こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代のサッカー指導では、試合環境のオーガナイズがとても重要です。
日本では8人制サッカーが採用されて10年以上が経ちますが、現場で試合を観ていると、さまざまな課題が見えてきます。
・子どもたちがロングボール主体のサッカーになってしまう
・技術があるのに、プレッシャーが速すぎて活かせない
・リスクを取れず、創造的なプレーが生まれにくい
僕自身、先日U-12の全日予選に帯同して、改めてこの問題について考える機会がありました。
自分のチームだけでなく、他のチームの試合も観察する中で、環境設定の重要性を再認識しました。
この記事では、8人制サッカーの現状と課題、そして指導者として現場でできる工夫について解説します。
海外の事例も交えながら、子どもたちがサッカーの本質を学べる環境づくりについて考えていきます。
この記事を読めば、限られた環境の中でも工夫次第で育成の質を高められるヒントが得られると思いますので、最後までご覧ください。
1. ジュニア年代の8人制サッカーで起きていること

①現場で見えた課題
先日、U-12の全日予選に帯同した際、改めて現場の状況を観察しました。
予選レベルでは多くの試合が土のグラウンドで行われており、この環境が子どもたちのプレーに大きく影響していることに気づきました。
土のグラウンドでは、少しのキックミスやトラップミスが即座に失点につながるリスクがあります。
特に雨が降った後などは、ボールのイレギュラーが頻繁に起こります。
このような環境では、子どもたちがリスクを取りづらくなり、安全第一のプレー選択になってしまうのは自然なことです。
その結果、意図を持った攻撃や創造的なプレーよりも、リスク回避のためのロングボールが多くなります。
これは子どもたちや指導者の問題ではなく、環境とルール設定がそうさせているという側面が大きいと感じています。
②スペースとプレッシャーの問題
8人制サッカーでは、例えばフォーメーションを3-3-1にした場合、これによってピッチ上のスペースがきれいに埋まってしまいます。
さらに現在のルールではハーフラインがオフサイドラインになっているため、ハーフコート内に15人の選手が密集する状況が生まれます。
このような状況では、相当な技術レベルがない限り、ボールを保持しながら次のプレーを探すことが困難になります。
プレッシャーが速く、スペースが限られているため、どうしても縦に急ぐサッカーになりやすいです。
本来、サッカーではテクニックも大切ですが、先を読む動きや空いたスペースを使う判断力も同じくらい重要です。
しかし、現在の環境ではテクニックの問題に偏りがちになり、サッカーの本質的な部分を学ぶ機会が減っているように感じます。
③試合時間と選手起用の課題
現在の40分ゲーム(20分ハーフ)では、体力のあるチームが最初から最後までハイプレスを維持できてしまいます。
これにより、試合を通じた流れの変化が生まれにくく、一方的な展開になることが多いです。
また、全国大会でも1分も出場できない選手がいるという問題があります。
これはルール設定の問題であり、もし全員出場を義務付けるようなルールがあれば、自然と解決される問題だと考えています。
2. 海外の事例から学べること

①バルセロナのジュニア年代の工夫
僕がバルセロナに留学していた時、ジュニア年代では7人制を採用していました。
さらに重要なのは、オフサイドラインがペナルティエリア付近まで下げられていたことです。
この設定により、フォワードの選手が高い位置を取ることができ、ディフェンスラインも自然と下がるため、プレッシャーが緩和されます。
7人制だと8人制と比べてピッチ上にスペースが生まれやすくなります。
このような環境設定の違いは、子どもたちがサッカーの本質を学ぶ上で大きな影響を与えます。
スペースを認識し、それを活かす動きを自然と学べる環境が整っているのです。
②育成のための環境設計という視点
海外の事例を見ると、「子どもたちにどのようなサッカーを学ばせたいか」という明確な意図に基づいて、ルールや環境が設計されています。
人数、ピッチサイズ、オフサイドルール、これらすべてが育成目的に沿って調整されています。
8と7では数字が1つ違うだけですが、サッカーの構造やダイナミクスは大きく変わります。
このような細かい配慮が、長期的な育成の質を左右すると考えています。
3. 指導者として現場でできること

①ローカルルールでの工夫
全国規模のルールをすぐに変えることは難しいですが、練習試合やカップ戦など、自分たちでコントロールできる機会は多くあります。
例えば、練習試合でオフサイドラインを変更してみたり、試合時間を60分の3ピリオド制にして全員出場を義務付けるなど、さまざまな実験ができます。
このような工夫を通じて、子どもたちにどのような変化が生まれるかを観察することができます。
②試合環境の選択と優先順位
土のグラウンドではなく、できるだけ人工芝や天然芝のグラウンドで試合をする機会を増やすことも重要です。
グラウンドの質が変わるだけで、子どもたちが取れるリスクの幅が広がり、プレーの選択肢が増えます。
もちろん、すべての試合で理想的な環境を用意することは難しいですが、育成を最優先に考えるなら、環境の質にもこだわる価値があると思います。
③時代の変化に対応した指導者の在り方
大きな組織は変化のスピードが遅いという特性があります。
しかし、現場レベルでは柔軟に対応できることも多いです。
インターネット、SNS、AIといった技術の発展により、時代の変化スピードは加速しています。
その中で、指導者として大切なのは、現場で起きていることを観察し、子どもたちにとって最善の環境を考え続けることです。
既存のシステムに依存するだけでなく、現場から新しい価値を生み出していくことが、これからの時代には必要だと考えています。
④技術と戦術のバランス
現場では「やはり技術が大事」「いや戦術も必要」というジレンマを感じることがあると思います。
僕自身も長くこの問題と向き合ってきました。
しかし、本来はどちらか一方ではなく、両方が必要です。
そして、それを学べる環境を整えることが指導者の役割だと考えています。
技術があってもプレッシャーが速すぎて活かせない環境であれば、環境設定を見直す必要があります。
戦術、クリエイティブな発想、インテリジェンスのあるプレー、これらはサッカーの醍醐味の一部です。
子どもたちがこれらを楽しみながら学べる環境を、現場レベルで工夫していくことが大切だと思います。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
・8人制サッカーの現場では、スペース不足とプレッシャーの速さから、リスク回避のサッカーになりやすい
・海外では7人制やオフサイドルールの工夫により、育成目的に合わせた環境設計がなされている
・指導者は練習試合やカップ戦でローカルルールを導入し、さまざまな実験ができる
・グラウンドの質にこだわることで、子どもたちのプレー選択肢が広がる
・大きな組織の変化を待つだけでなく、現場レベルで柔軟に対応することが重要
・技術と戦術のバランスを考え、サッカーの本質を学べる環境を整えることが指導者の役割
この記事では、ジュニア年代の8人制サッカーの現状と、指導者として現場でできる工夫について解説しました。
すべての環境を理想的にすることは難しいですが、練習試合やカップ戦など、自分たちでコントロールできる部分から始めることができます。
皆さんの指導現場でも、子どもたちがサッカーの本質を学べる環境づくりを試してみてください。