こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代の指導の中でも、キンダー(幼児)や低学年の指導には、少し特殊な難しさがあります。
コーチを始めたばかりの方ほど、低学年の担当を任されることが多いのに、実は一番難しい年代を見ている、ということがよく起きています。
例えば、以下のように感じる方もいるかと思います。
・低学年の練習メニューが分からず、毎回迷ってしまう
・ロンドやミニゲームをやっても、練習が成立しない
・楽しい系のメニューをやると、「これで上手くなるのかな」と不安になる
僕自身、15年以上前は、キンダーや低学年の指導がめちゃくちゃ苦手でした。
この記事では、低学年の指導がなぜ難しいのかという構造から、練習メニューで迷うループの正体、そして動機づけという視点での整理まで、詳しく解説します。
この記事を読めば、低学年の指導で悩んでいるのは自分の経験不足のせいではないと分かり、明日の練習に少し前向きに向かえると思いますので、最後までご覧ください。
1. なぜ低学年の指導は難しいのか

① 指導経験の長さでは解決しない
意外に思われるかもしれませんが、「小学生の指導を10年、15年やってきました」という指導者の方でも、いざキンダーや低学年を担当すると、うまくできないケースはめっちゃ多いです。
なので、指導を始めたばかりで低学年に悩んでいる方は、全然気になさらなくていいかなと思います。
指導経験が長ければできる、というものではありません。
僕の感覚で言うと、必要なのは経験年数ではなく、指導、トレーニング、心理学なども含めた、広い意味での「指導の基礎」です。
この基礎があれば低学年も指導できますが、逆にこの基礎が抜け落ちているというのは、僕も含めて、ジュニア年代の指導者にはよくある話かなと思います。
実際に、著名な指導者の方が「低学年こそベテランの指導者が担当した方がいいのではないか」と語っている記事を読んだこともあります。
確かに、そういった要素はあると思います。
② 実例:ジュニア20年のコーチでも最初はできなかった
今年は僕もキンダー(年長)を担当しています。
一緒にやっているコーチは、ジュニアの指導をもう20年ほどやっているベテランです。
それでも、最初は壊滅的にできませんでした。
開始1分で僕が介入して、仕切り直す。そういうことを何ヶ月も繰り返して、最近ようやく慣れてきたところです。
ジュニアを20年指導してきた人でも、これだけ苦労するわけです。
低学年には、高学年とは違う難易度がある、ということです。
③ 子どもたちは「察してくれない」
低学年の難しさの正体を一言で言うなら、これだと思います。
比較のために、極端な例として高校生を考えてみます。僕もユース年代の指導経験がありますが、高校生はほぼ大人なので、練習が退屈でも、コーチの説明が分かりにくくても、口には出さずにやってくれます。
「多分こういう意味だろう」と察して、分かったふりをしてくれるわけです。
小学校の4・5・6年生あたりも、精神的に安定している時期なので、「この練習、意味あるんですか」「前回もやって面白くなかったので変えてください」とは、まず言いません。
だから、指導のうまくいっていない部分があっても、子どもたちがうまくそれを隠してくれて、練習が回っているように見えます。
でも、低学年やキンダーの子どもたちは、察してくれません。
楽しくなければ「楽しくない」と言うし、やりたくなければやりません。コーチの話より砂遊びの方が楽しければ、砂遊びをします。
大人側の都合を察してくれないから、指導のいろいろなものが、もろに露呈する。
これが、低学年の指導が大変な理由です。
2. 練習メニューで迷うループの正体

① 「サッカーはサッカーで上手くなる」けれど、成立しない
低学年で練習メニューに迷う場合、その多くは「練習が成立しない」ことが出発点だと思います。
話を聞かない、並ばない、順番を守れない、ルールが分からない、といったことですね。
「サッカーはサッカーをすることで上手くなるはずだから、ロンドやミニゲームをやろう」と考えても、低学年ではロンドは基本、成立しません。
ミニゲームをやれば、全員が団子になって、パスも通らない、ドリブルもできない、ただボールにわちゃわちゃと集まっているだけに見えます。
② では要素分解してドリルをやると、集中が続かない
そこで、「まずは止める・蹴る・運ぶをある程度できるようにならないと」と考えるわけです。
テクニックがまだないから、要素分解してテクニックをつけさせたくなる。これは自然な流れだと思います。
ですが、ドリブルやキック、コントロールをドリルでトレーニングしようとすると、今度は集中力が続きません。
指導者としては大事なことをやっているつもりでも、子どもたちは楽しそうじゃない。少しやらせると「きつい、やりたくない」となってしまう。
このような場面は、低学年の現場で結構あるかなと思います。
③ ファン系メニューという選択肢
そこで出てくるのが、ファン系(FUN=楽しい系)のメニューです。
例えばウォーミングアップなら、しっぽ取り鬼ごっこ。
テクニックなら、ドリブルリレー、ドリブル競争、ボール集め競争など、色々ありますよね。
やってみると、確かに子どもたちは楽しそうにやります。
コーディネーションやアジリティといったトレーニング効果も期待できますし、この種の楽しいメニューは書籍などでも数多く紹介されています。
④ 「これで上手くなるのかな」問題
ところが、ここで多くの指導者が引っかかります。
「楽しそうにやっているけど、これで本当に上手くなるのかな」と。
そして、当然そうなんです。
サッカーが上手くなるということは、簡単に言えば、サッカーそのものをトレーニングすることです。ドリブル競争をやったからといって、試合のドリブルがそのまま上手くなるとは、僕は思いません。サッカーとは離れているからです。
それなら、ジンガのような細かい足技をやった方がいいのではないか。
そう考えてやらせてみると、子どもは楽しくなさそうで、練習がだらける。
ゲームは団子になる。ドリルは集中が続かない。ファン系は効果が不安。足技はだらける。
このループにはまるのが、低学年の練習メニューで迷う正体だと思います。
なお、低学年のテクニック指導については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

3. 動機づけという視点で整理する

① 外発的動機づけと内発的動機づけ
この一連のループを、別の角度から見てみます。
実はこれは、動機づけの問題と絡んでいます。
僕がいつも言っているように、動機づけには外発的動機づけと内発的動機づけがあります。
低学年のうちは、外からの動機づけも一定は必要です。
例えば、ドリブル競争そのものでドリブルが上手くなるわけではなくても、その中で「ドリブルがもっと上手くなりたいな」という気持ちにつながったらいいですよね。
子どもたちが「練習に行くのが楽しい」と思えること自体が、大切な動機づけになるわけです。
動機づけについては、こちらの記事で基本から解説しています。

② 遊びの中にトレーニング効果を見る
ファン系メニューを「ただのお遊び」と見るか、トレーニングとして見るかは、指導者の知識次第です。
例えば「猫とネズミ」という、体育の授業にあるような遊びがあります。
2人が背中合わせに座って、片方が猫グループ、片方がネズミグループ。コーチが「ね、ね、ね……ネズミ!」と呼んだ方が一定のラインまで逃げ、逆の方がタッチしたら勝ち、という遊びです。
これは、遊びの要素が入ったフィジカルトレーニングと見ることができます。
座った状態から瞬間的に立ち上がって走り出すのは、反応(リアクション)のコーディネーションであり、オフバランスからのリカバリーであり、スプリントのトレーニングです。
僕はフィジカルの専門家ではないので細部に間違いがあったら申し訳ないのですが、大事なのは、遊びの中にどんなトレーニング効果があるのかを指導者が説明できることだと思います。
③ 低学年は「動機がバラバラ」
そしてもう一つ。低学年で何が難しいかというと、結局、子どもたちの動機がバラバラだということです。
ファン系メニューをやっても、足元が上手い子は「もっと試合がしたい、楽しくない」と感じるかもしれません。
動機づけの段階、ファン系としっかりトレーニングする系のバランス、子どもたちに話を聞かせる話術。そういったものが、もろに問われます。
そこをかなり神経質にやらないと、選手が1日満足する練習にはつながりません。
だからこそ、入念に選手を観察して、かなり早いスピードで判断を変えていく必要があります。
低学年の指導は、精神的にも肉体的にもすごく疲れます。
でもそれは、指導として高度なことをやっているからです。
4. 低学年は、指導者が鍛えられるフェーズ

① お手本を真似するのが一番早い
では、コーチを始めたばかりで低学年を任されて、うまくいかない時はどうすればいいか。
答えはシンプルです。上手な指導者の方にお手本を見せてもらって、それを真似するのが一番早いと思います。
僕自身、15年以上前は、キンダーや小学1・2年生の指導がめちゃくちゃ苦手でした。
どうしていいか全く分からない。むしろ、小さい子と遊ぶこと自体が苦手なタイプでした。
それが変わったのは、スペイン系のスクールで、日本人の素晴らしい指導者の方がキンダーを指導する姿を、真横で見続けたことがきっかけです。
何ヶ月もアシスタントとして一緒にやっているうちに、それが染み付いて、いつの間にか苦ではなくなりました。むしろ「小さい子を指導するのは面白いな」という感覚に変わっていきました。
② 必要なのは、広い意味での「指導の基礎」
今日お話しした内容を振り返ると、低学年の指導に必要なものが見えてきます。
・トレーニングのタイプを知っていること(ドリルのメリット・デメリット、ファン系のメリット・デメリット)
・年代ごとの特性を知っていること(U-6とU-8の違い、フィジカル的な特徴など)
・叱る基準を持っていること(「これは叱っていいのかな」と迷わないための自分の軸)
・飽きさせないテンポでトレーニングを刻み、ユーモアで惹きつけること
こういった基礎的な知識と軸が欠けていると、高学年に指導するような感じでやってしまって、子どもが泣く、といったことも起きかねません。
③ むしろチャンスと考える
低学年には特殊な部分がありますが、だからこそ、指導者としてはめっちゃ鍛えられるフェーズだと思います。
僕自身も、低学年を指導した時に初めて、やっと自分の軸ができた、基礎的なものが身についた、という感覚がありました。
高学年ばかり10年、20年指導してきて、低学年が全くできないという方は本当に多いです。
なので、今まさに低学年を担当して悩んでいる方は、むしろチャンスだと考えてほしいと思います。
ここで身につけた指導の基礎は、どの年代でも通用します。
まとめ:低学年の難しさは、指導の基礎が露呈すること
最後に、この記事の要点をまとめます。
・低学年の指導は、経験年数ではなく「広い意味での指導の基礎」で決まる
・低学年の子どもは大人の都合を察してくれないため、指導の課題がもろに露呈する
・ゲームは団子、ドリルは集中が続かない、ファン系は効果が不安、というループが迷いの正体
・ファン系メニューは、動機づけとトレーニング効果の両面から捉え直せる
・迷ったら上手な指導者のお手本を真似するのが一番早い。低学年はむしろ指導者が鍛えられるチャンス
この記事では、低学年の練習が成立しない理由と、その難しさの正体について解説しました。
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