でした。
そこに、サッカーを全体として捉え、要素還元せずにそのものを扱っていこうという考え方が出てきた、という流れです。
僕は研究者ではないので、あくまで僕の経験や読んできた書籍の文脈から見た流れですが、ドリルトレーニングが議論される土壌は、もともとこうした歴史の中にあったのだと思います。
2. スペインでのドリルの位置づけ

① アナリティコ・グローバル・システミコ
日本でも10年、15年ほど前に、「ドリルは敵がいなくて状況判断がないから、サッカーそのものをやっていない。だからスモールサイドゲームなど、状況判断を伴うトレーニングをしなくてはいけない」と言われた時期がありました。
それで、ドリルはやってはいけないのかな、と思った方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、ドリルトレーニングは、使い方によります。
スペインのコーチングスクールでは、サッカーのトレーニングの教授法として、アナリティコ(ドリル)、グローバル、システミコの3つがあると教わります。
・アナリティコ:敵や味方がいない中で反復していくもの
・グローバル:敵や味方がいる状態で行うもの
・システミコ:そこにプレイモデルが加えられたもの
要は、文脈があるか、文脈がないか、という整理です。
その中に、ポゼッション形式、オレアーダ形式、シルクイート(サーキット形式)といったトレーニング形式があり、メソッド論やトレーニング論の授業が進んでいきます。
つまり、ドリルはスペインでも、教授法の一つとしてはっきり位置づけられています。
② ボールマスタリーが試合で出ない問題
どうしても日本の場合、ボールマスタリーのように、ドリルでテクニックレベルを上げていくけれど、試合ではあまり発揮できない、ということが起こりがちです。
スペインでは、テクニックの定義の中で、ボールを扱う技術は状況判断とともに発揮されるものなので、切り離すことはできないと考えます。
例えば、リフティングのジャグリングのようなものは、サッカーではありません、とはっきり言われます。
③「できるだけ」はカギカッコ付き
だからこそ、できるだけ状況判断を伴ったトレーニングでやっていきましょう、という流れがあります。
ただ、ここで大事なのは、「できるだけ」がカギカッコ付きだということです。
ドリルをやってはいけない、という意味ではありません。
3. ドリルトレーニングはいつ使うのか

① テクニックレベルを引き上げたい時
小学生年代の指導では、まだボールをうまく蹴れない、テクニックレベルを引き上げたい、という場面があります。
止める、蹴る、運ぶをもう少ししっかりできるようにしたい。
そういう時に、ドリルトレーニングは有効だと思います。
② ウォーミングアップやトレーニングの前半に入れる
ウォーミングアップや、トレーニング1、トレーニング2ぐらいのところでドリルを入れて、パスコン(パス&コントロール)などを行うやり方もあります。
また、シャドウもドリルに近い練習です。
例えば、サイドをオーバーラップしてからクロスを上げるイメージ作りに使うこともできます。
③ エコロジカル・アプローチに興味がある方へ
最近はエコロジカル・アプローチに興味がある方も多いと思います。
それでも、サッカー初学者の選手には、制約主導というよりも、ドリル的なトレーニングの効果がある程度ある、とも言われています。
また、ドリルトレーニングの中でも、エコロジカル・アプローチ的な方法を用いることはできます。
大事なのは、ドリルがいいか悪いかではなく、いつ、どういう文脈で使うかです。
そのために、ドリルのメリットとデメリットをよく知っておくことが必要かなと思います。
4. ドリルの本質が分かると、迷わなくなる

① 「同じ動きを反復するだけ」と考えると間違う
以前、読者の方から「カズさんはグローバルトレーニングでテクニックをつけると言っていますが、ドリルはやらないんですか」というご質問を頂きました。
僕の答えは、ドリルをやらないこともあるし、やることもある、です。
ドリルで悩まれる方は、僕の経験上、ドリルトレーニングのことがよく分かっていないことが多いと感じます。
ドリルトレーニング=同じテクニックアクションを反復するだけ、と考えると、大きく間違えてしまいます。
ドリルの本質が分かっていないまま議論するので、「ドリルはいいのかな、悪いのかな」と、ずっと腑に落ちないままになってしまうのだと思います。
② メニューをなぞればできるが、外から見ると分かる
ドリルトレーニング自体は、練習メニューをなぞればできます。
ですが、ドリルの本質が分かっていないと、外から見た時に、うまくできていないことがよくあります。
なぜこのドリルをやるのか、こうした方がいいのではないか、ということが見えていない。
メリットとデメリット、コーチングのポイント、何をするべきかが分かっていない、ということです。
指導歴が10年、15年あってもドリルに自信がないという方や、コーチを始めたばかりの方は、まずドリルトレーニングをちゃんと理解することが、とても大切かと思います。
③ ドリルの方が、グローバルより簡単
僕は、ドリルトレーニングの方が、グローバルトレーニングより簡単だと考えています。
例えば5対5+2サーバーのようなグローバルトレーニングの中で何かにフォーカスするよりも、ドリルの方が分析の要素が少ないからです。
フォーカスすべき要素が少ないので、初心者のコーチでも、見るべき現象を捉えやすいです。
それでいて、フリーズのタイミング、コーチングの仕方、メニューの進め方など、指導の基本は全部入っています。
その一番簡単なバージョンがドリルで、グローバルやシステミコの方が難しい、というのが僕の考えです。
だからこそ、ドリルトレーニングでうまくいかないのに、グローバルはバッチリです、ということはあり得ないと思っています。
④ 知識と実践の量が、指導を支える
サッカーコーチには、たくさんの知識と、勉強量、実践量が必要だと感じます。
サッカーをやっていたから明日からできる、1ヶ月勉強したから明日からできる、というものではありません。
ドリルトレーニング一つを取っても、現場ではなかなかうまく進められないことがあります。
いろいろな知識を深掘りしながら、経験を積んでいくことが大事です。
まとめ
・ドリルが議論されるのは、要素還元論と複雑系の考え方がぶつかってきた歴史があるから
・スペインでもアナリティコ(ドリル)は教授法の一つとして位置づけられている
・「できるだけ状況判断を伴う練習で」の「できるだけ」はカギカッコ付き
・ドリルはテクニックを引き上げたい時や、ウォーミングアップ、トレーニングの前半などで使える
・ドリルは「同じ動きの反復」ではない。本質を知ると、使う場面・使わない場面が判断できる
・ドリルはグローバルより簡単で、指導の基本が全部入っている
この記事では、ドリルトレーニングが議論されてきた歴史的な背景と、現場でいつ・どう使うかについて解説しました。
ドリルをやることに後ろめたさを感じる必要はないと思います。
大切なのは、今日のドリルが、どんな目的で、どの場面に置かれているかを自分で説明できることです。
まずは次の練習で、ドリルを1つ選び、その狙いと進め方を見直してみてください。
皆さんの指導現場でも試してみてください!


なお、ドリルを含めた練習メニューは、書き出して残しておくと、狙いや進め方を見直しやすくなります。
僕はそのために、指導者向けの無料の練習メニュー作成アプリを作りました。
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