こんにちは、講師のカズです。
少年サッカーにおいてフォーメーションを考える際、いろんな事を考えて決定します。
子どもたちの能力や個性、自分たちがやりたいサッカーや対戦相手のことなど。
しかしいざ試合を行ってみると、最初のイメージとは違い上手くいかないなと感じることも。
そうするとフォーメーションを変えようかなと考えてしまうのですが、実はそこに問題があります。
この記事では、フォーメーションの種類によって選手が学ぶべき戦術が変わるということについて解説します。
チームで起きている問題はフォーメーションではなく、何を選手に学ばせるべきかが理解できていないことかもしれません。
本質的な話ですがそれが分かると何を指導してトレーニングするべきかが見えてきます。
では、解説します。
1.フォーメーションを考える際に大切なこと
サッカーにおいてフォーメーションの決定はとても重要なものです。
しかし育成年代において本質的に重要なのは、それぞれのフォーメーションによって選手が学ぶべき戦術が変わるということ。
フォーメーションにはそれ自体が構造上持っている特性があります。 (8人制でも同じ)
✅メリット:選手がそこまで意識しなくても構造上もたらされる部分
✅デメリット:選手が意識的に学ばなくては解決できないもの デメリットの改善は指導者がどんなアイデアを持ち選手に落とし込めているかで変わる。
ではそれぞれのォーメーションが構造上持っている特性やメリット・デメリットとは何でしょうか。
①フォーメーションが構造上持っている特性
8人制サッカーでもいろんなフォーメーションがありますが、それぞれの特性は違います。
特性とはそのフォーメーションがもともと持っている特徴です。
攻撃で流動性が出しやすいのか、それとも守備の時にブロックが安定しやすいのかなどメリットとデメリットがあります。
それぞれ一長一短があり、これが一番良いフォーメーションであるというものはありません。
もちろんチームが目指すサッカースタイルを表現する上で相性の良いフォーメーションはあります。
しかし本質的には、このフォーメーションだから攻撃的、このフォーメーションだから守備的とはならず、どのフォーメーションでもゲームモデルや選手に与えるタスクによってスタイルは変化します。
②メリット・デメリット 3-3-1の例
3-3-1を例に見てみましょう。
以下はこのフォーメーションが構造上持っている特性です。
メリット
・DFライン、中盤の守備ブロックが作りやすい
・バランスが良いため守備のポジショニングがわかりやすい
・カウンターが仕掛けやすい
etc.
デメリット
・斜めのパスコースが作りにくい
・攻撃と守備の役割が分割される可能性がある
・ポジションチェンジなどの流動制が出しにくい
etc.
他にもありますが、ざっとこんな感じです。
細かく言えば各ポジションごとの特性もありますね。
メリットは3-3-1というフォーメーションが構造上そもそも持っているものです。
つまり、メリットから考えるとそもそも守備ブロックは形成しやすいので、選手がそこを学ぶのにあまり時間はかかりません。
反対にデメリットから考えると、いかに斜めのパスコースを作るかという事を指導者がチームに落とし込めるか。
かつ選手が新たに意識して学ばなければいけない部分になります。
攻撃のオプションを構築して行く時にネックになりますね。
③選手が学ぶべき戦術の例
では例として3-3-1のフォーメーションで選手が学ぶべきものとは何でしょうか。
構造上学びやすく時間があまりかからないものと、構造上それがネックになって時間をかけて学ぶ必要がある戦術は以下の通りです。
構造上学びやすいもの
・カウンター攻撃
・カバーリング
・スライド
etc.
フォーメーションの配置が中盤とDFラインは3枚フラットなので、カバーリングやスライドをきちんと習得することがポイントです。
ただ学びやすいと言っても、選手が勝手にできるようになるのではなく、きちんとトレーニングする必要はあります。
反対に言うと、学びやすい部分をしっかりと押さえておく事で、このフォーメーション自体が持っている特性がより強固になりますね。
構造上学びにくいもの
・ビルドアップ攻撃
・スペースを作る動き・使う動き
・前進のためのサポート
etc.
3-3-1の場合、斜めのパスコースがスタートポジションとして設定されていません。
そのためボールを動かすビルドアップ攻撃を行うには、変則型のフォーメーションでビルドアップするのか、それとも別のコンセプトを与えて成立させるのかがポイントになります。
このフォーメーションの中でいかにスペースを作る・使う動きで攻撃に流動性を出すか。そのような問題解決はコーチの手腕に大きく依存します。
>>参考:8人制サッカー【3DFから変則型ビルドアップ】具体例と特徴
2.どんな戦術をトレーニング・習得させるか
フォーメーションが構造上持つ特性が分かったところで、次に何をトレーニングして選手たちに習得させるかです。
①最初に押さえるのは学びやすいもの
最初に押さえておくべき戦術は、構造上学びやすいものかと思います。
そのフォーメーションを採用した時に、それがそもそも持っている特性をしっかりと理解し学びやすい戦術を落とし込む。
それによってそのフォーメーションを採用しているメリットが最大限に活かせます。
先の3-3-1の例で言うと、スライドやカバーリングのトレーニングを行うことでそもそものメリットが安定しますね。
またカウンターに関連する攻撃のコンセプトを習得することで、攻守にわたってフォーメーションのメリットを活かした形ができます。
②学びにくいオプションを足せるか
では3-3-1でカウンターだけでなくビルドアップ攻撃も行いたいという場合、どのようにするべきか。
これはフォーメーションが構造上そもそも苦手とするものなので、新たなコンセプトを追加する必要があります。
先の例で言うと、いかにフラットな配置から斜めのパスコースを創出するか。
どのようなコンセプトでモビリティを発生させるのか。
正しい方法はないし実際には難しい問題ですが、それこそがコーチが考えて産み出すものかと思います。
基本的に3-3-1でもビルドアップ攻撃ができないわけではなく、あくまでも構造上難しいということです。
しかしそれをいかに落とし込めるかで、守備の安定やカウンター攻撃にプラスしてポゼッションもできるというスタイルを獲得できます。
こんな感じで学びやすい・学びにくい戦術があるということを理解すると、日々の練習の中で何をトレーニングするかが見えてきますね。
またチームをどのように発展させて行くかもイメージしやすくなります。
3.フォーメーションを安易に変えてはいけない理由
最後にフォーメーションを安易に変えてはいけない理由について。
これは選手が戦術を習得することと指導者の戦術指導のスキルアップに関係します。
①対処法が付け焼き刃的になる
試合で上手く行かない時、フォーメーション自体を変えることで対応できるケースがあります。
例えば2-3-2でプレーしていてセンターバック脇のスペースを使われすぎるので3-3-1に変更。
こうするとその試合では3-3-1のフォーメーションが構造上持っている守備ブロックの安定が発揮され、選手が特に意識しなくても構造の特性から上手く行くということがあります。
しかしこれは付け焼き刃的な対処法になり、根本的な問題は改善されません。
ただ、残り5分で逃げ切るためにとか、どうしても負けれない試合で相手の方が格上なので失点をしたくないからという理由で採用することはありかと思います。
選手が戦術を学ぶよりも勝敗を優先することでチームのマネジメントがしやすくなる、その後の成長につながるなど、リアルな指導現場ではよく起きることです。
しかしできれば、フォーメーション自体を変えるのではなく、選手たちのタスクを変えることで対応したいですね。
②選手の戦術メモリーが増えない
付け焼き刃的な方法をとると選手の戦術メモリーが増えないということは理解しておく必要があります。
なぜなら特にトレーニングを積んで問題を解決したのではないからです。
急な変更でも学ぶことはあるとも言えますが、それは根本的な戦術メモリーの向上にはつながりません。
あくまでも日々トレーニングし、それを試合の中での経験と結びつけながら戦術的スキルを獲得します。
>>参考:判断力を鍛えるには【戦術メモリーを増やす】少年サッカー指導ポイント
③指導のスキルが上がらない
フォーメーションを変えると起きている問題は自然と解決されますが、選手と同様に根本的な指導スキルの向上にはつながりません。
先の例で言うと、2-3-2のセンターバック脇のスペースを同じフォーメーションのままいかに防ぐことができるかというアイデアを提示し、それを選手に落とし込めるかがコーチの指導スキルです。
新しいアイデアなしで3バックに変えた場合、守備の問題は解決しますが、そもそも2-3-2が持っているメリットが失われます。
これを繰り返すと戦術的な指導スキルが上がらないのはイメージしやすいかと思います。
まずはフォーメーションの特性を理解しましょう
以上、今回はフォーメーションが構造上持っている特性と学ぶべき戦術などについて解説しました。
シーズン初めにこのフォーメーションで行こうと決めたら、少なくても1シーズンはそのフォーメーションの中でやりくりして戦術メモリーを高めることをお勧めします。
2シーズン目以降は新たなフォーメーションを採用して、選手たちへ更に新しい戦術を落とし込むのも有効かと思います。