こんにちは、講師のカズです。
ジュニアサッカー指導において、選手の自主性・主体性を育てることは、長期的な成長にとって極めて重要な要素です。
しかし、以下のような悩みを持つジュニアサッカー指導者の方も多いのではないでしょうか。
・選手が自分で考えて行動できない
・いつも指示待ちで主体的にプレーしない
・自主性を育てたいが具体的な方法がわからない
僕自身も指導を始めた頃は、「放任すれば自主性が育つ」と勘違いしていた時期があります。
この記事では、僕が30年の指導現場で実践してきた、選手の自主性を段階的に育てる具体的な方法について詳しく解説します。
この記事を読めば、ジュニアサッカー指導者として選手の真の自立を促し、ピッチ上で主体的にコミュニケーションを取りながらプレーできる選手を育てることができるようになると思いますので、最後までご覧ください。
1. ジュニアサッカーにおける自主性育成の真の目的

①ピッチ上での主体的なプレーが理想
ジュニアサッカーで僕が目指している理想は、選手たちがピッチの上で自分たちでコミュニケーションを取りながら主体的にプレーできるようになることです。
小学生年代から中学生年代にかけて、この能力を身につけることで、選手は自ら判断し、仲間と連携しながらサッカーを楽しめるようになります。
しかし、この理想を実現するためには、プレーの共通認識やそれまでのトレーニングでの積み上げが必要になってきます。
単純に「自由にやりなさい」と言うだけでは、選手の真の自主性は育ちません。
②共通認識作りの重要性
自主性のある選手を育てるためには、まず基本的な共通認識を作ることが不可欠です。
戦術的な理解や、チームとしての約束事を選手がある程度理解してくると、今度は自分たちでそれを確認したり応用したりすることができるようになります。
僕が現場で実践しているのは、基本をしっかりと教えた上で、徐々に選手たちに考える機会を与えていくアプローチです。
この段階的なプロセスが、本当の意味での自主性育成につながると考えています。
2. 生活面からの段階的アプローチ

①小さな種まきから始める
ジュニアサッカーでの自主性育成は、サッカー技術以前の生活面から始まります。
例えば小学1年生だったら、靴紐が結べない子もいます。
その時にまずは自分でやらせてみて、それでも無理だったらサポートしてあげる。
そして「家で練習しておいで」という感じで、自分でできるように持っていきます。
他にも荷物の整理整頓や練習後の片付けなどを率先してやれるように、人間性を磨くといった指導アプローチを行っています。
これらの小さな積み重ねが、後にピッチ上での自主性につながる重要な土台となるのです。
②自分でできることを増やしていく
生活面での自立は、選手の自信と責任感を育てます。
最初は靴紐が結べなかった子が、練習を重ねて自分でできるようになると、「自分でやればできる」という自信が芽生えます。
この成功体験が、サッカーの場面でも「自分で考えて行動しよう」という姿勢につながっていきます。
僕は常に「まずは自分でやってみる」ことを選手に求め、必要な時だけサポートするという姿勢を心がけています。
③率先して行動する姿勢を育てる
荷物の片付けや準備を率先して行える選手は、ピッチ上でも積極的な行動を取れるようになります。
「誰かがやってくれる」ではなく「自分がやる」という意識を持つことで、サッカーでも主体的にプレーに関わろうとする姿勢が育ちます。
この人間性の成長が、技術的な向上以上に大切だと僕は考えています。
チームメイトのために行動できる選手は、必然的に良いコミュニケーションも取れるようになるのです。
3. トップダウンとボトムアップのバランス

①基本的にはボトムアップだが時にはトップダウンも必要
自主性育成というと、すべてをボトムアップ的にやればよいと思われがちですが、実際にはバランスが重要です。
戦術的なことを教える場面など、時にはトップダウンでしっかりと指導することも必要になります。
選手がある程度理解してくると、今度は自分たちでそれを確認したり応用したりすることができるようになります。
基本を教える部分と、選手に考えさせる部分の使い分けが、効果的な自主性育成の鍵となります。
②理解度に応じた段階的な移行
僕が現場で心がけているのは、選手の理解度に応じて徐々にボトムアップの要素を増やしていくことです。
最初はしっかりと指導し、選手が理解を示してきたら、「前の試合でコーチは何て言った?思い出してみて」といった問いかけをします。
また、練習の中でも(例えばポゼッション練習をしている中で「もっとプレーを良くするためにどういうことをしないといけないか、30秒ミーティングしてみて」といった機会を作ります。
このような細かい種まきを積み重ねることで、選手の自主性は確実に育っていきます。
③適切な線引きの重要性
自主性育成で最も難しいのは、どこまで選手に任せるのか、どこまではコーチが指導するのかという線引きです。
やるべきことはちゃんとやらせる。
その中で主体性・自主性を持たせる。
全てが全部選手個人が決めるわけではありません。
このバランスを見極めることが、指導者として最も重要なスキルの一つだと考えています。
適切な線引きができないと、単なる放任になってしまい、本当の自主性は育たないのです。
4. 発話を促す具体的手法

①意見を求めて発話を促す
自主性育成において、選手の発話を促すことは非常に重要な要素です。
僕が現場で実践しているのは、選手に意見を求めた時に何か発してくれたら、基本的には肯定して発話を促すようにすることです。
この発話を促すということが、自主性育成においてすごく大事だと感じています。
選手が自分の考えを言葉にする習慣がつくと、ピッチ上でのコミュニケーションも自然に取れるようになります。
②肯定的な反応で安心感を作る
選手が意見を言った時は、たとえそれが完璧でなくても、まずは肯定的に受け止めることが重要です。
「いい考えだね」
「そういう見方もあるね」
といった反応を示すことで、選手は「自分の意見を言っても大丈夫」という安心感を持ちます。
この安心感があってこそ、選手は積極的に発言し、自分の考えを表現するようになります。
批判や否定から入ってしまうと、選手は発言を控えるようになり、自主性の芽を摘んでしまうことになります。
③段階的に発言の機会を増やす
最初は簡単な質問から始めて、徐々に複雑な内容について意見を求めるようにしています。
「今のプレーはどうだった?」といった感想レベルから、「次はどうすればもっと良くなる?」といった提案レベルまで、段階的に発言の質を高めていきます。
選手が自分でミーティングする機会も、当然毎回ではなく、例えば少し重要な試合の期間が空いている時などにやらせます。
全部が全部ではないけれど、適切なタイミングで機会を設けることが大切です。
5. よくある失敗パターンと注意点

①影響力を持たない状態での放任
自主性育成で最もよくある失敗パターンは、指導者が影響力を持っていない状態で、かつ放任になってしまうことです。
単純に「自由にやりなさい」と言うだけでは、選手は何をしてよいかわからず、結果的に何も学べません。
前回の記事でも解説しましたが、指導者の影響力があってこそ、効果的なボトムアップ指導が可能になります。
まずは選手との信頼関係を築き、影響力を持った上で、あえてボトムアップ的な指導をするからこそ、自主性が育つのです。
②線引きが曖昧な指導
どこまで選手に任せるのか、どこまではコーチから指導するのかという線引きがないことも、よくある失敗パターンです。
この線引きは確かに難しいものですが、明確な基準を持たないと、指導が一貫せず、選手も混乱してしまいます。
僕の基準は「やるべきことはちゃんとやらせる、その中で主体性を持たせる」ということです。
基本的なルールや約束事は守らせつつ、その範囲内で選手の自主的な判断を尊重するというバランスを心がけています。
③性急な結果を求める失敗
自主性育成は長期的なプロセスであり、すぐに結果を求めてはいけません。
小さな種まきを継続的に行い、選手の成長を長い目で見守る忍耐が必要です。
短期間で変化が見られないからといって諦めてしまったり、方法を頻繁に変えてしまったりすると、選手も不安定になってしまいます。
一貫したアプローチを継続することで、確実に選手の自主性は育っていきます。
6. 長期的効果と選手の変化

①ピッチ上でのコミュニケーション向上
自主性が育った選手の最も顕著な変化は、ピッチ上でのコミュニケーション能力の向上です。
自分から積極的に声をかけ、仲間との連携を図ろうとする姿勢が自然に身につきます。
また、試合中に状況が変わった時も、自分たちで話し合って対応を決められるようになります。
これは指示待ちの選手では決してできない、自主性のある選手だからこその能力です。
②判断力と責任感の成長
生活面での自立から始まった小さな積み重ねが、サッカーでの大きな成長につながります。
自分で考えて行動する習慣がついた選手は、ピッチ上でも適切な判断を下せるようになります。
そして、その判断に対して責任を持つという姿勢も同時に身につけていきます。
このような選手は、チームにとって非常に貴重な存在となり、他の選手にも良い影響を与えます。
③チーム全体への波及効果
一人の選手の自主性が育つと、それがチーム全体に波及していく効果があります。
積極的に発言する選手の姿を見て、他の選手も「自分も意見を言ってみよう」と思うようになります。
また、率先して行動する選手がいることで、チーム全体の雰囲気も向上し、より良い環境が作られていきます。
このような好循環を生み出すことが、ジュニア年代での指導における最大の成果だと僕は考えています。
まとめ
・自主性育成の目的はピッチ上での主体的なコミュニケーションとプレー
・生活面の小さな種まきから段階的にアプローチする
・トップダウンとボトムアップのバランスが重要
・発話を促し肯定的に受け止めることで安心感を作る
・影響力を持った上でのボトムアップ指導が効果的
・やるべきことはやらせつつ、その中で主体性を持たせる
・線引きを明確にし、放任にならないよう注意する
・長期的な視点で継続的に取り組むことが大切
この記事では、ジュニアサッカーにおける選手の自主性育成方法について解説しました。
生活面からの段階的なアプローチと、適切なバランス感覚を持った指導により、選手の真の自立を促すことができますので、皆さんの指導現場でも参考にしてみてください!