こんにちは、講師のカズです。
サッカーコーチにとって重要な要素の一つに「トレーニング計画」というものがあります。
基本的に日々の練習計画やメニューを考える時にはM-T-M。
M-T-Mとはマッチ・トレーニング・マッチの略で、要するに「試合をして課題を抽出→それを練習する→試合で成果を確かめる」というプロセスです。
その際に重要になるのがゲーム分析。
子どものサッカーで分析なんかいるの?と思われるかもしれませんが、サッカーコーチにとっては必須スキルです。
・練習メニューをどう組んでいいか分からない
・分析ってなんか難しそう
・分析の方法を知りたい
という方は、ぜひこの記事を参考にして指導現場で活かしてみてください!
ゲーム分析ができるようになるとサッカーの理解が深まるだけでなく、効果的な練習メニューを考えられるようになります。
ではさっそく解説します。
1.ゲーム分析とは
ゲーム分析とは読んで字の如く、試合を分析することです。
サッカーコーチ初心者の方には難しく感じるかもしれませんが、後に手順を示すので大丈夫です。
①ゲーム分析の目的は3つ
1.自分たちのチームを分析する
2.対戦相手を分析する
3.プロの試合を分析する
1つずつ解説します。
1.自分たちのチームを分析する
これは一番最初にしなくてはいけないことです。
試合を動画に録画して、後にそれを分析する。
なぜ録画するかというと、試合中にはコーチが見えていないものがたくさんあるからです。
例えば、試合中には「なんかここが上手くいかないな」と感じていたとしても、後に動画で振り返ると、当時感じた印象とは全く違うこともあるからです。
また、気になるプレーの前後のシーンを繰り返して観ることで、問題の原因を突き止める精度が高まります。
さらに自分たちの試合を分析することで、次回からの練習メニューを考えるだけでなく、選手へ適切なアドバイスを行うこともできます。
2.対戦チームを分析する
これには2つ方法があります。
・自分たちとの試合
・他のチームとの試合
自分たちとの試合では、勝敗の原因やどこに問題があったかなどが分析できます。
また他チームとの試合を分析すると、自チームと対戦する時の予測や対策を考えることができます。
これもまた、練習メニューに反映させることができますね。
3.プロの試合を分析する
最近僕はやっていませんが、過去にはけっこう分析をしていました。
これは単純に自分の分析スキルを高めるトレーニングになりますし、プロの試合を分析することで、戦術のトレンドや自チームに参考になる部分がないかなど考えることもできます。
②最初は精度が低くてもよい
『分析』と聞くとなんか難しそう、と感じる人が多いと思いますが、誰でも最初からはすぐにできません。
とりあえずやってみる、という感じでスタートして大丈夫です。
僕もいろいろ分析しますが、それが正解かどうかではなく、繰り返すことで様々な視点が持てるようになるのでコーチとしてトレーニングになります。
③いきなり生の試合を分析するのはやめる
ゲーム分析には、録画した試合を見ながら行う方法と、実際のピッチで生の試合を見ながら行う方法がありますが、最初は録画したものから始めましょう。
理由は簡単です。
生の試合では気になった点を繰り返し見ることや、プレーを止めることができないからです。
その点、動画は何回でも見直すことができるので分析の精度が高まります。
生の試合を見ながらメモを取るのは、正直初心者の方には難しいです。
試合がどんどん流れていくのでフォーカスすべき点が分からず、慣れないうちはフォーメーションを確認するだけで2、3分試合が経過してしまいます。
これから分析スキルを身につけたいという方は、まずは動画を使ったゲーム分析から始めるのをお勧めします。
2.ゲーム分析の具体的な方法
①フレームワークを決める
ゲーム分析で大事な点は、起きている現象を整理することです。
最初に問題点をピックアップする時はランダムに行ってもいいのですが、後に必ず整理することが大切です。
たくさん出てきた問題点をわかりやすく整理するためのフレームワークは別記事で解説している「サッカーの基本構造【4つの局面と11のサブフェーズ】」を参照して下さい。
起きている現象をこの中のサブフェーズの部分に分類します。
例えば、起きている問題がビルドアップの始まりにおける部分なのか、それとも前進とボール保持の部分なのかといったように、どのフェーズで起きているのかを分類しましょう。
②繰り返し起きているのかを観察する
次に、起きている現象がたまたまなのか、それとも繰り返し起きているのかを観察します。
繰り返し起きているということはそこに大きな問題があるかもしれません。
例えば、自チームのミスが同じフェーズで繰り返し同じようなミスが発生しているなら、そこに大きな原因があると考えることができます。
③大きな問題かそれとも小さな問題かを考える
ゲーム分析をすると様々なミスや問題が出てきますが、それらを全て同等に扱うことはできません。
なぜなら全てを一度に改善することはできないからです。
そのため、ミスや問題点に対して「早急に改善しないといけないもの」と「中・長期で考えればいいもの」に分類します。
これによって次回の練習からすぐにでも取り組むのか、それとも時間をかけて取り組むのかが決まります。
④プレーモデル・プレー原則を探る
これは相手チームの分析やプロの試合を分析する時に必要となるものです。
まずは、先ほどのフレームワークにおけるサブフェーズの中で「繰り返し発生している現象」を探します。
これはとても重要な考えなので、しっかりと理解して下さい。
繰り返し発生している現象というものは『再現性がある』ということです。
『再現性がある』ということは、それは『意図的に行われている可能性が高い』ということ。
つまり、繰り返し発生しているプレーは選手が意図的に行っている可能性が高い。
意図的にということは、そのプレーは「日々のトレーニングで繰り返し練習されている部分」や「タスクとして設定されている」可能性が高いということです。
これによって、どんなプレー原則が設定されているのかを読み解くことができます。
ただし、これはあくまでも予想であって正解ではありません。チームのプレー原則はそのチームの監督と選手だけが知っているので、あくまでも予想の域を出ません。
以上、ゲーム分析の方法を簡単に解説しました。
3.僕が実際に行っている手順
では次に僕が実際に行っている手順について解説します。
流れとしては以下の順番です。
①気になったプレーを切り取る
②各動画にわかりやすいタイトルをつける
③パワポでまとめる
④これらをひたすらストックしていく
①気になったプレーを切り取る
最初は動画を見ながら気になった部分を切り取っていきます。
動画ソフトは何でもいいですが、僕はスペイン留学中から使っている「LONGO MATCH(ロンゴマッチ)」というソフトを使っています。
こんな感じのインターフェースで、右上で流れている映像を見ながら下にあるカードのようなものをクリックすると、その前後数秒の動画が切り取られます。
このカードは僕なりにさっきのサブフェーズごとに作成。
他にもプレーモデル、テクニックアクションなどのカードも作ってます。
ちなみに使用しているPCはMacBook Pro(13インチ)です。
Macの場合、iMovieなど無料ソフトが入っているのでそちらを使ってもいいですね。
2,3年で買い換えていますが、その度に「気合いを入れて仕事しよう!」という前向きな気持ちになりますね。
昔からMacユーザーなのでWindows系はよく分かりません。
②各動画にわかりやすいタイトルをつける
気になった動画を書き出す時に、起きている現象を踏まえて分かりやすいタイトルをつけます。
ここでもさっきのサブフェーズを名前の一部に入れて、気になった現象を記入しています。
③パワポでまとめる
最後はそれらをパワーポイントにまとめて完成です。
必要なら図を入れて文字を書き足してキレイにまとめましょう。
④これらをひたすらストックしていく
あとはそれを外付けHDDにひたすらストックしていく。
以上、僕が実際に行っている手順になります。
⑤他の分析方法
さっきのサブフェーズごとにまとめていく方法以外にも、特定のプレーだけを切り取っていく方法もあります。
例えばひたすらデスマルケだけとか、カバーリングだけとか。
自分の目的に合った形で分析しましょう。
あと、僕が実際に買って読んだ中では下記の書籍は参考になりました。
第2章のところに「ゲーム分析」について書かれています。
4.まとめ
最後にまとめです。
■ゲーム分析の目的は3つ
1.自分たちのチームを分析する
2.対戦相手を分析する
3.プロの試合を分析する
○最初は精度が低くてもよい
○いきなり生の試合を分析するのはやめる
■ゲーム分析の具体的な方法
1.フレームワークを決める
2.繰り返し起きているのかを観察する
3.大きな問題かそれとも小さな問題かを考える
4.プレーモデル・プレー原則を探る
■手順
1.気になったプレーを切り取る
2.各動画にわかりやすいタイトルをつける
3.パワポでまとめる
4.これらをひたすらストックしていく
以上、今回はジュニア年代のコーチにとっても必須スキルであるゲーム分析について解説しました。
まずは試してみて、少しずつ経験値を上げましょう!