こんにちは、講師のカズです。
サッカーの指導現場において、チームが上手く機能していない時には以下のような現象がよく起きます。
- 自分の指導に対して選手が話を聞いてくれない
- 練習中にすぐにふざけて困ってしまう
- 選手の反応がイマイチだなと感じる
このような状態の時、コーチ自身は問題は起きていないと感じていても、外から見るとチームが崩壊しておりこのチームでは子どもが成長しないというケースが多々あります。
よくよく観察すると選手たちにやる気が感じられない。
コーチの話を聞かずに好き勝手にやっている。
もしくは子どもたちが陰でコーチの文句ばかりを言う。
これはチームが完全に崩壊してる状態で、このような状態が続くと絶対に選手はスキルアップしません。
そして「崩壊していることにすら気づけない指導者は多い」というのが僕の認識です。
今回はなぜチーム崩壊が起こるか?その原因と改善方法について解説します。
動画で解説
1.チーム崩壊とは?リーダではないサッカーコーチ
①チーム崩壊とは何か
チームが崩壊するとは、指導者がリーダーとして選手に認められていない状態。
選手がコーチのいうことを聞かず、影響力を持っていない状態です。
学級崩壊と同じで、子どもたちがリーダーであるはずのコーチの言葉に耳を傾けず、好き勝手にやっている状態。
②ジュニア年代の典型的な例
よくあるジュニア年代の例を挙げてみます。
- 選手がコーチの言うことを聞かない
- コーチの指示とは別に好き勝手にやっている
- 全体的にやる気が感じられない
- すぐにふざける
- コーチが試合中にアドバイスを送ってもピッチの中でコーチの文句を言っている
選手たちは向上心を持っておらず、チームワークもないしコーチのアドバイスに耳を傾けない。
つまり個人・組織をコントロールすることが不可能な状態で、コーチが発する言葉に影響力がない。
これらの現象が起きた時、チームが崩壊していると言っても間違いありません。
僕もまだ未熟な頃はイマイチ選手をコントロールできていませんでした。
というか、チームが上手くいっていないことに気づいていない。
この記事を読まれる方の中にも「チームが上手くいっていないことすら気づいていない」ケースも多いと思います。
しかし、ジュニア年代の指導歴25年の知識と経験を経て、問題点と改善方法の具体的なポイントが分かるようになりました。
サッカーコーチが自分の指導において注意すべき点を解説していきます。
繰り返しますが、チーム崩壊が起きていると絶対に選手は成長しません…
2.チームが崩壊した後に残るもの
チームが崩壊した後に残るもの、それは…
敗者のメンタリティ
チーム崩壊の後にはこの典型的な「敗者のメンタリティ」が蔓延します。
- 向上心がない
- 規律がない
- 全てが適当・いい加減になる
- 真剣にやる選手の足を引っ張る
- できないことや負けを人のせいにする
- コーチの指示には従わず、ネガティブなことを好き勝手にやる
このような敗者のメンタリティが充満しているチームでは、当然ながらサッカー面でも人間教育の面でも選手のレベルアップは望めません。
つまり無駄な時間をただただ過ごすだけになります。
3.崩壊への道のりを歩みだしたことに気づけないサッカーコーチ
このような状態になっていることに、コーチ自身が気づいているケースは改善の余地があります。
しかし気づいていない場合にはもうそのコーチでは修復不可能です。
「コーチをやっていればそれくらい分かるよ」という声もありますが、実は子どもたちがあまり露骨にそのような雰囲気を出していない時、経験の浅いコーチは気づかないケースが多々あります。
もしくは、崩壊の最終段階に入っていればコーチも気付きますが、チームがそのような状態に少しずつ向かっていることに気づかない指導者は多いです。
①コーチの言葉が選手に響いていない具体的なケース
コーチの言葉が選手に響いていないとはどういうことでしょうか?
実際に良くある例を見てみましょう。
例1)
「この練習では〇〇と〇〇を意識しよう」
→そのポイントを選手が意識していない
例2)
「給水後の集合は早くしよう」
→歩いている選手がいる
例3)
「パスを受けるときは声を出してボールを呼ぼう」
→声を出さない
このような例は全て、コーチが言っていることを選手が実行してないケースです。
コーチは言っているけど選手がやらない。
コーチの声かけに対して選手が反応を示していない例です。
すぐにチーム崩壊は起きませんが、崩壊への第一歩を確実に踏み出しています。
②実際にジュニア年代の指導で見た体験談
次に僕が実際にジュニア年代の指導現場で見た体験を紹介します。
試合中にコーチの言葉に対してこっそり文句を言っている
公式戦で審判を行なっていると、ベンチには聞こえないピッチ内の選手の声がよく聞こえます。
監督が選手の名前を呼んで「もっと〇〇しろ!」
その瞬間子どもが小声で「うるせー…」
試合後のミーティングの内容が響いていない
試合に負けた後のミーティングで監督が「こんなんじゃダメだ。そもそも練習が足りない」と説教。
いなくなると子どもたちだけで「相手強すぎるから勝てるわけないよね…..ちゃんと練習してきたし…」
エースがチームメイトに罵声を浴びせる
ミスを指摘されるのはいつもエース以外の選手。エースの選手は周りの子どもたちに言いたい放題。
そしてチームでの存在意義を感じられない子どもたちはエースの罵声にひたすら耐える。
相手選手に「死ね」と発言
私のチームの選手がハーフタイムに戻ってきて「コーチ。相手に死ねって言われました…」
そのような発言を選手がしている状態に気づいていない。もしくは知っていて何も言わない。
————–
以上、僕が経験してきた中で実際に起こったよくある例です。
すべてコーチの言葉に対して選手がポジティブに反応していない、もしくはコーチ自身が問題に気づいていない典型的なケースです。
4.コーチが影響力を失ってしまう原因
子どもたちがコーチの言葉に対して反応しないと言うことは、コーチがそのグループの中で選手に対してリーダー的存在、もしくは影響力を持った存在になっていないことが大きな問題の一つです。
つまり、選手側からすると「コーチの言ったことをやらなくても良い」と感じている状態で、そのような影響力を失っている状態になる過程にはいくつかの原因があります。
- コーチが言うことを選手が正しいと思っていない
- 取り組まなくても指摘されないケース
- 取り組んだのに指摘されない
このようなことが起き続けると、子どもたちはコーチの言葉に反応しなくなります。
①コーチが言うことを選手が正しいと思っていない
自己主張の強い選手や、思春期に入った選手はコーチの言っていることを鵜呑みにはしません。口には出しませんが、コーチが言っていることはおかしい、間違っている、納得できないと感じることが続くと影響力を失います。
②取り組まなくても指摘されないケース
コーチが〇〇しようと言った時、選手が取り組んでいないないにも関わらず指摘されないケースです。
つまり選手の行動に対してフィードバックがないので、結局行動しようがしまいが何も指摘を受けないので、コーチの指示に対して取り組まなくなります
③取り組んだのに指摘されない
先の例とは反対のケースで、コーチの声に反応して取り組んだのにも関わらず、何も指摘も受けない。
この場合はせっかく取り組んだのにポジティブなフィードバックを受けないので、これを繰り返すと選手はやはり取り組まなくなります。
このように選手の行動に対してきちんとしたフィードバックを繰り返していない時、だんだんと選手をコントロールすることが難しくなり、最終的にコーチの話を聞かない、つまりチーム崩壊へと向かいます。
5.チーム崩壊しないための5つの指導方法
最後にチーム崩壊しないための方法、サッカー指導においてどのような改善を行うかについて解説します。
ポイントは以下の通りです。
- チーム内の基準を作る
- 自分の言葉に責任を持つ
- 選手を注意深く観察する
- 必ずフィードバックを行う
- 間違っていることは間違っていると諭す
それぞれ詳しく見てみましょう。
①チーム内の基準を作る
チームの中にルールを設定したり、やって良いこととやってはいけないことを明確にします。
常にその基準に基づいて選手を評価すること。評価が不公平にならないように気をつけます。
②自分の言葉に責任を持つ
少し抽象的な表現ですが、コーチは自分の言葉に責任を持たなければなりません。
例えば「練習中にふざけた場合に2回以上注意されたら、次のトレーニングセッションには参加させない」と選手に伝えたとします。
実際に2回注意されたにも関わらずそれが実行されない。もしくは1回なのに練習から外される。
このような場合はコーチの発言がブレています。
このような些細なことの積み重ねが信頼を失う原因です。
③選手を注意深く観察する
自分が発した言葉に対して選手がどのように感じているかを読み取る能力は大切です。
雑談でもプレーの指摘やアドバイスでも、声をかけた時にどのような反応を示しているか。ポジティブに受け取っているのか、ネガティブに受け取っているのか。
その反応を見逃さないためにも選手全員を深く観察する必要があります。
もし反応がないようなら別の方法で選手へ働きかける。
どうしたら選手の心に響くのかを模索します。
④必ずフィードバックを行う
前述した「コーチが取り組ませようとしたこと」に対して選手が取り組んでいなければそれに対するフィードバック。
積極的に取り組んだなら、それに対するポジティブなフィードバックを必ず行います。
つまり選手側からすると「このコーチは些細なことでも常に自分を見ている」と感じさせることができれば信頼関係が生まれます。
>>プレーにおける具体的な例は、選手が上手くならないサッカーコーチの特徴・現象を捉える基本スキルの『③目に見えない現象を指摘するコーチング』を参照してください。
⑤間違っていることは間違っていると諭す
信頼関係とは何も選手を褒めることだけではありません。
選手の行動に対して叱るケースもあります。もちろん2人で話して諭すケースも。
方法はコーチのキャラクターによって異なりますが、叱ることも立派なフィードバックです。
ただしネガティブな叱り方ではなく、選手を良い方向へ導くためのものでなくてはなりません。
6.まとめ
長くなったので最後に要点を整理しておきます。
- チーム崩壊とは学級崩壊と同じで、子どもたちが好き勝手にやっている状態
- チーム崩壊が起きるとコーチはリーダの立場を失う
- 子どもに対する影響力がない状態をチーム崩壊という
- 崩壊後に残るのは敗者のメンタリティ
- 崩壊しているチームでは選手はレベルアップできない
今回は選手をコントロールできなくなるチーム崩壊の原因とその指導方法について解説しました。
選手がコーチの指示を聞かなくなるのは当然やってくるのではなく、ほんの些細なことの積み重によります。
それを回避するためには、細かく選手を観察しフィードバックを行うことが重要です!