こんにちは。ジュニアサッカー大学講師のカズです。
今回はビルドアップ攻撃の中でも大事なポイントとなる「ビルドアップの始まり」について解説します。
スペインだと「サリーダ・デ・バロン」。
日本語の意訳で「ビルドアップの始まり」としています。
サッカーのゲーム中、自分たちのチームが今何をしている場面か?
をわかりやすく分類するためにジュニアサッカー 大学では11のサブフェーズを設定。
これは「サッカーの複雑な現象」をわかりやすく整理するためのフレームワークです。
全体像を知りたい方は、サッカーの基本構造【4つの局面と11のサブフェーズ】戦術の基礎を先に参照してください。
今回は11のサブフェーズの中から『ビルドアップの始まり(サリーダ・デ・バロン)』について解説します。
動画で解説
ではさっそく見てみましょう。
1.ビルドアップの始まり=サリーダ・デ・バロンとは?
ビルドアップとは(組み立てる)という意味ですが、『ビルドアップの始まり』と考えることでぼやっとした「組み立てのスタート」を分解して整理することができます。
↑体系図の中で見ると黒くなっている部分になります。
「ビルドアップの始まり」という言葉はスペイン語の「サリーダ・デ・バロン」を日本語に僕が意訳したものです。
サリーダ・デ・バロンとを直訳すると「ボールの出口」になります。
僕が学んだバルセロナの指導者学校でも普通に使われていて「スペインサッカーは細かく定義しているな」という印象を受けました。
イメージとしては自分たちのゴールキーパーやディフェンスラインの選手がボールを持っているときに「次にどこにパスを出すかを探しているようなアクション」になります。
「ボールの出口」を探しているアクション、なんとなくイメージできますか?
このまま日本語訳にするとわかりにくい部分もあるので、日本で馴染みのある「ビルドアップ」という言葉と絡めて「ビルドアップが始まるイメージ」なのでジュニアサッカー大学ではそのような名前にしています。
これから全員で相手ゴールへ向かって「前進して行く最初の段階」とイメージしてもらえればOKです。
2.ビルドアップの始まりの具体例
では具体的な例を図を使って解説します。
「ジュニアサッカー大学」なので8人制サッカーを例にしますが、11人制でも同じ概念です。
まずはゴールキーパーから
こんな感じでGKがディフェンスの選手や中盤の選手にパス。
そこにパスが入ると、ここから前進して行くイメージ。
フォワードに直接パスをする事もありますが、概念としては同じビルドアップの始まりです。
ディフェンスの選手から
こんな感じです。
すでに「前進」の場面に入っている感じがしますが、アクションとしての大まかなイメージです。
なぜ抽象的なイメージなどの言葉を使うかというと、厳密に定義し出すと必ずどこかで矛盾が起きたり、そこにとらわれすぎて行きづまってしまうからです。
ジュニアサッカー大学では、「わかりやすく、実際の指導現場で使えるもの」を重要視しているのでこれくらいの理解で問題ありません。
ここをいくら議論しても何も生まれないですね。
「ただのパスじゃん」
「それに名前をつける必要があるの?」
って思っている方も多いと思いますが、この次のフェーズになる『前進と保持』を有効化するためにも実は大事なフェーズです。
3.ゲームモデルとの関係性
前進のための最初のアクションである「ビルドアップの始まり」ですが、これは自チームのゲームモデルと関係します。
①ゲームモデルに基づいた配置やポジショニング ②自分たちの攻撃スタイルと関連 ③相手のプレッシングも考慮
プレーの流れの中でGKやDFから作り直す場合もありますが、基本的には大まかな形が決まっています。
あとは敵のプレッシングの変化に対してバリエーションをつけるので、規則性がありながらも状況判断が必要となります。
ジュニア年代でも自チームの攻撃方法と敵のプレッシング方法を十分に考慮することが重要です。
4.一般的に考慮すべきポイント
8人制、11人制にかかわらず、考慮すべきポイントをいくつか挙げます。
- レガテ(突破のドリブル)で剥がすのではなく、運ぶドリブルを使う
- 次に来る『前進』のフェーズがスムーズになる必要あり
- パスをつなぐだけでなくドリブルも織り交ぜながら前進へつなげる
- 前進の糸口が見えない場合はサイドを変えたりして再び作りなおす
- 前進しようとするパス(斜めなど)が少ないと敵に守備を整える時間を与えてしまう
- 奪われると即敵のフィニッシュにつながるためリスクは高い
基本的には相手のプレスに対して数的優位を作りながらボールを動かします。
5.ジュニア年代のビルドアップの始まり
このビルドアップの始まりはジュニア年代では年齢やスキルによって異なる問題が出てきます。
ロングボールが蹴れない
低学年や中学年、もしくはロングキックが蹴れない場合、マンツーマンを取られるとかなり苦しみます。
ゴールキックからなかなか抜け出せない現象。
Gkがロングボールが蹴れる場合、相手が前からマークに来ても一気にFWヘパスを送る事ができますが、蹴れないと問題が生じます。
スペースが狭いので数的優位が分かりにくい
8人制サッカーではコートが狭く、また選手から見える風景では数的優位かどうかが分からないという現象が起きます。
外から見ると2対1とか3対2と見えますが、選手目線では難しいですね。
前線からのプレス・マンツーマンマーク
ディフェンスラインからパスを繋ごうとすると、相手が前からプレスに来る、マンツーマンで来るということも多々あります。
そうなると選手はミスが怖くなりメンタル的に不安になります。
特に足元のテクニックに自信がない選手の場合、前からプレスに来ているのにパスをつなぐことは勇気がいりますね。
その他の問題点
他にも以下のような問題点もあります。
①テクニックレベルに問題があると効果的な前進につながらない
②決まりきった「形」になるとハマりやすい
③選択肢が多すぎると、選手に考える要素が増えすぎ判断に迷いが出る
解決するために必要な要素
8人制サッカーやジュニア年代の特徴を考えると11人制サッカーと改善する要素が異なります。
①マークを外す動き ②前プレに対してレガテ(突破のドリブル)とワンツーなどのコンビネーション ③最初のパスでDFラインの背後を狙う動き
こうやって見ると、11人制サッカーにおける「前進とボール保持」や「フィニッシュ」のフェーズと似ています。
8人制サッカーではゾーンを3つに区切るのではなく、2つに区切るイメージなので、ビルドアップの始まりはすでに前進とボール保持、フィニッシュとの距離が近いため、本来はゾーン2、3あたりで頻発する戦術コンセプトが必要になります。
6.少し難解な問題
この「少し難解な問題点」についてはあまり気にする必要はありませんが、一応記載しておきます。
(※今後加筆・修正する可能性あり)
「11のサブフェーズ(チーム全体のアクション)」を理解し出すと「疑問」が出てきますので、それまではここの部分は読む必要はありません。
とりあえず解説します。
この次に来るフェーズの「前進の方法」には「コンビネーション」と「ダイレクトプレー(ロングボール)」の2つがあるのですが、ここが少し理解するのに難解というか矛盾というか。
GKやDFから中盤にパスを出し、そこからコンビネーション(ショートパスなど)を使って敵のゴールに前進して行くのですが、それはイメージしやすいですよね。
でもGKやDFからロングボールでFWヘパスをした時というのは「ダイレクトプレー(ロングボール)」という前進の方法なんですが、ビルドアップの始まりはどうなったのか?
ジュニアサッカー大学では、ここではロングボールを蹴るアクションも「ビルドアップの始まり」で「前進と保持」でもあると解釈します。つまり同時に起きている現象。
あまり気にする必要はないですが、こだわりたい方は自分なりに考えてみてください。
やはりサッカーというスポーツは様々なことが複雑に絡んでいるので「言葉で整理」しようとするとどうしてもムリヤリな部分が出てきます。
実際はそんなに単純な構造ではないですからね。
7.まとめ
今回はビルドアップの始まり(サリーダ・デ・バロン)について解説しました。
「ビルドアップの始まり」とは「前進・保持」のフェーズの前、最初の段階でGKやDFからのパスを出す場面と理解しましょう。
また、前進をスムーズに行うためのものであること、加えて自チームのゲームモデルや相手チームのプレッシング方法も考慮する必要があります。