こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代の指導現場では、『指導するグループ内のレベルがバラバラ』といった問題を抱えることがあります。
・チーム内にレベル差があり、同じ練習ができない
・上手い子に合わせると下の子がついてこない
・下の子に合わせると、上の子が退屈してしまう
技術・体格・意欲などがバラバラで、同じチームの中でも「できる子」と「まだこれからの子」が混在していることがあります。
よくある質問として、 「1つのグループにレベル差がある状態で、どう指導すればいいですか?」 という相談をいただくことがあります。
僕自身も、最初の頃は「1つの練習で全員を伸ばそう」として、逆に誰も満足できない練習になってしまったことが何度もあります。
この記事では、コーチが直面しやすい『レベル差のあるグループ』への対応方法について、僕自身の経験も交えながら解説していきます。
1. レベル差があるグループの指導は『よくある悩み』

① 同じチームでも、技術・意欲・理解度はバラバラ
ジュニア年代では、たとえ同じ年齢でも、グループ内のレベルがバラバラの状態があります。
・ボール扱いが上手な子
・基礎がまだ定着していない子
・モチベーションが高い子
・試合は好きだけど練習は嫌いな子
他にも以下のようなグループ構成。
・年齢が3学年くらいにまたがる
・上の子は意識が高いが、下の子はまだ意識は低い
・真面目にやる子とそうでない子が混在
このように、1グループ内に複数のレベルが混在していることは、現場ではよくあることです。
本当は、できるだけ「レベルが同じくらいの選手同士でグルーピング」する方が指導しやすいですが、なかなかそうできない事情もあるかと思います。
2. よくある“レベル差”の失敗パターン

① 上の子に合わせすぎると、下の子がついてこない
レベルの高い子に合わせた練習にすると、他の子たちがついてこれず、止まってしまったり、自信を失ってしまうことがあります。
またレベル高い選手に合わせると、そうでない選手にとっては練習の難易度が高すぎて不可能です。
② 下の子に合わせすぎると、上の子が退屈する
逆に、下の子に合わせて練習を設計すると、上の子が物足りなくなって集中を欠いてしまいます。
最悪の場合は『一緒にやりたくない』みたいな状況になって、コーチとしてはどうしていいか分からなくなることも。
このように「一つの練習で全員をちょうどよく導く」のは、結構難しい状態です。
僕もこのような状態での指導は難しく感じますが、実際に今までやってきた方法を、以下に解説します。
3. 差があるときは『個人で完結する練習』を中心に

① 1人にボール1個での練習は、個に合わせやすい
例えば、ボールフィーリングやドリブル、個人でのシュート練習などの『1人でできる練習』は、グループ内のレベル差がある時にとても便利です。
なぜなら、同じ練習をしていても『個人にのみフォーカス』できるからです。
当然、個人のレベルによってフォーカスする部分を変えます。
例えばリフティングの場合。
A君:身体のいろんな部分を使ってリフティング
B君:得意な足で何回できるか
C君:ワンバウンドしながら何回できるか
など、その子に合った要求を伝えることで、グループ内でのレベル差は関係なくなります。
4. グループ練習でも「個人に目を向ける」

個人でできる練習だけだと飽きてしまうので、以下は、少人数のグループで構成するパターンです。
① グループはなるべく“近いレベル”で組む
担当するグループが、10〜15人規模の場合。
・15人なら3グループに分ける
・10人ならレベルが近い2グループに分ける
このように更に細かくグルーピングしても、なおレベル差はあると思いますが、以下のように工夫します。
② 同じ練習でも「要求するレベルを変える」
例えばロンド(ボール回し)をする場合、
・上の子グループ:『4対2のロンド』2タッチ制限あり
・下の子グループ:『3対1のロンド』フリータッチ
など、同じメニューでも“難易度に差”をつけることで、全員が同じテーマに取り組めます。
③ コーチの視点と声かけを変える
同じ練習をしていても、個人の練習と同じように当然フォーカスする部分や要求度を変えます。
・上の子には「判断スピード」や「サポートの質」
・下の子には「止める・蹴るの基本」や「正しいフォーム」
このように、見る視点を変えて声をかけることで、同じような練習をしながらも、全員が自分の課題に取り組めるようになります。
④ ミニゲームでは「コーチがフリーマンで入る」のも手
どうしても全員でミニゲームをしたいとき、レベル差が大きいと上手くない子がほとんどボールに触れず終わってしまうことがあります。
そんなときは、コーチ自身がフリーマンとしてゲームに参加する方法も有効です。
・上手くない選手にコーチがパスを出して、プレーする機会を意図的に増やす
・ゲームに絡めない選手には、一緒に近くで動いてサポートする
このような関わり方をすることで、レベルが高くない選手のプレー機会と自信を増やすことができます。
僕の場合、例えばロンド(ボール回し)の中で「ずっと守備をしている選手」を見つけたら、自分が介入して守備役に入ってその選手にボールを奪わせます。
そうすると、コーチが手伝ってくれたけども、ある種の成功体験にもなります。
『〇〇がずっと守備をやってるから変わってあげて』とするよりも、こっちの方が変に自尊心も傷つけずに済むかなと思います。
5. 根本的な課題解決方法

ここまで、レベルがバラバラなグループをどう指導するか?について解説してきましたが、最後に別の切り口から。
基本的には同じようなレベルでグループが構成されている方が、指導がしやすいのと、選手たち同士も切磋琢磨できます。
そのような状態を作るには「クラブの会員数を増やす」。
クラブの人数が増えれば、グルーピングしやすくなるだけでなく、人数が少なすぎて思ったような練習ができない、という問題も解消されます。
僕の経験上、人数が少ない中での指導やレベル差がある中での指導は結構難しいです。
そのため、クラブの人数が増えればそのような問題は発生しません。
各指導者、各チーム、いろんな事情があるとは思いますが、この視点も持つことは大切かなと思います。
ただ、これはクラブのコンセプトやブランディングとも関わる話です。
クラブを強化したいのか、現状はどのような状態で、そこからどこへ向かいたいのか。
全ては文脈によって、やるべきことが変わるので、一概には言えません。
6. まとめ
・1グループ内にレベル差があるのは、ジュニア指導現場ではよくある
・1つの練習で全員を同じように導こうとしないこと
・まずは個人で完結できるメニューから始めるとやりやすい
・グルーピングと難易度調整で、同じメニューでも差に対応できる
・コーチ自身が「何を見て」「何を求めるか」を変えることで指導の幅が広がる
・ミニゲームなどでは、コーチがフリーマンになることで補える部分もある
レベル差があるグループの指導は難しさもありますが、見方を変えれば『多様な成長のチャンス』でもあります。
ぜひ、指導現場で試してみてください!