こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代の子どもたちの試合を見ていると、せっかくパスを受けたのにチャンスにならない、一生懸命に守備をしているのだけど失点してしまうということがあります。
このような問題の原因は攻守におけるポジショニングの質が大きく関わっています。
そしてポジショニングの問題は、予測という戦術と深く関わっています。
戦術の言葉として聞きなれないものではありますが、僕がバルセロナにコーチ留学した時にはとても重要な戦術だと学びました。
また実際に僕のチームでも細かく指導しています。
この記事では、プレーの質やポジショニングを改善するための予測の重要性や具体例、指導のポイントを解説します。
予測の考え方が分かると、攻撃でも守備でも子どもたちのプレーが飛躍的に改善されるのでぜひ参考にしてみてください。
動画で解説
1.基礎戦術:予測とは?

予測とは文字通り、次の展開やプレーを予測することです。
なんだ、そんなことかと思われるかもしれませんが実はジュニア年代ではこの予測がない、もしくは予測できないためにポジショニングのミスやプレーの質が下がるということは多いです。
また、予測は戦術的な知識とリンクしているので子どもたちに「予測しろ」と言ってもプレーは改善されません。指導方法については後ほど解説します。
①予測とはアクションのための前提
アクションとリアクションの違いはプレーの主導権を握れるかどうかの違いになります。
自発的・能動的に動けるのがアクションで、アクションに対する反応はリアクションです。
つまり予測することで受け身的なリアクションからアクションへ切り替わり、主導権を持ってプレーできるということです。
②予測を伴う具体的な例
では具体的な例です。
・ポジショニング
・インターセプト
・スペースへの侵入
簡単に解説します。
ポジショニング
全てのプレーの前提となるポジショニング。予測することで適切なポジション取りができ、その後のプレーの質を高めます。
インターセプト
相手のパスのタイミングを予測することで動き出し速くなりボール奪取しやすくなります。
スペースへの侵入
プレーの展開を予測しながら適切なポジショニングとタイミングよくスペースへ現れることでフリーになれたり、マークから逃れたりすることができます。
このように予測は全てのプレーの基礎となるだけでなく、プレーを優位に進めるための必須条件でもあります。
2.予測のミスと改善策の具体例

では実際にジュニア年代でよくある予測のミスや予測していないためにチャンスを潰す例を見てみましょう。
1.守備のプレスが間に合わない
この図は青チームのSHがプレスに間に合わないケース。
SHは相手のMFとSHを同時にマークしないといけない状況です。
ここで決め打ちしてMFをマークするとサイドを使われますし、サイドに食いつくと中のMFを使われます。
味方のMFがスライドして対応することもできますが、そうでない場合青のSHは予測してパスカットを狙わなければなりません。
味方のFWの相手CBへのプレスのかかり具合を見て、サイドにパスが出ると予測したタイミングでアプローチすればボールを奪える確率は高まります。
しかし反対に予測しておらず、パスが出てからのリアクションでは可能性は低くなります。
改善策
ポイントは2人の相手を同時に警戒しながら、FWが切っているパスコースの具合、相手CBがパスを出すモーションを見逃さないようにすることです。
2.逆サイドで適切なポジショニングができない
今度は逆サイドのSHの例です。
自分がいるスペースと反対サイドで相手がボールを持っています。この時に考えられることはいくつかあります。
1.サイドを突破される
2.中央へ展開される
3.味方がボールを奪う
図ではこれらを予測して適切なポジションに立っています。
しかしAの位置だとどうでしょうか。
サイドを突破された後に戻るのが遅れるし、中央へ展開されたら相手のSHへのパスカットが狙えず追いかける形になります。
反対にBの位置でも相手SHへのパスカットは狙えないばかりか、味方がボールを奪った後の攻撃参加が遅れてしまいます。
改善策
ここではSHは直接的にボールに関わることができません。
そのため次の展開を予測しながらポジショニングする必要があります。
相手が中央に展開してきたらSHへの横パスを狙おう、味方が奪ったら素早く上がろうといった予測を立てながら準備しておきます。
3.動くタイミングが早くてチャンスを作れない

最後に攻撃の最終局面での予測です。
青チームは左サイドを突破しかかっています。
この時、逆サイドのSHが何も考えずにフラフラとポジションを上げると最初から相手のDFに捕まってしまい警戒されます。
ここでパスが来てもパスカットされるか相手の守備に捕まり自由にプレーできる可能性が低くなります。
改善策
反対にAの位置にポジションを取っておき、左サイドの展開を見ながら適切なタイミングでゴール前へ移動した場合はどうでしょう。
相手はまだSHが遠くにいるので警戒を怠ります。
そしていよいよ右サイドを突破されるとボールがある場所への注意が高まり、ふとゴール前に現れたSHはフリーになれる可能性が高いです。
つまり自チームの突破の方向や相手DFの動きを見て次のプレーの予測を立てておくことがポイントです。
3.指導のポイント

では最後に指導のポイントについて解説します。
1.理屈を分かりやすく説明し理解させる
2.予測しながら動く習慣をつける
3.質問しながら思い出させる
① 理屈を分かりやすく説明し理解させる
まずは攻撃でも守備でも何らかのプレーの局面で何を考える必要があるかを説明します。
先ほどの反対サイドのSHの例。
「ボールが逆サイドにある時は、相手に中央へ展開されるかもしれないし、味方が奪うかもしれない。ポジショニングが高いと展開された後に追いかける形になってパスカットが狙えない。反対に低すぎてもパスカットが狙えない。だから攻撃と守備のどちらも狙える中間のポジションを取ろう。高さの基準はMFと同じ高さに立つんだよ。」
こんな感じで、理屈と基準となるポイントを選手に理解させます。
②予測しながら動く習慣をつける
普段のトレーニングの中でボールがない時に考えさせることを習慣化することも大事です。
予測していないとプレーがリアクションになるので、ミスを誘発します。コーチングのポイントはミスが出た後に指摘するのではなく、事前に促しておくこと。
知識を与えた後は、プレーに対してシンクロで「今〇〇を考えておくんだぞ」といった形で、予測しておくべき内容を促します。
ミスが出た後、結果論的に指摘するのではなく、事前に促すことで選手のモチベーションを維持します。
この辺のコーチングのテクニックは別記事で詳しく解説しています。
>>選手が上手くならないサッカーコーチの特徴【現象を捉える基本スキル】
③質問しながら思い出させる
しっかりトレーニングしても試合中の子どもたちは予測する内容や予測すること自体を忘れてしまうことも多いです。
単純に忘れている状態なら、質問して思い出させるようにしましょう。
質問しても選手が迷っているようならまだ理解できていない証拠です。
その時はトレーニングに立ち返りましょう。
>>サッカーコーチが選手に戦術的スキルを獲得させる4つのステップ
4.まとめ:サッカーに必要なのは正しいポジションに立ち、いつどこに動くか
最後に要点をまとめておきます。
・予測とはポジショニング・プレーの質を上げる基礎戦術
・次の展開を予測することで能動的なアクションとしてプレーできる
・予測を理解することでポジショニングや動き出しが改善される
・コーチングのポイントは3つ
1.理屈を分かりやすく伝える
2.練習中はシンクロで促す
3.忘れたら質問して思い出させる
・予測によってスピードが上がる
サッカーではテクニックスキルの高さはもちろんですが、戦術的なスキルも同じように大切です。
サッカーにおける速さとは身体的なスピードもありますが、適切なポジションをとり予測して動くことで別の速さを獲得することができます。
スピードに自信がない選手、ポジショニングが分からない選手には予測してプレーする必要性を伝えることで、格段にプレーに質が上がると思います。
ぜひ指導現場で試してみてください!