こんにちは、講師のカズです。
サッカーのトレーニングでは、キーファクターという言葉をよく使います。
ただ、キーファクターを自分の中でちゃんと整理できているかというと、意外と難しいところかなと思います。
例えば、以下のように感じる方もいるかと思います。
・キーファクターと言われても、何をどこまで整理すればいいか分からない
・立ち足はこう、蹴り足はこうと細かく伝えても、子どもがうまくならない
・エコロジカル・アプローチでは、コツを教えない方がいいのか迷っている
正直に言うと、僕は最近、キーファクターをあまり伝えません。
ただそれは、スペインで学んだキーファクターのことをよく分かったうえで、あえてそうしています。
この記事では、キーファクターとは何か、指導者と選手で求められることの違い、そして言葉・オノマトペ・目的だけの3つの伝え方を解説します。
この記事を読めば、キーファクターを「伝える/伝えない」を文脈で選べるようになると思いますので、最後までご覧ください。
1. キーファクターとは、うまくプレイするためのコツ

① 僕の中では、キーファクターは「コツ」
僕の中でのキーファクターは、簡単に言うと「コツ」です。
うまくプレイするためのコツです。
例えば、ポジショントレーニングのキーファクターであれば、そのトレーニングでうまくボールが回るためのコツは何か。
それを羅列して書いていきます。
ドリルトレーニングのようにテクニックにフォーカスした時は、インサイドキックのキーファクター=うまくインサイドキックを蹴るためのコツ、ということになります。
② 日本では「サポートの質」、スペインでは「コンシグナ」
日本では、キーファクターは「サポートの質」「パスの精度」といった言われ方をすることが多いかなと思います。
一方、僕がスペインでライセンスを取った時は、キーファクターという言い方ではなく「コンシグナ」と言っていました。
日本のキーファクターと同じものとして考えた時、スペインのものはものすごく言語化されていて、こと細かく作られている印象を持った記憶があります。
「パスの質」と言った時に、パスの質とは具体的にどういうことなのか、というところまで言葉になっています。
③ トレーニングの流れの中で伝えるもの
トレーニングの一般的な流れは、次のようなものです。
・まずトレーニングの構造を理解する時間がある
・やらせてみて、問題が出てくる
・キーファクターを伝えて、またやらせる
伝え方はシンクロでもいいし、フリーズでもいい。
これがオーソドックスなやり方かなと思います。
そして、この時に伝えるキーファクターは、言葉によって選手に伝える「言語的なアプローチ」になります。
2. 指導者は言語化できた方がいい、選手はできなくてもいい

① インサイドキックを構造で見られるか
インサイドキックのキーファクターであれば、「立ち足の膝をもう少し曲げなさい」「ボールの真横に踏み込んでから蹴ろう」といったものになります。
これはある種、指導者がソリューションを持っているとも言えます。
蹴り足はどう、立ち足はどう、手の振り方はどう、上体はどう、体の向きはどう。
こうしたことを言語化できることは、指導者にとってとても重要です。
たかがインサイドキック一つとっても、構造的に見ることができるか、言語化して見ることができるか。
だから、指導者は必ず言語化できた方がいいと思っています。
② 選手はプレイ中に言葉で考えていない
一方で、選手は決してそうではない、というのは僕がずっと昔から言っていることです。
ジュニアサッカー大学を始めたばかりの頃にこの話をしたら、「選手も言語化できないとダメだ」という意見を頂いたことがあります。
ただ、選手は言語化できなくても、プレイがうまくいっていればいいと思います。
プレイ中、特にオンザボールの時は、言語で考える時間がないからです。
後になって言葉で考えることはありますが、プレイ中は別に言語的に考えていません。
③ 従来の指導は「理想の蹴り方」に近づけるもの
従来の指導は、指導者の中に理想的な蹴り方や理想的なプレイがあって、そこに選手を近づけるという考え方でした。
選手のフォームのどこにミスがあるかを見つけて、キーファクターを伝えてあげる、という形です。
だからこそ、スペインでもキーファクターを言葉でものすごく細かく整理していたのだと思います。
3. エコロジカル・アプローチでは、インサイドキックはソリューション

① 目的はパスを通すこと
今は、エコロジカル・アプローチのような考えが出てきて、理想的な蹴り方というのは別にない、という考え方にシフトしている状況かなと思います。
正しい蹴り方、正しいプレイに選手が合わせるのではなく、目的を設定する中で、蹴り方やプレイの仕方は選手がソリューションとして発見していけばいい、という考え方です。
インサイドキックをきれいに蹴ることが目的ではありません。
パスを通すことが目的であれば、インサイドキックだろうが、アウトサイドだろうが、パスが通ればいい。
インサイドキックは目的ではなく、パスを通すためのソリューションです。
② 蹴り方は一人一人違う
さらに言えば、インサイドキックの蹴り方は一人一人それぞれ違います。
そこに理想的な蹴り方を提示しても、あまり関係がない。
ソリューションは何でもいい、というのがエコロジカル・アプローチ的な考えかもしれません。
そうなると、トレーニングの仕方やコーチングの方法も変わっていきます。

③ それでも、言葉で教えないとできない子もいる
そうは言っても、選手によっては少しコツを言葉で教えてあげないとできない子もいます。
特に小学生の場合はそうです。
だからこそ、指導者はキーファクターをちゃんと言葉で整理しておく必要があります。
この子には「ちゃんと踏み込んで蹴りなさい」と言った方がうまくいったな、と思えば、そのアプローチをすればいい。
それを言ってもうまくいかなかったら、今度は外的フォーカスを意識させてトレーニングする。
こうした使い分けが、指導者にとってとても大切な要素かなと思います。

4. キーファクターの伝え方は3つ

キーファクターの伝え方は、ドリルトレーニングだけの話ではなく、サッカーの指導全般に言えると思います。
グローバルトレーニングでも、セットプレイのトレーニングでも同じです。
僕の中では、大きく3つのやり方があります。
① 言葉で細かく伝える
1つ目は、細かく言葉としてキーファクターを伝える方法です。
インサイドキックであれば、「立ち足をボールの横に踏み込む」のように、動きの構造を言語化したものを伝えます。
言葉で伝えた方がうまくいく選手には、このやり方が合います。
② オノマトペで伝える
2つ目は、オノマトペ的な表現で伝える方法です。
「パスはパサッと」「スパッと蹴って」「バシッと蹴れ」のような伝え方です。
昔の長嶋監督のような感じ、と言えば伝わるかなと思います。
こうした非言語的なアプローチも、意外と良かったりします。
エコロジカル・アプローチの中でも、一流のアスリートがオノマトペ的な表現を使う、という話があります。
その感覚をあえて言葉にするとこんな感じ、というものです。
あえて抽象的にしてプレイのイメージを伝えることで、身体の動かし方は選手に委ねることができます。
③ 目的だけを伝える
3つ目は、目的だけを伝える方法です。
「ゴロで速いパスを入れて」とだけ伝えて、蹴り方は何でもいいよ、とする。
キーファクターはあくまでもソリューションだと割り切って、パスが通れば何でもいい、と捉えるエコロジカル的な発想のアドバイスです。
5. わかっていて伝えないのと、わからないのとでは違う

① 文脈に応じて、自分のスキルを使い分ける
どのやり方も、手段でしかありません。
選手が上手くなって、チームのパフォーマンスが上がっていれば、ドリルトレーニングだろうが、キーファクターを伝えようが、選手が言語化できようができまいが、別にいいと思います。
ただ、「何でもいい」となると、よりどころがなくなります。
僕がとても大切だと思っているのは、文脈に応じて自分のスキルを使い分けることです。
今の時期はドリルをやった方がいい、ここはキーファクターを伝えた方がいい、ここは黙って何も言わない方がいい、ここは褒めた方がいい、叱った方がいい。
現場では、文脈によって臨機応変に考えています。
② 本質を知らないと、手段がスキルにならない
僕は最近、キーファクターをあまり伝えません。
それは、スペインで学んだキーファクターのことをよく分かっているから、あえて伝えない、という手段が取れているということです。
分かっていてやらないのと、分からないからできないのとでは、意味が違います。
プレイモデルも同じです。
何年か前はプレイモデルが強すぎて、選手の自由度が低くなってパターン化してしまっていたので、今は極限までプレイモデルの自由度を上げています。
ただ、プレイモデルが何なのか分からない、作ったことがないという状態では、こうしたアプローチはできません。
キーファクターとは何かを知り、一度整理してみたことがあるからこそ、キーファクターを捨てることができます。
知識や理論背景を知っているから良い指導ができる、というわけではありません。
それでも、本やトレーニングで出てくる言葉を一つ一つ深掘りして理解しておくと、指導の幅が広がります。
指導の幅が広がるということは、文脈に応じて臨機応変に指導できるようになる、ということだと思います。
まとめ
・キーファクターは、うまくプレイするためのコツ(スペインでは「コンシグナ」)
・指導者は言語化できた方がいい。選手はプレイ中に言葉で考えないので、言語化できなくてもいい
・エコロジカル・アプローチでは、インサイドキックは目的でなくソリューション
・伝え方は3つ(言葉で細かく/オノマトペ/目的だけ)
・分かっていて伝えないのと、分からないから伝えられないのとでは意味が違う
この記事では、キーファクターとは何か、そしてその伝え方について解説しました。
キーファクターを一度きちんと整理してみると、「今日は言葉で伝える」「今日は目的だけにする」と、現場で選べるようになると思います。
皆さんの指導現場でも試してみてください!
ドリルトレーニングの中でのキーファクターの伝え方や外的フォーカスの考え方は、教材『ドリルトレーニング入門』にもまとめています。
なお、キーファクターを整理する時は、練習メニューと一緒に書き残しておくと、次に同じメニューをやる時に見返せます。
僕はそのための無料の練習メニュー作成アプリを作りました。
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