こんにちは、講師のカズです。
サッカーにおいて戦術と言った時にどんな言葉をイメージするでしょうか。
ポジショナルプレーやポゼッションサッカー、マークやカバーリング、サポートやスペースを使う動きなど、この他にも多くの戦術的な用語がありますが、これらの分類を整理しないと指導現場で困ることが多々あります。
今回は、その中でもとても重要な攻撃と守備の戦術アクションの概要と、サッカーを構造的に捉えた場合の位置付けについて解説します。
戦術アクションとは何か、どのような位置付けかを理解すれば、サッカーの戦術を深く知るための様々な言葉を整理するフレームワークの1つが見えてきます。
動画で解説
では、解説します。
はじめに
戦術アクションとは?
戦術アクションの厳密な定義はないのですが、以下のようなイメージです。
サッカーにおける攻撃・守備・切替のフェーズにおいて目的達成のための普遍的な戦術。
例えば攻撃においてはマークを外す動きやサポート。
守備ではカバーリングやスライドといったアクションは、サッカーにおける普遍的な戦術アクションです。
分かりにくい表現ですが、この記事を読み進めて行けばイメージはつかめると思います。
以下の図のような項目が戦術アクションに位置付けられます。
■攻撃の戦術アクション
・マークを外す動き
・サポート
・スペースの活用
・フィハール(ひきつける)
・エントレリネアス(ライン間)
・攻撃の警戒
・壁パス
・オーバーラップ
・レイオフ(落としのパス)
・3人目の動き
・サイドチェンジ
・攻撃を遅らせる
■守備の戦術アクション
・マーク
・守備の警戒
・予測
・インターセプト
・敵の攻撃を遅らせる
・カバーリング
・ペルムータ(ポジションの交換)
・スライド
・プレッシング
・レプリエゲ(後退)
・ラインコントロール
様々な異なるゲームモデルを選択した場合でも、活用できる普遍的なものを戦術アクションと呼んでいます。
例えば僕の場合、攻撃のフィニッシュのフェーズの目的の一つはシュートを打つことであり、そのために戦術アクションであるマークを外す動きを活用する、という位置付けを行なっています。
そしてこのマークを外す動きは、ゲームモデルが変更されても活用できる戦術的な要素です。
戦術アクションの注意点
最初にいくつか注意点があります。
戦術コンセプトは攻撃と守備、個人戦術やグループ戦術など様々なものが挙げられますが、この記事ではバルセロナのコーチングスクールで学ぶ内容をベースに、近年の新しいサッカー用語と合わせ、ジュニアサッカー大学なりの解釈を加えてアレンジした内容となっています。
また、これらのアクションは時代やサッカースタイルの変化と共に、今後も発展していくものなので随時、加筆修正を行います。
ジュニアサッカー大学を通じて常日頃発信しておりますが、最終的には各監督・コーチ自身が自分なりの定義、サッカー観を持つことがこの大学の目標ですので、自分なりの解釈を加えて、自分なりの位置付けを自由におこなってください。
その基礎となる部分にジュニアサッカー大学の知識がお役に立てば幸いです。
※今後、随時加筆修正していきます。
戦術アクションの位置付け
最後に各フェーズとの関係性を例を挙げて見てみましょう。
上の図は別記事で解説している「サッカーにおける4つの局面(フェーズ)とその中に含まれるサブフェーズ」の中に戦術コンセプトを位置付けたものになります。
その中から攻撃のサブフェーズである「フィニッシュ」を例に解説します。
(例)サブフェーズ・フィニッシュ
■目的
中央でのコンビネーション、サイドから崩してシュートチャンスを作る
(プレー原則)
・幅をとったポジショニングでボールを動かし中央のスペースを広げる
・サイドで数的優位を作る
■戦術アクション(目的達成のための)
・マークを外す動き
・壁パス
・3人目の動き
・オーバーラップ
・他
つまり、フィニッシュのフェーズでの目的であるシュートチャンスを作るために、いくつかの戦術アクションが必要になるという解釈です。
図の中でプレー原則を()にしているのは、これらの戦術アクションはおおかた、このフィニッシュのフェーズで用いられる戦術アクションだからです。
ゲームモデルやプレー原則が変わるとピックアップされる項目の多少の違いはありますが、このフェーズに必要な戦術アクションは大きくは変わりません。
このように、戦術アクションとはサブフェーズにおいて、その目的を達成するためのプレー原則を支えるもの、もしくは同列にくる可能性がある戦術用語になります。
注意:プレー原則と戦術アクション
プレー原則はゲームモデルの中にある各フェーズにおける選手がプレーするためのガイドラインですが、これをプレーコンセプトと呼ぶことも可能です。プレーコンセプト実現のために各戦術アクションが必要になるという解釈も成り立ちます。
まとめ
今回は戦術アクションの概要について解説しました。
これらは現代サッカーの中での普遍的な概念で、それ自体の言葉を知るだけでなく、構造的にどのような位置付けになるかを理解すると、その後のゲーム分析やトレーニングメニュー作成、育成年代に何を学ばせる必要があるか、といった大きな問題を解説するキーワードになってきます。
また、別記事で解説しているサッカーにおける4つの局面と11のサブフェーズと合わせて考えると、より理解が深まります。
分析、トレーニングを考える際に、サッカーを構造的に見る時の基礎となるフレームワークを知ることで、戦術アクションの位置付けが明確になるので参考にしてください。