こんにちは、講師のカズです。
少年サッカーの指導現場ではフォーメーションやシステムという言葉が同じような意味で使われています。
実際は別々の概念なのですが、僕自身も何となくそれらの言葉を使っているケースが多いですね。
しかし両者の違いを理解すると指導方法に変化が起きます。
結論として僕は以下のように考えています。
フォーメーションとシステムの違いを理解すれば指導スキルが改善される
これはバルセロナにコーチ留学したから分かったことではなく、25年の指導経験から感覚的に導かれたものです。
僕自身はこれらの違いを理解することで指導方法が変わりました。
なおかつ何にフォーカスしてトレーニングするべきなのか?を理解できるようになりました。
・フォーメーションとシステムの違いが分からない
・どのフォーメーションを採用していいか分からない
・採用しているフォーメーションが上手く行かない
もしこのような疑問を感じていたらぜひ参考にしてみてください。
この記事を読めばフォーメーションとシステムの違いを理解するだけでなく、選手への戦術指導やタスクの与え方がわかります。
少し難しい話になりますが、じっくりと読んでみてください。
動画で解説
1.フォーメーションとシステムの違い
フォーメーションとシステムの違いの解釈にはいろんな意見があると思いますが、ぼくはとてもカンタンに分けて考えています。
難しい言葉や概念で定義すると余計に分かりにくいのでシンプルに。
①フォーメーションとは
フォーメーションとは攻撃時、守備時の選手の基本的な配置。
スタートポジションと似ていますが、スタートポジションはシチュエーションによって変化する場合があるので、ここでは各選手が基本的に最初に立つ場所とします。
イメージとしては最初にとるポジションの大枠の形。
この『形』という部分がポイントです。
スタートポジションって何?という方は下記の記事を参考にしてください。
②システムとは
システムとは「組織や機能性」です。
システムという言葉そのものには、組織以外にも制度や体系、方法や方式などがありますが、サッカーでのシステムは組織や機能性として理解する方がしっくりくるかと思います。
それを更にサッカーに当てはめると以下のように考えられます。
・選手どうしの関係にどのような機能性を持たせるか
・それぞれの相互作用をどのように引き出すか
・どのような仕組みを持たせるか
こんな感じで先のフォーメーションは選手の配置といった意味より、もう少し高次の概念になりますね。
選手に与えるタスクやプレー原則、有機的につながった選手どうしの組織を作ることがシステムだと言えます。
ざっくりいうとフォーメーションは単なる選手の配置。システムはその配置から生まれる機能性。
なんとなくフォーメーションとシステムの違いがご理解頂けたでしょうか。
2.問題がある時はフォーメーションではなくシステムを見直す
フォーメーションとシステムの違いが分かったところで、よくある問題を考えてみたいと思います。
①フォーメーションのせいにすると間違う理由
僕ら指導者は、常に子どもたちのサッカーのレベルアップを図りたいと思っています。
毎日取り組む練習メニューや様々なアイデアも、子どもたちに良いパフォーマンスをしてほしいからという理由で考えていますよね。
しかし、いざ試合を行うと上手く行かないこと、期待はずれの結果になることも。
そんな時に選手のテクニックレベルを問題にするケースもありますが、一方でチームが採用しているフォーメーションを問題にするケースがあります。
しかし問題をフォーメーションのせいにすると、その後の指導を大きく間違うことになります。
なぜならフォーメーション自体には特徴があり、ストロングポイントやウィークポイントがあります。
全て完璧というフォーメーションは存在せず、必ず何かネックが出てきます。
②ジレンマが生まれる
例えば8人制サッカーで2トップを採用した時、FWが2枚いることで流動性が生まれるという攻撃面でのメリットがあります。
反対に守備面では2トップが残りやすくなり、GKと5枚のが守備に回る。
1トップに比べて1枚少ないので守備面で不安が出ます。
しかしメリットとして流動性が出る…
ここでジレンマが生まれますね。
つまり、メリットだけを得ようとするとは不可能
なので、ネックを潰すためにフォーメーションを変更すると、そもそもそのフォーメーションが持っていた良さが消えることになります。
③フォーメーション問題の具体例
採用しているフォーメーションから起こる問題例を見てみましょう。
例えば2-3-2の場合。
例:CBの脇を狙われる問題
青チームの2-3-2の場合、赤の3-3-1に対して2枚のセンターバックの両脇を狙われやすくなります。
これはフォーメーションの噛み合わせから自然と発生する問題です。
しかし、反対に2枚のトップがいるのでモビリティを発生させやすいという利点もあります。
ではこのような2-3-2のウィークポイントが嫌なのでDFラインを3枚にしたらどうでしょう。
そうすると今度は2トップというモビリティを発生させやすいメリットがなくなったり、2トップを残すのであれば中盤が2枚になるので幅が取りにくいなど、別の問題が生じてきます。
こうなると、どのフォーメーションが良いのか分からなくなりますね。
やはりサッカーには完璧なフォーメーションはありません。
④問題がある時はシステムを見直すこと
- フォーメーションを変更することによって良さを消さないにはどうするか?
- フォーメーション的に問題が生じた場合は何をするのか?
それはシステム(機能性)を見直すことです。
分かりやすくカンタンに言うと、フォーメーションはそのままで選手のタスクや役割・動き方を見直すこと。
それにより採用したフォーメーションが本来持っているストロングポイントを残しつつ、問題やネックになっている部分を改善します。
※注意:どんなシステムを採用してもネックを『完全に』消すことはできません。
3.システム変更の具体例
ではフォーメーションはそのままでシステム(機能)を変える具体的な例を見てみましょう。
注意:あくまで分かりやすく説明するために現象を簡略化していますのでご了承ください。
(システムを変えることのイメージを掴んで頂ければ幸いです。)
①3枚のMFのポジショニング
先の2-3-2の例でいうと、ウィークポイントであるCBの両脇を使われないためにもハーフ陣のポジショニングが重要になります。
なおかつ敵のSHにポジションで越えられないようにSHのポジションを下げる必要もあるかもしれません。
もし、3-3-1システムでディフェンスラインが3枚ならMFはそこまで絞らなくても、パスが出た後はSBが対応することができます。
こんな感じで、3-3-1と2-3-2におけるハーフのポジショニングに対する注意点が変わります。
②サイドを突破された時のタスク
他にも2-3-2でもしサイドを突破された場合CBがサイドへ出るのか。
CBがサイドへ出た場合、反対のSHが戻るのかそれとも真ん中のMFが落ちるのかといったケースが出てきます。
こうすると各ポジションにおける選手に与えるタスクが変わってきますね。
方法は他にもあると思いますが、これがシステムのイメージです。
4.少年サッカーにおけるフォーメーションとシステム
特に少年サッカーではという話ではないですが、選手育成の考え方にとってとても重要な点を。
①選手が学ぶべき内容が変わる
ここまで読んで頂いた方は、システムによって選手のタスクや役割・動き方などが変わることがご理解できたと思います。
ということはつまり、チームが採用しているフォーメーションによって、選手がやらなくてはいけないプレーが変わってきます。
それはシステムを考えるということで、つまり選手の学ぶべき内容が変わってくるということです。
②システムの設定により取り組む練習が変わる
当然ながらシステムをどのように設定するかによって、取り組むべき練習が変わってきます。
カバーリングを重点的に学ばせる必要があるのか、それともディレイか。
スライドが必要かそれともポジショニングで解決できるか。
このように採用しているフォーメーションにどのような機能性を持たせるかによって、選手たちのタスクや役割・動き方が変わるので「学ぶべき戦術」が変わり、取り組む練習内容が変わってきます。
これは逆説的には同じような練習メニューをしても同じ効果が出ないこととも関係します。
監督・コーチがイメージしているシステムが異なれば同じ練習でもフォーカスする部分、指摘する部分、キーファクターが変わります。
5.解決しない場合はフォーメーション変更
フォーメーションを変える前にシステムを見直す
これはぼくが過去によくやっていたミスですが、フォーメーションのウィークポイントを見つけるとそのフォーメーション自体を変えたくなりますよね。
そうすると、それまでの良かった部分が消えドンドン負のスパイラルにはまります。
なのでウィークポイントや上手くいかない部分が出たら、選手へ与えるタスクやシステムを見直すことをお勧めします。
それでもどうしてもダメだったらフォーメーションを変えてチームを再構築しましょう。
ただし、再構築すると時間がかかるので取り組む時期が重要になります。
今回は、サッカーにおけるフォーメーションとシステムの違いについて解説しました。
ぜひ指導現場で試してみてください。