こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代のサッカー指導では、キックの技術指導がとても重要です。
しかし低学年生の指導において、なかなか思うような成果が出ずに悩んでいる指導者の方も多いのではないでしょうか。
僕自身、指導を始めた頃は低学年生のキック指導にとても苦労しました。
いろんな方法を試してみても、なかなか子どもたちに伝わらず、どうしたらいいのかわからないという経験があります。
同じように、以下のような悩みを持つ指導者の方も多いのではないでしょうか。
・キーファクター(足首を伸ばす、フォロースルーなど)を教えてもうまくいかない
・AIやネットで調べた方法を試しても効果が出ない
・何から始めればいいのかわからず途方に暮れている
この記事では、低学年生のキック指導における基本的な考え方から、具体的な指導方法まで詳しく解説します。
この記事を読めば、キック指導の本質が理解でき、子どもたちの技術が格段に良くなると思いますので、最後までご覧ください。
1. 低学年生や初心者はキックが蹴れないのが前提

①ほとんどの低学年生は蹴れない
まず前提として、これはチームによるかと思いますが、僕の経験上、例えば小学1年生はほとんどの子が蹴れないです。
たまに小学1年生でもバシッと蹴れる子がいたりしますが、10人中10人が蹴れるというケースはあまりないのではないでしょうか。
この前提を理解した上で、どういうふうにアプローチしていくか、僕ら指導者がどうすればいいかを考えていく必要があります。
また、これらは小学校低学年生に限らず、初心者の選手にも言える内容です。
②線形的な思考を捨てる
僕ら指導者がよく間違うのは因果関係、つまり線形的な思考です。
「こういう風に指導すればこうなるはずだ」という、線でつながって線形でつながっているという発想は、まず捨てないといけません。
例えば、インステップキックのトレーニングをたくさんやっているから蹴れるようになるかというと、それは線形的な思考です。
逆に、いろんな体を動かすコーディネーションのようなことをやったから蹴れるようになるという可能性もあります。
この辺は線形的につながっていかないので、キックが飛ばないことをあまり神経質にならずに、身体全体を動かすといった、動き全体のデザインから始めるのがお勧めです。
他にもいろんな動きもたくさん取り入れて神経系を刺激するというのが1番いいのではないかと思います。
いずれにせよ、ある程度長い目を持って、今日明日や1ヵ月とかではなく、1年2年という長いスパンで捉えてあげることが大事かなと思います。
2. 大きなデザインから始める

①ディテールではなくデザインを優先
テクニックにせよ戦術にせよ、基本的な考えは『大きなデザインから始める』ということです。
経験上、ディテールから始めないということが重要です。
そのため、最初から細かなキーファクターを伝えて指導するのではなく、ざっくりと全体から始めます。
キーファクターというのは、そのプレイをうまくプレイするためのコツと考えてもらえればいいです。

例えばインステップキックのキーファクターは、蹴る瞬間に足首を伸ばす、軸足は軽く膝を曲げる、踏み込みはボールの横あたりに置く、蹴った後のフォロースルーなどがあります。
小学1年生くらいだと、足首を伸ばしてないからうまく蹴れないとか、フォロースルーが良くないから飛距離が出ないというレベルではなく、大体全部できないという感じではないでしょうか。
蹴り方がめちゃくちゃで、足の甲とかという話ではない状態だと思います。
そのため、1年生くらいだと、結構全体的にやらないといけないということがあります。
いくらキーファクターを細かく伝えても大体うまくいきません。
特に1年生とかはまだまだ理解ができないので、キーファクターをたくさん並べてもうまくいかないです。
②身体全体を使うダイナミックな動作
全体のデザインとは何かというと、例えば、走りながら前から転がってきたボールをダイナミックな体の動作で蹴る、身体全体を使って蹴るというイメージです。
僕自身、あまり効果がなかったなと思うのが、ボールも選手も止まった状態でインステップに当てようとか、足首を伸ばすというキーファクターを意識してやろうとするディテールから入るパターンです。
これだと大体蹴れないです。
そうではなくて、もっと体をダイナミックに動かす、腕を振って走りながらボールを思いっきり前に蹴るという、体全体を使う動作が慣れてきたら、初めて少しずつディテールに入っていきます。
足首を伸ばすとか、もう少し膝を曲げるみたいな細かなキーファクターに入っていく方が良いです。
僕の場合はいつもそうしています。
前から来るボールなのか浮いたものなのかドリブルしながらなのか何でもいいですが、とにかく大きく走り込んで強く、ボールを蹴る、思いっきり体全体を使ってボールを蹴るというトレーニングを組みます。
③ブラジル体操のような動的ストレッチのような動き
当然すぐにできるわけではありません。1年かかったり2年3年かかったりします。
その中で個別に少しずつキーファクターを落とし込んでいくということをやりますが、いずれにせよ、細かなキーファクターより、その前に、身体全体を使うダイナミックな動きが重要です。
例えば、ブラジル体操みたいな動的ストレッチ。
つま先タッチとか体をひねるような動きですが、ああいう身体全体の動きがそもそもできていないと、細かなキーファクターを指摘しても効果がありません。
キックの動作における身体の全体の動きをデザインしてから、ディテールを詰める、そんなイメージです。
④戦術指導にも応用できる考え方
余談ですが、これは戦術の落とし込みとかもそうです。
ビルドアップ攻撃やポゼッションをやりたいという時に、いきなりディテールから入るのではなく、チーム戦術の場合はチーム全体としてどうするかという、あくまでもチーム全体としてのざっくりしたイメージから入っていって細かいところを突き詰めていくというやり方を僕はよくやります。
3. レバレッジポイントを見つける

「大きなデザインから始める」とは違う視点ですが、レバレッジポイントを探る、というのも有効な手段です。
①レバレッジポイントとは
レバレッジというのは、てこの原理のことです。
簡単に言うと少しの力で大きな力を産むということです。
僕が書いた教材『複雑系としてのサッカー(全8巻)』の中で、レバレッジポイント探すとはどういうことかを詳しく書いています。

僕らが何か指導したときに、それがそのまま効果として現れるかどうかはよくわかりません。
なぜならサッカーのトレーニングにしても指導にしても育成にしても、戦術の落とし込み、テクニックのスキル向上にしても、すべては複雑系であるからです。
そのため、「システム思考というのをうまく活用して指導しないといけません。
まだキャリアが浅い指導者の方には難しく聞こえるかもしれませんが、将来、あの時言ってたのはここだったんだなって思ってもらえれば良いかと思います。
②1点に絞って指導する
レバレッジポイントというシステム思考の考えでいくと、試合中にあれこれコーチングするというのはあまり意味がありません。
僕はいろいろ現場で見ていて、そのコーチングが全く意味がないなということがあります。
なぜかというと、その言葉によってレバレッジがかからないケースが多いからです。
そのコーチングによって大きな変化を引き起こすことができないということです。
指導者がやらなくてはいけない基本的な考えは、テクニックのスキルアップでも戦術でもチーム戦術でもなんでもいいですが、いかにここさえ改善すれば劇的にプレイが変わるかというレバレッジポイントを探すことです。
過去の僕みたいに、あれこれ言いすぎたり、細く指導し過ぎて、どれも結局選手にとって効果的じゃないということがあります。
そうではなくて1点に絞ります。
その1点を改善すればプレイが激変する可能性があるのかというところを探るのが、レバレッジポイントを探るということです。
これは、システム思考の中でもとても重要な概念です。
③ボトルネックを探す
インステップキックが蹴れない、キックが蹴れないと言ったとき、1番ボトルネックになってる部分は何なのか、それをまず観察して、分析しないといけません。
おそらく低学年生や初心者の選手であれば、体全体を使ってボールが蹴れてないというところが1番のボトルネックだろうなと僕は思います。
そのため足首を伸ばすこととか、フォロースルーを取るということよりも、身体全体を使うというところが1番ボトルネックになっているので、そこをまず解消しに行きます。
これは最初に述べた「大きなデザインから始める」ことにもつながりますね。
それができた後に、次にボトルネックになってる部分は何かを探していかないといけません。
その1点だけに集中するということが、すごく大事です。
④よくあるミス『蹴った足が地面につく』問題
ここまで理論的な解説をしたきましたが、現場でよくあるテクニカルな話も。
低学年生や初心者の選手の中で特にキックが蹴れない選手の特徴は、「蹴った瞬間に蹴り足が地面につく」ことが多いと思います。
皆さんの指導現場でも観察してほしいのですが、僕の経験上、このパターンはかなり多いです。
蹴り足がすぐに地面につくということは、フォロースルーが取れていないし、何より軸足が安定していません。
そのため、先ほどのレバレッジポイントという観点から行くと「蹴った後に足を上げる」とか「蹴り足をすぐに地面につけない」という部分にレバレッジがかかる可能性があります。
というか、僕の場合はそのように指導することが多いです。
そうすると身体全体のバランスも良くなるので、その後に細かなキーファクターを伝えながら改善する、という方法よくやります。
⑤人間が扱える変数は2〜3個
繰り返しますが、手の振りが良くないとか、蹴る前の動作が良くないとか、踏み込む角度が悪いとか細かなキーファクターがたくさんありますが、大枠のデザインを捉えながら1番レバレッジがかかるポイントだけを指導するというやり方を僕はやっています。
このメリットは何かというと、人間が一度に追える変数は2〜3程度ということに絡んできます。
複雑系の教材に詳しく書いていますが、人間が1度に扱える変数というのは2から3です。
小学生に限らず我々大人でも同じですが、試合中にこういうところを意識しなさいとか、こういうところを見るようにしなさいという時に、それが1つの変数として、それを同時に行えるのは多くて2から3個しかありません。
つまりキックのフォームに対しても、キーファクターを4つも5つも言うともう変数を追えません。
そうなると選手にとっては頭がパンクする状態になり、何も頭に入ってないということになります。
そのため、キックがうまく蹴れないからといって、キックのキーファクターを10個くらい並べても全く効果はありません。
せめて、多くても2〜3つ位にしないといけません。
これは戦術しどうなども同じです。
そのため僕は、常に1つだけ、多くても2つ、ここだけ意識してという感じで指導します。
そうすると、選手にとっても意識すべきポイントがすごくわかりやすく、意識すべき部分が明確になります。
まとめ
最後にまとめておきます。
・小学1年生はほとんどの子がキックを蹴れないのが前提
・線形的な思考(こう指導すればこうなる)を捨て、長期的な視点を持つ
・キーファクター(足首を伸ばすなど)よりも、大きなデザイン(体全体を使う動作)から始める
・レバレッジポイント(ここを改善すれば劇的に変わるポイント)を見つけて1点に絞る
・人間が扱える変数は2〜3個なので、キーファクターを並べすぎない
この記事では低学年生や初心者の選手におけるキックの指導について解説しました。
皆さんの指導現場でも試してみてください!

