こんにちは。講師のカズです。
この記事では練習メニューのテーマ設定の方法について解説します。
- 練習テーマとは
- 練習にテーマは設定は必要か
- どのようにテーマ設定したら良いか
基本的にテーマがない練習はありません。
どんな練習であっても何らかのテーマ設定が必要になります。
テーマがない練習では、その目的が明確でないばかりか行き当たりばったりの練習になってしまいます。
この記事では、僕が実践している少し特殊な練習テーマ設定と、選手のレベルに応じた設定方法について詳しく解説します。
動画で解説
※動画アップ後、記事をリライトしてテーマの中に『プレー原則』を入れたため、動画の中ではプレー原則についての言及がありません。
1.練習テーマの設定方法
①練習にテーマ設定は必要か
最初に練習にはテーマ設定が必要かどうかについて。
結論:テーマ設定は必要です
ただし、中期・長期的にトレーニングしないと改善できない部分の練習ではテーマ設定が抽象的になりやすい傾向があります。
また後ほど詳しく見ていきますが、普遍的なものを練習しようとする場合でも同じです。
特にテクニック系の練習や試合中のどんな場面でも共通するものは、抽象的になりやすい傾向があります。
②練習はすべて試合から逆算される
日々の練習はすべて試合から逆算されます。
M-T-M(マッチ・トレーニング・マッチ)という言葉もあるように、試合をして問題点や改善点を抽出してトレーニングする。そしてまた成果を確認するために試合を行う。
このような流れの中で1つ1つの練習メニューを決定します。
当然練習のテーマは試合と関連づけられたものになりますね。
③簡単なゲーム分析から問題点を抽出する
まずは試合を通じて問題点や改善点をカンタンに抽出しましょう。
最初は漠然としたイメージでも構いません。
- なんか全体的にボールが奪えないな
- もっとドリブルで仕掛けることができたらいいのに
- パスがもらえない。サポートの問題かな?
こんな感じで漠然とした分析でも最初はOKです。
ただし後ほど解説しますが、このように分析した場合、試合に直結するというよりは普遍的なテーマ設定になりやすいです。
④具体的なゲーム分析から問題点を抽出
最初の段階での分析ができるようになったら、次は分析レベルを上げましょう。
例えば、
- ビルドアップの始まりでパスコースが上手く確保できていない
- 前進の時に詰まってしまうのでサイドチェンジが必要だ
- フィニッシュでコンビネーションと裏への飛び出しのバランスが取れていない
こうすると問題が具体的になってきます。
具体的な分析は試合に直結しやすいというのはイメージできますよね。
分析が具体的になると当然、練習のテーマも具体的になります。
2.実践している練習テーマの設定方法
分析による問題点が抽出されたら練習テーマを整理します。
まずはぼくが実践している練習テーマの設定方法です。
後ほど詳しく解説しますが、まずはどんな感じでテーマ設定をしているかをご覧ください。
■練習テーマ
①目的
②プレー原則
③必要なテクニック・戦術アクション
以上の3つの項目を洗い出し、これら全体を「練習テーマ」としています。
ここまで読んで頂くと「あれ?自分が知っているテーマ設定と違う」と感じる方が多いと思います。
ぼく自身も過去には「サイドチェンジ」や「ポゼッション」といった言葉を練習テーマにしていたこともありますが、長年経験してきて、これだとものすごく曖昧になってしまい、上手くいかない実体験から現在はこのようにしています。
どのような問題が生じるかは後述します。
では具体的な例を見ていきましょう。
3.試合に直結した具体的練習テーマの設定方法
先に少し深い知識が必要な「試合に直結した具体的な練習テーマの設置方法」について解説します。
まずはゲーム分析でサッカーにおける4つのフェーズと11のサブフェーズのどこで問題が発生しているかを分析します。
サブフェーズが分からないという方は、戦術を理解するサッカーの基本構造・4つの局面と11のサブフェーズの記事をご覧ください。
サッカーを構造的に捉えることがすべての出発点です。
①具体的な改善点抽出の例
具体的な問題を抽出するには、試合中に以下の2点に注目して見てください。
①試合中どこのフェーズで問題が発生しているか。
②問題の原因は何か。
すべてはこのフィルターを通して具体化します。
分析の具体例をいくつかあげます。
例1)
・「前進とボール保持」のフェーズでカンタンにボールを失っている。
・前進で詰まった時にサイドを変えれないことが原因。
・サポートが上手くできていない
例2)
・攻撃から守備のフェーズでカウンターを受けている
・失った後のプレスとカウンターを受けた時に戻る時間を作れていない
こんな感じで分析すると、問題がより具体的になりますよね。
そしてこれらを先に述べた3つの項目に分類し、それが練習のテーマになります。
例1の場合)
・目的:前進とボール保持
・プレー原則:前進できない場合はサイドを変える
・必要なアクション:
(戦術アクション)サイドチェンジ、サポート
(テクニックアクション)コントロールオリエンタード
例2の場合)
・目的:攻撃から守備への切替
・プレー原則:失った選手と近くの選手は素早くプレスをかけて奪い返す
・必要なアクション:
(戦術アクション)プレス、ディレイ
(テクニックアクション)インターセプト
(上の例はあくまでもイメージです。)
このように考えると、練習のテーマ設定が具体的になります。
例1の場合だと、練習の目的は前進とボール保持をスムーズに行えるようにすること、そのためにサイドチェンジやサポートが必要で、テクニックとしてはコントロールオリエンタードが必要。
これらが練習のテーマ設定になって、あとはこれを満たす練習メニューを考えます。
最初は難しいかもしれませんが、慣れてくるとサッカーを構造的に見ることができるようになりますし、テーマ設定が楽になってきます。
②手段が目的化しないようにする
1つ注意点ですが、先ほどのテーマの中でなぜ「目的、プレー原則、必要なアクション」と分けているかを補足します。
必要なアクションのみをテーマにすると手段が目的化してしまいます。
またプレー原則だけをテーマにすると、目的とそのための方法が見えてきません。
つまり前進とボール保持を確実に行うという目的があって、プレー原則には前進できない場合にはボール保持を優先してサイドを変える、そのためにサイドチェンジやサポートというアクションが必要でる、という考え方です。
サイドチェンジやサポートが目的化してしまうと本来の目的である前進するためという意識が下がってしまいます。
なので、そもそもの目的をしっかりと意識する上でも3つに分けて考えるのをお勧めします。
4.普遍的な練習テーマの設定方法
次に普遍的な練習テーマの設定方法です。
普遍的というとイメージがつきにくいと思いますが、要は具体的なフェーズの設定をせず、試合全般のいろんな場面で共通するテーマです。
ここでは2段階で考えるとわかりやすいと思います。
①やや具体的な改善点抽出
例)
・守備の時に前線のプレスでも中盤でもDFラインでもカバーリングができていない
ゲームからこのように問題を抽出すると、試合全般の中でカバリーングがうまくできていないという問題が起きています。
ただしこれは先ほどのように、どこか限定されたフェーズではありません。
4つの局面の守備、つまり大きな枠組みの中での全体的な問題です。
また、プレー原則云々というよりも、もっと根本的・基礎的な問題です。
そうすると、それを改善する練習のテーマは以下のようになります。
・目的:守備
・必要なアクション:
(戦術アクション)カバーリング
このようにテーマ設定すると、守備時に共通する普遍的なものとしてのカバーリングを練習でテーマにすることになります。
当然、細かなサブフェーズの設定はなく、プレー原則は省略されます。
②具体的なシチュエーションがないもの
- パスが上手く通らない。そもそキックが蹴れていない。
- いつもドリブルだけになっている。パスも覚えさせよう。
このように問題を抽出するとかなり普遍的なものになってきます。
そうすると練習のテーマ設定は以下のようになります。
- 目的:攻撃
- 必要なアクション:パス、キック
こんな感じです。
ここでもサブフェーズの具体的な設定はなく、プレー原則が省略されています。
具体的なテーマ設定と普遍的なテーマ設定の違いがイメージできたでしょうか。
5.練習のテーマ設定は選手のレベルで変わる
ここまで読んで頂くと、大まかには選手やチームのレベルが上がるとより具体的になり、下がると普遍的なテーマになりやすいるということがわかると思います。
またレベルが高くても普遍的なものをテーマとして扱う時には、試合での具体的なシチュエーションが含まれにくくなるということもご理解いただけると思います。
実際にジュニア年代での小学1年生から6年生までをイメージしてもらうとわかりやすいですね。
小学1年生で「攻撃から守備への切替、ディレイ」といったテーマ設定は難しく、小学6年生でテーマが「キック」だとレベルが低く感じますよね。
もちろん、年齢だけでなく子どもたちのレベルによってテーマ設定は変わることがポイントです。
✔︎小学1〜3年生:
課題がテクニックよりになるのでテーマがかなり普遍的になる。
戦術面でも普遍的なテーマが多くなる。
✔︎小学4〜5年生:
やや具体的な戦術アクションやテクニックがテーマになる。
試合のシチュエーションから具体的なテーマも可能。
✔︎小学5〜6年生:
具体的なテーマで練習が行える。
上は大まかなイメージとぼくの経験値的な部分が大きいですが、テーマ設定の参考にして見てください。
6.チームに適したテーマ設定をしよう
書籍などから練習メニューを引用する時、テーマ設定がしっくりこないことがあります。
これは自チームの試合での文脈やゲームモデルが反映されていないからです。
自分のチームに合った具体的な練習テーマを考える時には、ゲーム分析、対戦相手、プレー原則などが影響を与えるため、やはりコーチ自身の頭で考えて練習テーマを設定する必要があります。
もし書籍などから練習メニューを引用する場合は、トレーニングの構造のみを参考にして、この練習だと自分のチームにとってはこういうテーマで行えるな、と考えることもできますね。
具体的なテーマ設定を行うと、ゲームとの関連性がクリアになるのでぜひ試してみてください。