こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代のサッカー指導では、「ビルドアップ」という言葉がとても頻繁に使われています。
しかし、日本でのビルドアップの使い方は実は非常に曖昧で、指導者によって解釈が様々です。
僕自身、過去にはビルドアップという言葉を何となく使っていた時期があり、本質を理解していませんでした。
また、以下のような疑問を持つ指導者の方も多いのではないでしょうか。
・ビルドアップって具体的に何を指すの?
・なぜチームによってビルドアップの形が全然違うの?
・スペインサッカーでいうビルドアップとは何が違うの?
この記事では、スペインサッカーの用語を参考にしながら、ビルドアップの本当の意味と、それを子どもたちに伝える方法について詳しく解説します。
この記事を読めば、ビルドアップ指導がよりクリアになり、子どもたちにとって理解しやすい説明ができるようになると思いますので、最後までご覧ください。
1. 日本におけるサッカーの「ビルドアップ」という言葉の曖昧さ

①なぜ日本では定義が曖昧なのか
日本でのビルドアップは「攻撃を構築する」「自陣の後方から前方まで主にパスを活用してボールを運んでいく」といった説明が一般的です。
しかし、実際の現場では指導者によって使い方がバラバラです。
センターバックからのパス回しだけをビルドアップと呼ぶ人もいれば、攻撃全般をビルドアップと表現する人もいます。
僕が現場で感じるのは、この曖昧さが子どもたちの混乱を招いているということです。
「ビルドアップ」と言われても、具体的に何をすればいいのかわからない子どもたちを多く見てきました。
②英語の「Build up」の限界
そもそも「Build up」は英語で「築き上げる」という意味ですが、これだけではサッカーの戦術的な概念としては不十分だと感じます。
日本では英語の直訳から始まったため、サッカーの本質的な戦術理解に結びついていないのが現状です。
③指導現場での混乱
現場では「ビルドアップが下手」「ビルドアップを覚えさせよう」といった表現をよく聞きますが、何をもってビルドアップと定義するかがはっきりしないため、指導がブレてしまうことがあります。
また、具体的にビルドアップという言葉がどのようなものなのかを理解できないと、指導が難しくなってしまいます。
2. スペインサッカーから学ぶ本当の意味

別にスペインが正しい、というわけではないですが、僕の留学経験や現地のコーチングスクールでの学びも踏まえて。
①「Salida de balón」との違い
スペインで使われる「Salida de balón(サリーダ・デ・バロン)」は直訳すると「ボールの出口」で、「ゾーン1におけるGKやディフェンスラインを含めたパス回し」を指します。
この用語は確かに日本でいうビルドアップに近いのですが、より具体的で限定的な概念です。
あくまでもディフェンスライン付近からの「ボールの出口を見つける」という明確な目的があります。

②「Juego combinativo」こそが近い概念
僕が学んできた中で、日本でいう「ビルドアップ」により近いのは「Juego combinativo(フエゴ・コンビナティーボ)」という概念です。
「Juego combinativo」はパスワークとポゼッションを重視するサッカー戦術を指し、相手チームの守備を崩すためにボールを短いパスで保持し、ポゼッションを高めることで相手チームを疲弊させ、チャンスを作り出すことを目指すものです。
③攻撃のタイプは実は2種類だけ
スペインサッカーの理論では、攻撃の基本的なタイプは以下の2種類に分けられます。
1.ビルドアップ攻撃(Juego combinativo)
パスワークを重視した組み立て型の攻撃
2.ダイレクト攻撃(Juego directo)
縦パスやロングボールを多用した直線的な攻撃
つまり、「ビルドアップ」とは「ビルドアップ攻撃」のことであり、攻撃のタイプの一つです。
※今現在、変わってたらすいません。
3. 子どもたちへの指導に活かす方法

①攻撃のタイプを教える
子どもたちには「サッカーの攻撃には2つのタイプがある」ということから教えてもいいかもしれません。
ざっくりと攻撃のタイプのイメージを共有。
「今日はパスをつないで攻める練習をしよう(ビルドアップ攻撃)」「今度は一気にゴールを狙う攻撃をやってみよう(ダイレクト攻撃)」というように、明確に分けて説明すると理解しやすくなります。
②状況に応じた使い分け
実際の試合では、両方の攻撃タイプを状況に応じて使い分けることが大切です。
相手がプレスをかけてきたときはダイレクトに、相手が引いて守っているときはビルドアップ攻撃で、といった具合に使い分けるよう指導しています。
③「なぜビルドアップするのか」を明確に
ビルドアップは手段であって、目的そのものではないということを子どもたちに伝えることが重要です。
「パスを回すこと」が目的ではなく、「相手を動かしてスペースを作り、ゴールを奪うため」にビルドアップをするのだということを常に意識させる必要がありますね。
④段階的な指導
小学生年代では、まず「ざっくりと2つの攻撃タイプがある」ことを理解させ、その後で「状況によってどちらを選ぶか」の判断力を育てていく段階的なアプローチが効果的だと感じています。
⑤現場での実践例
僕の指導現場では「もう少しビルドアップしながら…」「相手が前プレで来たら、優先的に背後を狙って」という感じで、直接的な表現ではなく、イメージとして使っています。
子どもたちも「ショート?ロング?」みたいな形で、自分たちで判断するようになり、戦術理解が深まっているのを感じます。
まとめ
この記事のポイントをまとめておきます。
・日本での「ビルドアップ」は定義が曖昧で指導にブレが生じている
・スペインでの「Juego combinativo」がより近い概念である
・ビルドアップとは攻撃タイプの一つであり、ダイレクト攻撃との使い分けが重要
・子どもたちには「2つの攻撃タイプ」として教えると理解しやすい
・ビルドアップは手段であり、目的は常にゴールを奪うこと
この記事では、ビルドアップの本当の意味(というか、近い概念)について解説しました。
用語の正確な理解が、より良い指導につながると思いますので、皆さんの指導現場でも試してみてください!