こんにちは、講師のカズです。
日本とスペインの育成の違いの中でも、日本は守備戦術の指導が少ないという意見も結構あります。
僕がコーチ留学したスペイン・バルセロナ。
確かに小学生年代でも守備戦術をしっかり指導しているなという印象を受けました。
僕自身がそうだったのですが、守備戦術を子どもたちにどのように指導したら良いか分からないという方も多いと思います。
この記事では、守備の基本中の基本であるマークについて解説します。
マークには4つの種類があるとも言われますが、ジュニアサッカー大学では2種類のマークの方法を守備の戦術コンセプトと位置付けています。
小学生年代でもしっかりとマスターしておきたい2種類のマーク。
この記事を読めば、守備の基本となるマークについて理解が深まると思います。
動画で解説
※マークの3原則に関しては下記にある別動画で解説しています。
1.サッカーにおけるマークの定義と目的
マークとは守備のフェーズで行われる戦術アクションですが、ジュニアサッカー大学では以下のように解釈しています。
■定義
特定の相手もしくはエリアにおいて、自由にプレーする時間とスペースを与えないための守備のアクション
■目的
対峙する相手の攻撃を妨害し、可能ならボールを奪う
基本的には守備の個人戦術アクションであり、チームとしてのゲームモデルの中でもその根幹をなすものです。
また守備戦術のマークに対する概念として攻撃の「マークを外す動き」があります。
守備側のマークの考え方を理解することで、攻撃の打開策も見えてくるので合わせてご覧ください。
>>サッカー戦術アクション『マークを外す動き』で時間とスペースを作る
2.マークには二種類ある
次にマークの種類について解説します。
ジュニアサッカー大学では『サッカーにおける戦術コンセプト』に含まれるマークについては2つのタイプが存在すると位置付けています。
- マンツーマンマーク
- ゾーンマーク
他にもマンツーマンとゾーンを融合させたミックスなどが挙げられる場合もありますが、それらのプレーの決定はチームとしての守備をどのように行うか=ゲームモデルから影響を受けるため、普遍的な守備の戦術アクションには含んでいません。
※注意:戦術コンセプトとゲームモデルの関係性
ミックスと言われるマークの方法はどのゲームモデルにおいても普遍的なアクションというよりは、ゲームモデルのプレー原則によって設定される可能性が高いため戦術コンセプトに含んでいません。
>>サッカーの戦術コンセプトとは?【8人制サッカーも共通】徹底解説
①マンツーマンマークとは
■定義
特定の選手の行動に対して、同じ守備側の選手が継続的に警戒すること
図のように、自分がいるポジションから相手が動いた場合もマークを継続してついていくアクションです。
補足ですが「どのエリアまでマークを継続するか」については、個人もしくはチームの判断・プレー原則によります。
特徴
- 対象となる相手選手が明確
- 個人での責任が大きい
- 素早くアプローチできるので相手選手のプレーを大きく制限できる
- ボールがある位置で守備側の選手のポジションが決まるのではなく、マークする相手がどこにいるかで決まる
ゾーンマークが自分が担当するスペースに侵入してくる不特定の相手をマークすることに対して、ゾーンを移動しても同じ選手をマークすることが大きなポイントです。
※注意:ゲームモデルとしてのマンツーマンディフェンス
現代サッカーでは全選手がそれぞれ特定された同じ選手を継続してマンツーマンマークを行うプレーはほとんど見られなくなりました。
状況によって一部マンツーマンで行うケースはありますが、その考えはゲームモデルに左右されます。
②ゾーンマークとは
■定義
自分の守るゾーンに立ち、そこに侵入しようとするもしくは侵入してきた相手を継続的に警戒すること
チームの約束事として与えられたゾーンにポジションをとり、そのゾーンに侵入してくる相手を警戒するのがゾーンマークの基本的な考え方です。
図では各選手が担当するエリア(ゾーン)にポジションを取り、CBは中盤に下がったFWを追跡せずMFにマークを渡しています。
そしてCBのゾーンにサイドから侵入してきた選手を警戒もしくはマンツーマンマークを取りに行っています。
このように各選手が自分のゾーンを守りながら、敵が動いた場合にはマークを受け渡しながらマーク・警戒を行うアクションがゾーンマークになります。
同じゾーンに2人の選手が侵入すれば、同時に2人を警戒し、いなければ侵入の可能性がある選手を意識します。
特徴
- ボールがある位置で守備側の選手のポジションが決定される
- 相手の移動にともないゾーン間でのマークの受け渡しが必要になる
- 同時に複数の選手を警戒しなければならないケースが起こる
繰り返しますが、どこまでついて行ってどこまでついていかないかは基本的にはゲームモデルのプレー原則に設定されます。
補足:他の守備の戦術コンセプトである、守備の警戒(Vigilancia defensiva)(ビヒランシア・デフェンシーバ)との違いは、ボールが渡った時にマークの定義にあるように自由にプレーする時間とスペースを与えないのがゾーンマークで、素早くアプローチできないポジションの選手に対しては守備の警戒を行うという認識で良いかと思います。
>>不測の事態に備える意識【守備の警戒】サッカー戦術コンセプト
③ジュニア年代におけるマンツーマンのよくあるミスと指導ポイント
マンツーマンの方法、ジュニア年代でよくあるミスと指導ポイントについて、以下の動画で徹底解説しているので参考にして見てください。
3.マークの3原則
日本でよく定義されてきたマークの3原則について解説します。
文字より動画の方がアニメーションを使って説明しているのでわかりやすいです。
ジュニア年代では、コーチが選手にマークをするよう促しても適切なポジションが取れない子どもは多いですね。
その時はマークの3原則から教えてあげるのが良いかもしれません。
①マークの3原則とは
マークの3原則とは以下の通り。
- ゴールの中心とマークを結んだライン上に立つ
- マークとボールを同一視野に入れる
- パスカット、アプローチに行ける距離
基本的には特定の選手をマークする時に、上記の原則を守ることによって背後を取られず、ボールを奪うアプローチに行けるという考えです。
②マークの3原則の注意点
この原則の理屈でいくと、ゾーンディフェンスにおけるマークの方法と違うという意見も出てくると思いますが、前述したゾーンマークの補足の部分を見てください。
ゾーンディフェンスでは、特定のスペースを守りながらゾーンマークを行えるケースと、マークではなく守備の警戒というレベルがあります。
微妙なニュアンスや一部原則と矛盾することもありますが、とりあえずマークの3原則とはそういうものだという理解で大丈夫です。
あくまでも「原則」なので、それを崩すことも可能です。
4.まとめ
- マークとは相手に自由にプレーする時間とスペースを与えないための守備のアクション
- マークにはマンツーマンとゾーン、2種類の方法がある
- マンツーマンは同じ選手をマークし続けること
- ゾーンマークはまずはスペースを守り、そこに侵入してきた相手を警戒すること
- ジュニア年代にはマークの3原則を理解させる
今回はサッカーにおける守備の戦術コンセプトであるマークについて解説しました。
育成年代に関しては、まず基本となる2つの方法を理解・実行できるベースを作ることが重要です。