こんにちは、講師のカズです。
ジュニアサッカーの指導で、子どもたちの声出しが少なくて活気がなかったり、ボールを要求する声がなく、それを改善するためにどう指導したら良いか分からないということはよくあります。
高学年になると、もっと自分たちで声をかけあってプレーできるようにしたいとコーチとしては考えるところです。
コーチが求めるのは「もう一点とろう!おー!」などの盛り上げる声だけではなく、もっと具体的な「選手どうしで指示を出す声」ですが、なかなか上手く行きません。
・声を出してプレーできない
・試合中にどんな声を出していいか分からない
・そもそも練習でも声が出ない
実際に指導現場で起こるいくつかのケースではこのような課題が挙げられます。
今回は僕が実践している試合中に選手たちどうしで声かけするようになる方法について解説します。
この記事を読めば、試合中に子どもたちが自分たちでお互いに声をかけ合うようになるのでぜひ最後までご覧ください。
動画で解説
1. チーム全体のプレーの方向性が決まっていると声が出しやすい

最初に結論ですが、試合中に選手どうしで声かけ(コーチング)できない大きな原因は以下のものです。
チーム全体のプレーの方向性が明確でない
プレーに対する指示の声が出ない問題、今のこの場面ではチームとしてこうするといったチームの方向性が明確でない場合に起きる現象です。
いくら選手に「フリーだったらボールを呼ぼう」とか「声を出したら味方を助けられるよ」と諭してもなかなか改善にはつながりません。
なぜなら選手の心境としては以下のようになるからです。
・指示を出す必要性は分かるけど、いつどんな指示を出していいか分からない
・間違った指示を出すのは嫌だ
・自分も言われたらどうしよう
このような不安が選手の心理にある場合、積極的な声は出てきません。
① プレーの方向性とは共通認識
専門的に言えばゲームモデルですが、ここでは簡単にチームとしての共通認識としましょう。
例えば以下の通り。
1.サイドから攻める時にスペースがなくて難しい場合は一度下げてサイドを変える
2.サイドで崩す場合はコンビネーションを使う
3.ボールを失ったら近くの選手が素早くプレスをかける
このように、チームとしての約束事を明確化することがチームの共通認識(各選手が同じシーンで同じイメージを持つこと)につながり、それによりチーム全体のプレーの方向性が明確になります。
② 同じ認識だから指示が間違えにくい
例えば
「今のところはバックパスでしょ」
「今のところはワンツーだよ」
「失ったからすぐにプレスに行けよ」
このように選手どうしのイメージの共有が増えてくると、自然と声が出やすい状況になります。
なぜなら共通認識は全員が同じことを考える作業なので、指示として間違えにくいからです。
余談ですが、なぜチームの中で発言力がある選手は自然と声が出るのかは『自分が考えていることは正しい』と思っているからです。
試合中にコーチが選手に指示を出す時は「自分の中の正解」を伝えていますよね。
それをチームの共通認識としてプレーの方向性に結びつけます。
③ コーチのひと手間を加える
そのように共通認識が出来上がってきたらあとはコーチの一押しです。
例えばセンターバックの選手にこのように問いかけて促します。
コーチ「今のところはサイドバックが無理やり攻撃しようとしたけどチームとしてはどうしたらいいの?」
選手「一度下げてサイドを変えた方がいいです」
コーチ「じゃあ、サイドの選手はプレスを受けて見えていなかったから次は後ろから『下げろ』『変えろ』とコーチングしよう」
コーチ「(サイドバックの選手に)もしサイドで詰まったらCBがコーチングするからその指示を聞こう」
このような感じで、考えていることは間違っていないことを肯定して、コーチングに関する相互理解を深めるように促します。
2. 問いかけるという方法だけでは実際に声が出ない

ここで僕も最終的には「選手に問いかける方法」を使うのですが、その前の共通認識の段階が整備されていないとなかなか声が出ません。
「今のはどうしたらいい?」
「他に方法はなかった?」
このような漠然とした問いかけから選手に答えを自ら考えさせ、それが試合中に声かけをするアクションにつながるという方法は、僕の経験からするとかなり難易度が高いものでほとんど上手くいきません。
そのため普段のトレーニングの中で「共通認識」という時間のかかる作業を行い下地を作っておく必要があります。
3. 声を出さないといけない練習を組むだけでは不十分

選手の声が出ないことの解決方法として、練習の中に声を出さないと成功しないようなメニューを組むという方法がありますが、実際にそのような練習を行うとある程度の声は出ます。
まずはそもそも声が出ないのであれば、練習で質を問わずに量を確保しましょう。
最初の段階として、声を出すことが恥ずかしくない・コーチングの質より先に量を出させる、という意味では使えます。
しかし、それが直接試合中に声が出ることにはつながりません。
パスを出す・受ける前に「名前を呼ぶ」「ヘイ!」と要求することは練習でも促せますが、試合になると「ここでパスをもらうことが合っているのか?」という不安から「間違えたくない心理」が働き選手の口が重くなります。
そいうった不安が解消されなければ、やはり指示を出す声にはつながりませんよね。
繰り返しますが、「試合中に選手どうしで声出し(コーチング)ができるようになる」にはやはり「チームのプレーの方向性の共通認識」がポイントになります。
まとめ
今回は、試合中に選手同士で声かけ(コーチング)ができるようになるための具体的な方法について解説しました。 最後に要点をまとめておきます。
声が出ない根本原因
選手同士で声が出ない大きな原因の一つは、チーム全体のプレーの方向性が明確でなく、共通認識が持てていないことです。
共通認識の重要性
チームとしてのプレーの約束事(ゲームモデルやプレー原則)を明確にすることで、選手は「今何をすべきか」という共通のイメージを持ちやすくなり、指示の声も出しやすくなります。
コーチの役割
共通認識を促し、選手が「自分の考えは間違っていない」と自信を持って声を出せるように、肯定的な声かけや問いかけでサポートすることが大切です。
練習の工夫だけでは不十分
声を出さないと成功しない練習メニューを組むだけでは、試合中の本質的な声かけには繋がりにくいです。「間違えたくない」という選手の心理的なハードルを下げるアプローチが必要です。
問いかけの前提
選手に漠然と問いかけるだけでは効果は薄く、まずはチームとしての共通認識という土台を時間をかけて作ることが不可欠です。
「声を出せ!」と指示するだけでなく、選手たちが自然と声を掛け合えるようなチームの土壌を作っていくことが、指導者として非常に重要な役割だと考えています。
皆さんの指導現場でも、ぜひ今回紹介したアプローチを試してみてください!