こんにちは、講師のカズです。
「もっと子どもたちの指導が上手くなりたいけど、具体的にどうすれば…」
「自分の指導方法に限界を感じているけど、スキルアップの方法が分からない…」
こんな風に、指導者としての成長の道筋について悩むことは、僕自身も数えきれないほど経験してきました。
特に指導を始めたばかりの頃は、何をどう学べばいいのか、暗中模索の日々でした。
しかし、ある考え方と出会い、それを実践することで、僕自身の指導者としての成長スピードは格段に上がったと感じています。
それが、今回お話しする『メンターの行動や思考を真似る』というモデリング学習**です。
この記事では、
・なぜ「真似る」ことが成長への近道なのか?
・僕が実際にメンターから学び、指導スキルを向上させた経験
・メンターの見つけ方から、具体的なモデリングの実践ステップ
・単なる模倣で終わらせず、自分の力に変えるための秘訣
など、僕の体験談を交えながら、具体的にお伝えしていきます。
この記事を読めば、指導者としての学び方や成長のヒントが見つかり、明日からの活動がより充実したものになるかもしれません。
ぜひ最後までご覧ください。
1. なぜ「真似る」ことが成長への近道なのか?

「学ぶ」の語源は「真似る(まねぶ)」だと言われるように、何かを習得する上で「模倣」というのは非常に効果的な手段です。
では、なぜサッカーコーチとしての成長においても「真似る」ことが有効なのでしょうか。
① 「メンター」とは?あなたの成長を導く羅針盤
まず、「メンター」という言葉について確認しておきましょう。
メンターとは、あなたにとって「この人のようになりたい」「この人の考え方や行動から学びたい」と思える、いわば師匠や指導的助言者のことです。
子どもたちが「メッシみたいになりたい!」とプレーを真似るように、僕ら指導者にとっても、目指すべきメンターの存在は、成長の方向性を示してくれる羅針盤のような役割を果たします。
僕自身、指導者としてのキャリアの中で、幸運にも数名の素晴らしい指導者に出会うことができました。
彼らの指導哲学や選手への接し方、練習のオーガナイズ、そしてサッカーそのものへの情熱。
そのすべてが、僕にとって大きな目標であり、学びの対象となっています。
② 心理学が教える「モデリング学習」の絶大な効果
「メンターの真似をする」という行為は、心理学では「モデリング(観察学習)」と呼ばれ、人が新しい行動やスキルを習得する上で非常に効果的な方法であることが示されています。
これは、対象となるモデルの行動やその結果を観察し、模倣することで、自分自身も同じような行動やスキルを効率的に身につけることができるというものです。
例えば、サッカー指導の場面で言えば、
・コーチがインステップキックのお手本を見せる → 子どもがそれを真似て練習する
・先輩コーチが選手へ効果的な声かけをしているのを見る → 後輩コーチがそれを参考にする
といったことも、モデリングの一例と言えます。
つまり、尊敬できる指導者を見つけ、その人の言動や思考パターンを意識的に「真似る」ことは、自己流で試行錯誤するよりも遥かに早く、質の高いスキルを習得する近道となるのです。
③ 僕がU-6指導の壁にぶつかった時、メンターから学んだこと
僕自身、指導者キャリアの初期に、U-6やU-8といった低学年の指導が非常に苦手でした。
子どもたちの注意を引きつけられない、練習がうまく進まない、どうやってサッカーの楽しさを伝えればいいのか分からない…と、毎日悩んでいました。
そんな時、ある尊敬するコーチと一緒に指導をする機会に恵まれました。
そのコーチの方は、一瞬で子どもたちの心を掴み、笑顔を引き出しながら、自然と練習に集中させていました。
声のトーン、ジェスチャー、言葉選び、練習のテンポ、遊びの取り入れ方…その全てが衝撃的で、「これだ!」と直感しました。
それからというもの、僕はそのコーチの立ち振る舞いや声かけを徹底的に観察し、自分の指導に少しずつ取り入れていきました。
最初はぎこちなく、うまくいかないこともありましたが、諦めずに「真似る」ことを繰り返すうちに、徐々に子どもたちの反応が変わり、僕自身も低学年指導への苦手意識が薄れていくのを感じました。
この経験は、モデリング学習の威力を肌で感じた、忘れられない原体験です。
2. 最速でスキルアップするための「モデリング」実践ステップ

では、具体的にどのようにメンターを見つけ、何を真似ていけば良いのでしょうか。ここでは、僕が実践してきたステップをご紹介します。
① あなたにとってのメンターを見つける方法
メンターは、必ずしも世界的に有名な監督や指導者である必要はありません。
身近な指導者:
同じクラブの先輩コーチ、地域で評判の良い指導者など。
書籍や映像
指導理論書や戦術解説書の著者、指導者向けのDVDやオンライン教材の講師。
講習会やセミナー
指導者ライセンスのインストラクター、研修会の講師。
大切なのは、「この人から学びたい」と心から思えるかどうかです。
まずはアンテナを高く張り、積極的に情報収集することから始めてみましょう。
② 具体的に何を「真似る」べきか?
メンターを見つけたら、次は具体的に何を「真似る」かです。
行動・立ち振る舞い
練習中の選手の動かし方、声かけのタイミングやトーン、ジェスチャー、選手とのコミュニケーションの取り方。
思考・哲学
なぜその練習メニューを選ぶのか、どんな選手を育てたいのか、サッカーを通じて何を伝えたいのか。
言葉遣い・表現
選手に分かりやすく伝えるための言葉選び、キーファクターの伝え方、ミーティングでの話し方。
メンターの表面的な行動だけでなく、その背景にある思考や哲学まで理解しようと努めることが、より深い学びに繋がります。
③ 「守破離」を意識したモデリングの段階
武道や芸事の世界でよく言われる「守破離(しゅはり)」という考え方は、モデリング学習を進める上でも非常に参考になります。
守(しゅ): まずはメンターの教えや型を忠実に守り、徹底的に真似る段階。自己流を挟まず、基本をそのまま吸収することに集中します。
破(は): メンターの教えを理解した上で、他の良いものも取り入れ、自分なりに工夫し始める段階。基本を土台に、自分に合った形に少しずつ変化させていきます。
離(り): メンターの型から離れ、独自の新しいものを生み出していく段階。自分自身のオリジナリティを確立します。
いきなり「離」を目指すのではなく、まずは「守」を徹底することが、結果的に最も早く成長できる道だと僕は考えています。
④ 僕が「練習メニューの引き出し」を増やした方法
指導者初期の頃、僕は練習メニューのバリエーションが乏しく、いつも同じような練習ばかりしていました。
当然、子どもたちは飽きてしまい、練習の雰囲気もマンネリ化していました。
そんな時、ある指導者からオランダのドリルトレーニングメソッドがまとめられたビデオ教材を譲り受けました。
そこには、個人技術を体系的に向上させるためのドリルや、コーチングの声かけ、練習の進め方などが詳細に解説されていました。
僕はそのビデオを何度も繰り返し見て、書かれていることを鵜呑みにし、練習でひたすら真似しました。
最初は上手くいかないこともありましたが、続けていくうちに、選手たちの技術が目に見えて向上し、試合でのプレーも変わってきたのです。
この経験から、「まずは一つの型を徹底的に真似てみる」ことの重要性を学びました。
そして、その成功体験が自信となり、他の指導法や戦術書を読む際にも、「これを自分のチームでどう活かせるだろうか?」と主体的に考えられるようになったのです。
3. モデリングを「自分の力」に変えるために

メンターを真似ることは非常に有効な学習方法ですが、ただの模倣で終わってしまっては意味がありません。
真似を通じて得たものを、いかにして自分自身の力に変えていくかが重要です。
① ただの模倣で終わらせないための「問い」
メンターの行動や言葉を真似る際には、常に次のような「問い」を自分自身に投げかけることを意識しています。
「なぜ、このメンターはこの場面でこう動いたのだろうか?」
「この言葉かけには、どんな意図が隠されているのだろうか?」
「この練習メニューの狙いは何か? 自分のチームにどう応用できるだろうか?」
このように、表面的な行動だけでなく、その裏にある「なぜ?」を深く考えることで、メンターの思考プロセスや判断基準を学び取ることができます。
これが、単なる模倣から「理解」へとステップアップするための鍵となります。
② メンターがいない…そんな時の「仮想メンター」活用法
「身近に尊敬できるメンターがいない…」という方もいるかもしれません。
そんな時は、「仮想メンター」を見つけるのも一つの手です。
書籍や記事: 著名な指導者の著書やインタビュー記事を読み込み、その考え方や哲学を深く掘り下げる。
映像資料: 強豪チームの試合映像や指導ドキュメンタリーを見て、戦術やコーチングスタイルを分析する。
大切なのは、一方的に情報を受け取るだけでなく、そこから「自分ならどうするか?」「自分のチームでどう活かせるか?」と主体的に考え、仮想の対話を通じて学びを深めていくことです。
③ 成長し続けるコーチが持つ「学びのスタンス」
サッカーの指導法や戦術は常に進化しています。だからこそ、僕たち指導者は常に学び続ける姿勢を持つことが大切です。
謙虚であること: 自分の経験や知識に固執せず、新しい情報や異なる意見に対してもオープンであること。
探求心を持つこと: 「もっと良い方法はないか?」と常に問い続け、現状に満足しないこと。
実践と振り返りを繰り返すこと: 学んだことを現場で試し、その結果を振り返り、改善していくサイクルを回し続けること。
このような「学びのスタンス」を持つことが、メンターからの学びを最大限に活かし、自分自身の指導者としての価値を高め続けることに繋がると、僕は信じています。
まとめ
今回は、サッカーコーチが最速で成長するための「モデリング学習法」について、僕自身の経験を交えながら解説しました。
メンターの力: 尊敬できる指導者(メンター)は、あなたの成長を導く羅針盤です。
モデリングの効果: メンターの行動や思考を「真似る」ことは、スキル習得の最も効果的な方法の一つです。
守破離のステップ: まずは型を忠実に守り(守)、次に自分なりに工夫し(破)、最終的に独自のスタイルを確立する(離)という段階を意識しましょう。
「なぜ?」を問う: 単なる模倣で終わらず、メンターの行動の背景にある意図や思考を深く理解しようと努めることが重要です。
学び続ける姿勢: 常に謙虚さと探求心を持ち、実践と振り返りを繰り返すことが、指導者としての成長を持続させます。
「自分もあのコーチのようになりたい」そう思えるメンターに出会えたなら、ぜひその人の行動や考え方を「真似る」ことから始めてみてください。
最初は小さな一歩かもしれませんが、その積み重ねが、必ずあなたの指導者としての成長を加速させてくれるはずです!