こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代のサッカー指導では、「オフザボールの動き」、特にサポートやマークを外す動きの質を高めることが非常に重要です。
しかし、「もっと周りを見て良いサポートをしよう!」「マークを外してパスを受けよう!」と声かけをしても、子どもたちは具体的にどう動けば良いのか分からず、プレーが改善されないことが多いのではないでしょうか。
・ボールを持っていない選手が、ただ立っているだけになってしまう
・パスコースがなくて、すぐにボールを失ってしまう
・どうやってマークを外せばいいのか、選手自身が理解していない
僕自身も指導を始めたばかりの頃は、「動け!」と抽象的な指示しかできず、選手を混乱させてしまった経験があります。
選手たちは一生懸命やろうとしているのに、具体的な動き方が分からないだけだったのです。

この記事では、そうした悩みを解決するための一つの効果的なトレーニングとして「2vs2+2サーバー ロンド」を紹介します。
この練習を通じて、選手たちが「いつ、どこに、どのように動けば良いのか」を体感的に学び、試合で活きるオフザボールの質を高めることができます。
練習の進め方から、具体的な指導のポイントまで詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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動画で解説
1. 練習の進め方とオーガナイズ
まずは、この練習の基本的なルールと進め方について解説します。非常にシンプルなので、すぐに現場で取り入れられると思います。
① 概要
【コートサイズ・人数・時間】
◾️対象:U10
(Min_Age: 10)(Max_Age: 12)
◾️人数: 1グループ6人(攻撃2人+サーバー2人 vs 守備2人)
◾️コート: 12m × 14m 程度
(選手のレベルや狙いに応じて調整)
◾️時間: 15分
◾️難易度:★★★☆☆
【基本的なルールと進め方】
①サーバー(オレンジ)は両端のライン上付近に立ち、横方向の移動のみ。
②攻撃側(青)は、2人のサーバーを使いながらボールを保持し、反対側のサーバーまでボールを届けたら「前進成功」となります。
③サーバーからサーバーへの直接パスもOKです。
④守備側(ピンク)はボールを奪ったら攻撃側と交代します。

② メモ
この練習を行う上で、一つ指導者が意図的にコントロールできるポイントがあります。
それは「ドリブル突破を許可するかどうか」です。
もし、パスを繋いで前進することだけにフォーカスさせたいのであれば、ドリブルでの突破はなしというルール設定が良いでしょう。(あまり推奨しませんが…)
一方で、より試合に近い状況を作り出したい場合は、相手と駆け引きをしながらのドリブル突破を積極的に活用させることも有効です。
ドリブルを許可すると、守備側はパスコースだけでなくドリブルコースも警戒する必要があるため、攻撃側はよりリアルな状況で「パスか、ドリブルか」の判断を迫られることになります。
チームの課題や選手のレベルに応じて設定を変えてみてください。
③ 備考
この練習の効果をさらに高めるための工夫として、サーバーからサーバーへ直接パスが通った際のルール設定があります。
例えば、「パスを受けたサーバーは必ずワンタッチでプレーする」という制限を加えます。
こうすることで、パスを受けたサーバーは時間的な余裕がなくなるため、中にいる攻撃側の選手が「素早くサポートに入ること」が求められます。
この小さな工夫が、選手たちの予測や準備のスピードを格段に引き上げ、練習のインテンシティを高めることにつながります。
2. 練習の狙いと目的
このトレーニングは、単にボールを回すだけでなく、攻撃と守備の両面において重要な戦術的アクションを学ぶことを目的としています。
① 攻撃の狙い:マークを外す動きの習慣化
この練習の最大の狙いは、攻撃側の選手が「自分のマークを外してからパスを受ける」という動きを習慣化することです。
常に相手DFと駆け引きをしながら、フェイントや予備動作を使って一瞬のフリーな状態を作り出し、味方からのパスを引き出す。この「マークを外す動き」が、攻撃をスムーズにするための第一歩となります。

② 攻撃の狙い:パスを出した後の連続した関わり
パスを出した後にプレーを止めるのではなく、「パスを出したら、すぐに次のサポートに入る」あるいは「DFの背後を狙う動きをする」といった、連続した関わりを意識させます。これにより、チーム全体の攻撃に厚みと流動性が生まれます。ワンツーパスなども自然と起こりやすくなるでしょう。
③ 守備の狙い:ギャップのケアとチャレンジ&カバー
守備側にとっては、2人のDFの間(ギャップ)を常に警戒しながら、ボールホルダーに対して適切なタイミングでアプローチ(チャレンジ)する練習になります。
味方がアプローチに行った際には、もう一人の選手がカバーリングのポジションを取るという、チャレンジ&カバーの基本的な動きと思考を養うことができます。

3. 指導のポイントとキーファクター
この練習の効果を最大限に引き出すために、指導者が意識すべきキーファクターと声かけのポイントを解説します。
① 攻撃側のキーファクター:「幅と深さ」を意識させる
攻撃側の2人は、常に2人の関係で「幅と深さ」を作ることを意識させましょう。
同じ横並びのラインに立つのではなく、一人が少し高い位置を取ったり、横に開いたりすることで、守備側はマークの的を絞りにくくなります。これにより、パスコースが生まれやすくなります。
「二人の距離は適切?」
「もっと横に広がってみよう」
「一人が少し下がって、段差を作ってみよう」
といった声かけも有効です。
② 攻撃側のキーファクター:「カットイン」という選択肢
縦方向のサーバーへのパスコースを切られた際に、多くの選手はプレーを止めてしまったり、無理にパスを出して奪われたりします。
ここで指導者は、「カットイン(斜め内側へのドリブル)」という選択肢を提示してあげることが大切です。
カットインすることで、中央や逆サイドに新たなパスコースやスペースが生まれる可能性があります。「縦がダメなら、中に切れ込んでみよう!」という声かけで、選手のプレーの幅を広げることができます。
③ 守備側のキーファクター:「ギャップを閉じる」意識
守備側には、まず「2人の間を簡単に通させない」という意識を持たせましょう。
どちらか一人がボールにアプローチに行き、もう一人がその背後のスペースを埋める。
この基本的な役割分担を徹底させることが重要です。「ボールに食いつきすぎないで!」「中央のコースをまず消そう」といった声かけで、守備の安定感を高めます。

④ 陥りがちなミスとコーチングのヒント
この練習を始めたばかりの頃は、守備側の選手がそれぞれマンツーマンでマークについてしまい、簡単に中央のギャップをパスで通される現象が起こりがちです。
その際には、一度プレーを止めて「今、なぜ簡単にパスが通ったんだろう?」と選手に問いかけ、DF2人の間のスペースをケアする必要があることを理屈で説明してあげると良いでしょう。
また、ギャップにパスを通されることが「試合中に何を意味している」かも、説明する必要がありますね。
他にも、攻撃側もパスを受けた後に動きが止まってしまうことがあります。
その場合も「パスを出したら終わりじゃないよ。次、どこに動けばチャンスになる?」と問いかけることで、連続してプレーに関わる意識を促します。
まとめ
最後に、この練習で得られる効果とポイントをまとめておきます。
・マークを外す動きの習得: 相手DFとの駆け引きからパスを受ける感覚を養う。
・パス&ムーブの意識付け: パスを出した後の連続したプレー参加を促す。
・サポートの質向上: 幅と深さを意識したポジショニングを学ぶ。
・守備の連携強化: ギャップをケアし、チャレンジ&カバーの基本を身につける。
・状況判断能力の向上: 縦パス、カットイン、ワンツーなど、状況に応じたプレー選択の幅を広げる。
この「2vs2+2サーバー ロンド」は、オフザボールの質を高めるための要素が詰まった非常に効果的な練習メニューです。
最初は上手くいかないこともあるかもしれませんが、繰り返し行うことで選手たちは確実に成長します。
ぜひ、皆さんの指導現場でも試してみてください!
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