こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代のサッカーにおいて、ビルドアップ攻撃やポゼッションサッカーを実現したいと考える方は多いのではないでしょうか。
8人制サッカーは11人制サッカーより複雑性が低いですが、ビルドアップ攻撃やポゼッションスタイルを実現するためには、さまざまな要素が必要になります。
特に、サポートやスペースの活用といった戦術的な要素が重要になります。
しかしこれらだけにとらわれると、うまくいかないことも多々あります。
そこで、この記事では、ビルドアップ攻撃やポゼッションサッカーを採用する際に、戦術的な要素よりも優先すべき考え方について解説します。
戦術的なトレーニングをしてるんだけども、何かうまくボールが回らないなと感じる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
1.結論【個人でプレスを剥がせるようにする】
最初に結論です。
個人でプレスを剥がせるようにする
ビルドアップ攻撃がうまくいかないとき、よくあるのが『個人でプレスを剥がすことができない』という現象です。
ビルドアップやポゼッションを語ると、どうしても僕ら指導者はサポートやオフザボールの動きばかりが気になってしまいます。
しかし、実際にボールが循環する背景には、個人のテクニックスキルが重要になってきます。
2.戦術的な問題ではなく個人テクニックの問題
①時間が作れないという問題
パスをつなぐ、ボール循環させるには、適切な位置にサポートが入ったり、スペースを活用するといった戦術的な動きが必要になります。
しかし、これらの動きを行うためには時間が必要になります。
そのためボールホルダーがタメ(一瞬の時間)を作れるかが重要なポイントになります。
例えば、センターバックがパスを受けた際にプレスを受けていたとします。
その瞬間にあわてて近くにいる味方にパスを出しても、味方がマークされているかどうかが見えておらず、そこでまたパスを受けた選手がプレスを受けてボールを失うケースはよくあります。
この場合、センターバックがパスを使うふりをしてボールを運び、ドリブルでプレスを外して一瞬タメを作ると、マークされた選手が動き直す時間や、相手のプレスの状況を変えることが可能になります。
この時間を作り出すためには、個人のテクニックスキルが重要になります。
②駆け引きができていないという問題
個人のテクニックスキルの別の問題として駆け引きができていないと言うこともよくあります。
これが技術的なスキルなのか、戦術的なスキルなのかは置いておいて、個人のスキルとして必ず獲得しておきたい、駆け引きする力。
例えば、センターバックがボールをコントロールした際に外側にコントロールする。
そうすると当然相手のプレスはこちらのサイドバックを狙ってスライドしてきます。
その際にそのままサイドバックにパスを入れると当然狙われてそこでボールを失うという結果を招きます。
そこでサイドバックにパスを入れるふりをして、ボランチにパスをつけたり、体の向きを中央に向けて、相手のスライドの足を止めてサイドバックに入れる。
このような、ちょっとした駆け引きを入れることで、ボールは循環しやすくなります。
③数的優位ができない状況をイメージする
ビルドアップやポゼッションスタイルでは、どこかの局面で数的優位を作って打開するというような考え方がベースにあります。
しかし日本の8人制サッカーの場合、ハーフコートにフィールドプレイヤーが14人も入るといった、とてもスペースが狭い状況になります。
そうすると、数的優位が作れそうな場面でも、選手の感覚からすると、同数に近い感覚になります。
またゴールキーパーが足元が苦手(ビルドアップがあまり得意ではない)場合には、相手が前からプレスに来ると、ほぼほぼマンツーマン気味にはまってしまいます。
そうすると個人でプレスを外すスキルがないと、無理矢理パスを入れてボールを失うか可能性の低いロングボールに頼ることになります。
そのため、数的優位ができない状況が起こる前提で考えておく必要があります。
3.戦術の指導も必要
個人のテクニックスキルを上達させれば、それだけでビルドアップやポゼッションがうまくいくというわけではありません。当然戦術的なプレーも必要です。
特にサポートした際のポジショニングやパスラインが消えた際の動き直し、それに伴うスペースを活用する動きなどはとても重要な戦術的要素です。
ボールの循環にフォーカスする際には、戦術的な要素だけに目を向けるだけでなくテクニック面戦術面、そしてメンタル面を含めて、選手たちがどこに問題を抱えているかを分析し、それをトレーニングに落とし込むことが重要です。
4.練習でよくある間違いと改善ポイント
過去の僕もそうでしたが、練習でパスがきれいに回っていると、試合でもうまくいくと間違って考えてしまうことがあります。
1.数的優位の練習ばかりを行う
4対2のロンドや5対5+フリーマンのポゼッション練習は有効ですが、初期設定から攻撃の人数が多い練習だけに依存すると、実戦での適応力が不足します。
数的優位の状態ではなく、同数や数的不利の状況を意識することが重要です。
2.数的同数の練習を取り入れる
数的同数のトレーニングでは、パスコースがない状態が生まれやすく、個人でプレスを剥がして時間を作る技術が必要になります。
ビルドアップやポゼッションを目指すチームにとって、これらの状況を克服する練習は非常に有効だと思います。
3.オーガナイズの工夫
パスコースが頻繁に変化するような設定を取り入れることで、選手は「いつパスを出すべきか」「いつボールを保持すべきか」という判断力を養うことができます。
また「パスコースがない時にどのようにプレーするか」といった判断とテクニックスキルを合わせたプレーも必要になってきます。
5.お勧めのトレーニング
僕がよく行うトレーニングをご紹介します。
①パスコースが常に確保できない練習メニュー:4対2ロンド(外3中1)
②ポジションが入れ替わる練習メニュー:5対2ロンド(ポジションチェンジ付き)
③同数のポゼッション:5対5〜8対8くらい
僕がよく行う代表的な練習メニューを紹介しました。
ただし、ここで重要なのは、分かりやすいキーファクターを整理することやコーチングのポイントです。
僕の表現で言えば『プレーコンセプト』を明確にして、選手に分かりやすく説明できるようにすることです。
戦術指導はとても難しいですが、指導者として必須スキルです。
6.まとめ
・戦術的な要素だけではボールは循環しない
・その原因は個人で剥がせるテクニックが不足している
・改善にはパスコースがない状態の練習メニューを行う
・プレーコンセプトを分かりやすく伝える
今回は、ビルドアップ攻撃やポゼッションスタイルのサッカーを行う際に、指導者が陥りやすいポイントとその改善方法について解説しました。
戦術的な部分をトレーニングしているけれど、試合ではボールがうまく回らないと感じた方は、ぜひこの記事の内容を参考にしてみてください!