こんにちは、講師のカズです。
ジュニア・ジュニアユース年代のサッカー指導では、8人制と11人制の違いについて悩む指導者の方も多いかと思います。
しかし、11人制サッカーよりも8人制の方が戦術的に難しいと感じるのは、本質的な理解の不足からきているかもしれません。
先日、僕のX(旧Twitter)で以下のようなポストをしました。
先日『8人制の指導は難しいですね』と言われた時に違和感が。
— ジュニアサッカー大学 (@jrsoccerdaigaku) February 25, 2025
基本的に、年代毎のマネジメントや選手のレベルによって指導が難しくなることはあっても、『戦術』が難しくなることはない。
当然、8人制より11人制の方が難しい。
11人制の戦術は分かるが8人制は..という現象は、多分ないはず。
先日『8人制の指導は難しいですね』と言われた時に違和感が。
基本的に、年代毎のマネジメントや選手のレベルによって指導が難しくなることはあっても、『戦術』が難しくなることはない。
当然、8人制より11人制の方が難しい。
11人制の戦術は分かるが8人制は..という現象は、多分ないはず。
この意見に対して、「11人制だと人数が多い分、一人ひとりのタスクが分担され子供たちの負担も減り、指導も少し楽になるということはないですか?」という質問が寄せられました。
そこでこの記事では、人数が増えるとはどういうことか、複雑性とタスクの関係などについて解説します。
1.8人制と11人制の戦術的な違い

①人数が増えると戦術的な負担はどうなるか?
僕の認識ではサッカーは「複雑系」のスポーツです。
人数が増えるほど選手の認知・判断・意思決定の負担は大きくなります。
例えば、1対1のトレーニングでは選択肢がシンプルですが、2対2になるとコンビネーションやカバーリングといった要素が加わります。
これは足し算的な拡張ではなく、二乗的な拡張と表現できるかもしれません。
つまり、1対1と2対2では、認知・判断・意思決定などの要素が単純に倍になるのではなく、かなりの量増えます。
この理論を広げると、以下のようになります。
・4対4よりも、8対8の方が、要素が増す。
・11対11になると、さらに選択肢が増え、より高度な戦術理解が求められる。
つまり、人数が増えれば増えるほど複雑性が増すことで認知・判断・意思決定の要素は増えます。(難易度が上がる)
反対に人数が減るほど、シンプルになっていきます。
②タスクはどうなるか?
人数が増えると、個人のタスクが増えるかどうかはプレイモデルによります。
ただ僕の場合は複雑性が増す中で、 認知や選択肢意思決定の負担が増すことにより、タスクが増える感覚に選手はなると思います。
③違いは選手の理解度
11人制(中学生・高校生)よりも8人制(小学生)の方が難しいと感じるのは選手の理解度の問題が挙げられます。
小学生と中学生では選手たちの戦術的な理解度が違うため、年代が下がるほど、「わかりやすく、かつ単純化して伝える」必要があります。
他にも、選手のマネジメントやコーチングの違い(難しさ)もあります。
しかし、戦術的な要素というものは人数が減る方が複雑性が下がります。 といった点では11人制の方が複雑性が増すので、指導の面でも難しくなります。
2.なぜ11人制の戦術指導ができるのに8人制が難しく感じるのか

①パターンで理解しているケース
「11人制なら戦術が理解できるのに、8人制だと難しく感じる」、指導する上でも同じように感じてしまう現象があります。これは、指導者が戦術を「パターン」で覚えてしまっているからかもしれません。
例えば、
4-4-2のフォーメーションで、相手が2トップの場合、ボランチが降りて数的優位を作る。
このようにフォーメーションの定型パターンとして覚えていると、8人制になった際に「この形がないから指導できない」と感じてしまいます。
しかし、本質的な戦術の考え方(スペースの作り方や数的優位の活用)は、どの人数でも変わりません。
②その他のケース
試合やチーム全体を俯瞰して、構造的に捉えきれていないケースもあるかと思います。
人数が減るほどサブフェーズを簡略化する必要があります。
また、プレーモデルと原理原則の違いが自分の中で明確になっていないと、11人制と8人制のフラクタルな関係が見えてこないという可能性もあります。
3.指導の本質と普遍的な戦術の理解

「8人制用の戦術」「11人制用の戦術」という視点で考えると、これは何を意味しているでしょうか?
おそらくこのケースでは「プレーモデル」の話です。
しかしプレーモデルもまた、人数の増減によって変わるものではありません。
要素が増えたり減ったりするだけです。
特に育成年代で重要なのは、プレーモデルよりも普遍的な戦術を理解することです。
また、指導者として必要なのはトレーニングと試合が明確にリンクしていることです。
・どんな人数でも共通する戦術の原理原則(数的優位、ポジショニング、スペースの活用)を理解すること。
・対2のロンドや6対6のミニゲームが、どのように大人数の試合とリンクするかを考えること。
実際、僕は小学生と中学生の両方を指導しますが、トレーニング内容はほぼ変わりません。
ほぼ変わらないというと語弊がありますが、原理原則的には変わらないという意味です。
変わるとすれば以下の部分です。
・スキルのレベルによる要求度の違い
・その年代特有で起きやすい現象へのフォーカス
・戦術の難易度の調整
つまり、戦術の本質的な部分は年代やレベルに関係なく共通しているので、年代によって変えるのは要求度や学習段階を考慮した難易度です。
4.まとめ
・8人制より11人制の方が戦術的な複雑性は高い。
・人数が増えるほど認知や意思決定の負担が増す。
・戦術をパターンではなく、原理原則で理解することが重要。
・8人制用・11人制用と分けず、共通する戦術理解を持つべき。
以上、この記事では8人制と11人制における複雑性の違いについて解説しました。
戦術理解の本質を深めることで、どんな人数でも柔軟に指導できるようになりますので参考にしてみてください!