この記事は、レベル別トレーニング指導ガイドの【上級者向け】です。 トレーニング理論を実践できる指導者が、長期的な計画策定や体系的なトレーニング設計など、より高度で組織的なトレーニング運営を実現するための方法を詳しく解説しています。
こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代のサッカー指導では、個々の練習技術に加えて、長期的で体系的なトレーニング計画がとても重要です。
しかし、「長期計画をどう立てればいいか分からない」「MTMとプレーモデルの関係が理解できない」と悩む指導者の方も多いのではないでしょうか。
僕自身、個別の練習は効果的にできるようになっても、それを体系的に組み立てて長期的な成長につなげることの難しさを長い間感じていました。
目の前の練習と理想的なチーム像をどう結びつけるかという課題に取り組み続けてきました。
・長期的なトレーニング計画の立て方が分からない
・MTMとプレーモデルの関係と活用方法が分からない
・チーム全体の体系的な成長戦略が描けない
この記事では、効果的なトレーニング計画の立て方から、MTMとプレーモデルの実践的活用、高度なトレーニング設計まで詳しく解説します。
この記事を読めば、組織的で体系的なトレーニング運営を実現できるようになり、チーム全体の長期的な成長を効果的に促せるようになると思いますので、最後までご覧ください。
1. 効果的なトレーニング計画を構築する

①長期計画の基本的な考え方
効果的なトレーニングには、長期的な視点での計画が不可欠です。
計画策定の3つの時間軸
年間計画
・シーズン全体を通した目標設定
・期間別のテーマと重点項目
・大会や試合スケジュールとの連動
・選手の発達段階を考慮した設計
月間計画
・年間計画を具体的な月別目標に分解
・技術・戦術・フィジカル・メンタルのバランス
・月ごとの達成目標の明確化
・柔軟な調整の余地を残す
週間計画
・月間目標を週単位の具体的活動に落とし込み
・試合と練習のバランス調整
・選手の疲労度管理
・継続的な評価と修正
この3つの時間軸を連動させることで、体系的なトレーニングが可能になります。
②期間別の重点項目設定
シーズンを通して、期間別に重点項目を設定することが重要です。
準備期(シーズン前)
・基礎体力の向上
・基本技術の確認と向上
・チーム戦術の基礎固め
・新メンバーの統合
試合期(シーズン中)
・実戦での戦術実行
・コンディション維持
・チーム戦術の洗練
・個人技術の継続向上
移行期(シーズン後)
・心身のリフレッシュ
・楽しさを重視した活動
・多様な運動経験
・次シーズンへの準備
調整期(大会前)
・コンディション調整
・戦術の最終確認
・メンタル面の準備
・ケガの予防
各期間の特性を理解した計画で、効果的な年間運営ができます。
しかし、日本の育成年代の場合は、公式戦などが細切れだったりするので、全体のレギュレーションを把握しておくことが重要ですね。

③個別化と全体最適化のバランス
チーム全体の向上と個人の成長のバランスを取ることが重要です。
全体最適化の視点
・チーム戦術の統一
・全体的なレベル向上
・組織としての連携
個別化の視点
・選手個人の特性考慮
・個別の課題解決
・成長速度の違いへの対応
・モチベーション維持
バランスの取り方
・全体練習と個別指導の組み合わせ
・レベル別グループでの活動
・個人目標とチーム目標の連動
・柔軟な練習メニューの調整
このバランスにより、チーム全体と個人の両方の成長を実現できます。
2. MTMとプレーモデルの実践的活用

①MTM(マッチ・トレーニング・マッチ)の理解
MTMは、試合から課題を見つけ、練習で改善し、次の試合で確認するサイクルです。
MTMサイクルの基本
・試合での課題発見
・練習での課題解決
・次の試合での効果確認
・継続的な改善スパイラル
効果的なMTM運用のポイント
・具体的で測定可能な課題設定
・練習と試合の明確なリンク
・短期間での効果確認
・選手との課題共有
MTMの注意点
・全ての課題を一度に解決しようとしない
・長期的な視点を忘れない
・選手の成長段階を考慮する
適切なMTM運用で、効率的なチーム改善が可能です。
②プレーモデルの構築と実践
プレーモデルは、チームの理想的なサッカースタイルを明確にしたものです。
以下ざっくりと説明します。
プレーモデル構築のステップ
ステップ1:理念の明確化
・どんなサッカーを目指すのか
・チームの価値観は何か
・選手に身につけさせたい要素
・長期的なビジョンの設定
ステップ2:具体的なプレー原則の設定
・攻撃時の基本原則
・守備時の基本原則
・切り替え時の対応
・セットプレーの戦術
ステップ3:段階的な実装
・簡単な原則から始める
・徐々に複雑な要素を追加
・選手の理解度に応じた調整
・継続的な改善と修正
ステップ4:評価と改善
・プレーモデルの実行度評価
・課題の特定と改善策
・長期的な発展と進化
・チーム文化としての定着
プレーモデルにより、チーム全体に一貫性のある方向性を与えられます。
③MTMとプレーモデルの関係
MTMという考えとプレーモデルがどのような関係にあるかは下記の記事で詳しく解説しています。

3. 高度なトレーニング計画

①練習テーマの体系的設定
上級レベルでは、練習テーマを体系的に設定する技術が重要です。
テーマ設定の構造化
レベル1:目的(Why)
・なぜその練習をするのか
・チーム全体の中での位置づけ
・長期目標との関連性
・選手の成長への影響
レベル2:原則(What)
・何を身につけさせるのか
・具体的な技術・戦術要素
・行動様式や判断基準
・チーム戦術との関連
レベル3:アクション(How)
・どのような動きや技術か
・具体的な実行方法
・成功の基準
・評価の指標
この3層構造により、深みのあるテーマ設定ができます。

②高度なオーガナイズデザイン
練習のデザイン(オーガナイズ)においても、高度な技術が求められます。
多層的な学習設計
・複数の学習要素の同時進行
・相互に関連する練習メニューの連携
・段階的な複雑化の設計
・選手の理解度に応じた調整機能
環境的制約の活用
・空間的制約(コートサイズ、ゾーン設定
・時間的制約(制限時間、ローテーション)
・数的制約(人数差、タッチ制限)
・ルール的制約(特別ルール、条件設定)
自己組織化の促進
・選手の自発的学習の誘導
・最小限の介入で最大の効果
・創発的な問題解決の促進
・指導者は環境設計に専念
高度なオーガナイズにより、効率的で深い学習が可能になります。
4. まとめ
この記事では、計画的で体系的なトレーニングについて解説しました。
・長期的視点でのトレーニング計画を構築し効果的な年間運営を実現する
・MTMとプレーモデルを統合して理想と現実を結ぶ指導を行う
・高度なトレーニング設計技術で深みのある学習環境を創造する
・特殊状況への対応と継続的成長でより高いレベルの指導を実現する
学習のポイント
このレベルで重要なのは、以下の3つのポイントです。
計画的で体系的なトレーニング
・長期計画:3つの時間軸での体系的な計画策定
・MTM統合:短期改善と長期ビジョンの効果的な結合
・高度設計:多層的学習と自己組織化を促進する環境創造
5. 理解度チェック
以下の質問に答えられるか確認してみましょう。
・年間・月間・週間の3つの時間軸での計画策定ができますか?
・MTMとプレーモデルを統合した指導ができますか?
・練習テーマを目的・原則・アクションの3層で設定できますか?
・多様な個別ニーズに対応する指導技術を持っていますか?
すべて答えられれば、トレーニング指導の上級レベルに到達しています。(たぶん…)
計画的で体系的なトレーニングは、指導者としての集大成です。
長期的な視点を持って、チーム全体の持続的な成長を目指してください!
学習ステップ
推奨学習順序
・超初級レベル:基本概念の理解
・初級レベル:基本的なトレーニング技術の習得
・中級レベル:トレーニング理論の実践
・上級レベル:計画的で体系的なトレーニング(←今ここ)
このレベルまで到達したら、さらに専門性を深めるために、特定の分野(フィジカルコーチング、メンタルトレーニング、データ分析など)の専門的な学習に進むことをおすすめします。
また、指導者としての社会的責任や地域貢献、後進育成についても考えを深めていきましょう。
継続的な成長のために
次に取り組むべき分野
・専門分野の深化学習(フィジカル、メンタル、データ分析等)
・指導者ライセンスの上位資格取得
・新たな理論の習得と実践
・後進指導者の育成と知識の継承
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📙 [ジュニアサッカー【中級者】指導者向け:トレーニングの実践ガイド]
トレーニング理論の実践をもう一度確認したい方はこちら。
📙 [ジュニアサッカー【初級者】指導者向け:トレーニングの基礎実践ガイド]
基本的なトレーニング技術をもう一度確認したい方はこちら。
📗 [ジュニアサッカー【超初級者】指導者向け:トレーニングの基礎理解ガイド]
トレーニングの基本概念をもう一度確認したい方はこちら。