こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代において、指導者のコーチングは選手の成長に大きく左右する重要な要素です。
しかし、指導歴が浅いうちは、どのように選手に伝えればよいのか迷うことも多いと思います。
・自分のコーチングがうまく選手に伝わっているのか?
・試合中、つい余計なことを言ってしまっていないか?
・選手のプレーがなかなか改善されない理由は?
この記事では、指導歴1〜3年目のコーチが陥りがちなコーチングのミスについて解説します。
僕自身も若い頃に同じ失敗を繰り返していましたが、経験を積むことで少しずつ改善してきました。
いくつかのポイントを意識すれば、コーチングの質が劇的に向上し、選手の成長を実感できるようになると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
1. コーチングのよくある5つのミス

指導歴が短いコーチがよく陥るミスは、以下の5つです。
1.現象のすべてを指摘してしまう
2.試合中に改善できないプレーにアドバイスする
3.表現が抽象的になる
4.評価の基準がぶれる
5.起きた現象のみにフォーカスする
この5つは、どの指導者も一度は経験することだと思います。
僕もかつては、目の前のプレーに反応するだけで、選手の成長を促せていませんでした。
しかし、経験を積むことで、コーチングの本質に気づくことができました。
それでは、具体的にどのようなミスが起こるのか、詳しく見ていきます。
①現象のすべてを指摘してしまう
試合や練習では、良いプレーもミスもたくさん起こります。
指導歴が浅いうちは、選手がミスをするとつい「そこは違う!」「今のはこうすべきだった!」と、すべての現象に対して指摘してしまいがちです。
なぜこのようなミスが起こるのか?
・コーチ自身が試合の中で何を優先して伝えるべきか整理できていない
・試合のテーマが明確でなく、その場のプレーに反応してしまう
②試合中に改善できないプレーにアドバイスする
試合中に、選手にとって難しい戦術的なアドバイスをしても、すぐに改善することはできません。
例えば、僕が若い頃にやってしまったミスとして…
「相手がラインを上げてくるから、ここで2列目の選手が飛び出してオフサイドを回避しよう!」
とハーフタイムに伝えたことがあります。
しかし、選手たちは「なるほど!」と思っても、試合の中で実践することはできませんでした。
なぜなら、普段の練習でやっていないから です。
③表現が抽象的になる
コーチングでよくあるミスの一つに「言葉が抽象的すぎて伝わらない」ことがあります。
例えば、選手に 「もっと動け!」 と言っても、具体的にどう動けばいいのか分かりません。
また、逆に言語化しすぎることも問題です。
すべてを細かく説明しすぎると、選手が自分で考えなくなり、指示待ちになる&窮屈になってしまいます。
④評価の基準がぶれる
指導者が試合中に「あるプレーは注意したのに、同じようなミスはスルーする」ことがあります。
これは、選手にとって 「何が大事なのか分からない」状態 を生んでしまいます。
⑤起きた現象のみにフォーカスする
指導経験が浅いうちは 「目に見えるプレー」 に対してコーチングしがちです。
しかし、サッカーでは 「現象として起きなかったプレー」にも意味があります。
これに関しては、少し話が難しいので、別記事を参考にしてください。
2.僕が実際に行った改善例

以下、箇条書きですが、僕が実際に経験した問題点とどのように改善したかのポイントを解説します。
①コーチングの焦点を明確にする
改善前:
指導経験が浅いころは、試合中に起こるすべてのミスに反応し、指摘していた。
どのプレーにフォーカスするべきか整理できていなかったため、選手にとって重要なポイントが分かりづらくなっていた。
改善後:
・試合の中で 「何を最も重視するか」 を意識し、ポイントを絞ってコーチングするようになった。
・試合中にすべてのミスを指摘するのではなく、再現性のある課題にフォーカスする ことで、選手の理解を深めるようになった。
・プレーに優先順位をつけ、重要な部分だけを選手に伝えることで、コーチングの効果が高まった。
僕の場合、チーム全体では2つくらい。個人レベルでは1〜2つに限定するようにしています。
文脈によっては1つだけに絞ることもあります。
②すぐに改善できない課題は試合中に指導しない
改善前:
試合中に、選手がすぐに対応できない戦術的なアドバイスをしていた。例:「相手のラインが高いから、2列目が飛び出せ!」と指示しても、練習で経験していないため、選手は対応できなかった。
改善後:
・試合中のコーチングでは、選手がすぐに適応できること のみを伝えるようにした。
・戦術的な変更が必要な場合は 試合後の振り返りやトレーニングで修正する ことにした。
・選手にとって「理解できる範囲」「経験のあるプレー」をベースにアドバイスするようになった。
これは学習段階とも関連しますね。
選手がちょっと意識すれば改善できるなら、今まさに必要なもの。
反対に、かなり意識してもまた苦できないなら難易度が高すぎます。
③選手に伝わる表現を意識する
改善前:
・コーチングが抽象的で、「もっと動け!」「考えてプレーしろ!」など、選手にとって何をすればいいのか明確でなかった。
・言語化が足りず、選手がどのように改善すればいいのか分からない状況があった。
改善後:
・「もっと動け!」ではなく、「相手の背後に走り込んでみよう!」 のように具体的な指示をするようにした。
・ただし、すべてを細かく指示しすぎない ことも意識し、選手が自分で考える余地を残した。
・意図的に抽象的な表現を使う場面もあり、選手に「感覚でつかませる」指導を取り入れた。
「考えてプレーしよう!」ではなく、「いついつは、何を考えるべきか」を明確にする方法が良いかと思います。
④コーチングの基準を一定に保つ
改善前:
・あるミスは指摘するのに、同じようなミスが起こったときはスルーするなど、指導の一貫性がなかった。
・これによって、選手が「何が重要なのか?」を理解しづらくなっていた。
改善後:
・評価基準を明確にし、「どのプレーを指摘するのか」を統一した。
・同じミスを繰り返した場合は、適切に指摘し、改善を促すようにした。
・良いプレーについても積極的に評価し、選手にとって「何が正解なのか」を明確に伝えるようになった。
例えば、選手のあるミスを指摘した場合、次に同じような現象が起きた時に指摘しないと「今のは良かったのかどうか」が分かりません。
また反対に、先ほどのミスの指摘を受けた後、上手くプレーできた時にフィードバックがないと選手からすると『???』となってしまいます。
⑤起きた現象だけでなく、「起きなかった現象」にも目を向ける
改善前:
・目に見えるミスやプレーだけにコーチングしていた。
・例えば、カバーリングが成功したときは評価するが、そもそもカバーリングの必要がなかった場合、その選手のポジショニングを評価しないことがあった。
改善後:
・「起きた現象」だけでなく、「起きなかった現象」にも目を向けるようになった。
・例:サイドバックがボールを奪ったことでカバーリングの場面が発生しなかった場合でも、センターバックが適切な準備をしていたら、それを評価するようにした。
・ボールを持っている選手(オン・ザ・ボール)だけでなく、ボールを持っていない選手(オフザボール)の動きや思考にも注目するようになった。
この辺の話は少し難しので別記事で解説しています。
参考:選手が上手くならないサッカーコーチの特徴【現象を捉える基本スキル】
⑥もう一つ重要なポイント
これらのポイントを意識することで、コーチングがより 整理され、効果的に伝わるようになった のが大きな改善点だと思います。
特に、「選手の反応を見る」ことを重視するようになった のが大きいです。
・指導者が発した言葉が選手にどう影響しているか?
・選手のプレーが本当に改善しているか?
・コーチングの結果を常に観察し、必要なら表現を変える
コーチングした時に、選手がどのように変化しているか。
これを深く観察することが大切です。
ここを見落とすと「自分のコーチングが正しかったのかどうかをチェックできなくなります。
また、コーチングの質を改善したい場合、テクニカルな問題以外にも様々な要素があります。 詳しくは電子書籍に書いていますので、興味がある方はご覧ください。
まとめ
最後にまとめておきます。
・現象のすべてを指摘しない(優先順位をつける)
・試合中に改善できないアドバイスをしない(トレーニングで対応する)
・表現を適切にする(言語化と感覚のバランス)
・評価の基準をぶらさない(一貫したコーチング)
・起きた現象だけでなく、起きなかった現象にも目を向ける
適切なコーチングを行うためには、基本的なポイントを押させることだけでなく、「選手の反応を見ること」 が重要です。
自分のコーチングのどこに問題があるか、チェックリスト代わりに使ってみてください!