こんにちは、講師のカズです。
ジュニアサッカー指導において、選手に対して感情的になってしまい、後で反省することはよくあるかと思います。
・選手のミスに対してつい感情的になってしまう
・怒った後に「あの言い方は良くなかった」と後悔する
・感情をコントロールして適切な指導をしたい
僕自身も若い頃は感情任せに怒ってばかりで、それでは選手が萎縮するばかりで全くうまくならないという経験をしました。
この記事では、僕が30年の指導現場で学んだ「怒る」と「叱る」の違いと、感情的にならずに効果的な指導を行う具体的な方法について詳しく解説します。
この記事を読めば、ジュニアサッカー指導者として感情をコントロールし、選手の成長を促す建設的な指導ができるようになると思いますので、最後までご覧ください。
1. 「怒る」と「叱る」の根本的な違い

①起点となる感情の違い
「怒る」と「叱る」の最も大きな違いは、その行動の起点にあります。
怒るというのは自分の感情が起点となっている行動です。
選手のプレーが思い通りにいかない、期待に応えてくれないといった指導者の感情から発生します。
一方、叱るというのは相手(選手)のことを思った行動です。
選手の成長や安全、チームのためを考えて行う建設的な指導です。
この前提の違いを理解することが、効果的な指導の第一歩となります。
②選手への影響の違い
怒ることによる指導は、選手に萎縮や恐怖感を与え、本来の力を発揮できなくなる原因となります。
僕も若い頃は感情任せに怒ってばかりいましたが、それでは選手が萎縮するばかりで全くうまくならないということを痛感しました。
叱ることによる指導は、選手に気づきや成長のきっかけを与え、より良い行動を促します。
この違いを理解し、常に「選手のため」という視点を持つことが重要です。
③コーチングの本質から考える
僕らが行うコーチングの本質を考えると、感情任せに怒るということは明らかに間違いです。
コーチングの目的は選手の成長を促すことであり、指導者の感情を発散することではありません。
感情的な指導では、選手との信頼関係を築くことも、効果的な学習環境を作ることもできません。
常にコーチングの本質に立ち返り、選手の成長を第一に考えた指導を心がける必要があります。

2. 感情的な指導が生まれる原因

①感情任せの指導パターン
感情任せに指導しようとすると、どうしても怒ってしまうことが増えてしまいます。
特に、選手のミスやプレーの結果に対して即座に反応してしまう指導者は、感情的になりやすい傾向があります。
僕も昔は、子どもたちのプレーのミスに対して怒ることがたくさんありました。
しかし、よく考えてみると、結局はコントロールできないものに対して怒っているだけだったのです。
②コントロールできないものへの怒り
選手のミスや試合の結果など、指導者がその場でコントロールできないものに対して感情的になることは非常に多いです。
パスミス、シュートミス、判断ミスなど、これらは全て選手が行うプレーであり、指導者が直接コントロールできるものではありません。
この気づきから、僕はプロセスを評価するという考え方に変えました。
結果はコントロールできないものですが、プロセスはコントロールできるものです。この考え方の転換が、感情的な指導からの脱却につながりました。
③期待と現実のギャップ
指導者が選手に対して抱く期待と、実際のプレーとのギャップが大きい時に、感情的になりやすくなります。
「なぜできないんだ」「何度言えばわかるんだ」といった感情は、この期待値の設定ミスから生まれることが多いです。
選手の現在のレベルを正確に把握し、適切な期待値を設定することで、この問題を避けることができます。
現実的な目標設定と段階的な成長を認めることが、感情的にならない指導の基盤となります。
3. 事前のマインドセット法

①練習・試合前の心構えの重要性
感情的な指導を改善する最も効果的な方法は、練習や試合に臨む前にマインドを一度セットすることです。
どうしても怒りっぽい人は、事前に適切な心構えを作ることで、感情的になることを防ぐことができます。
この事前準備こそが、感情をコントロールするための最も重要な技術だと僕は考えています。
一度感情的になってしまってからでは遅いので、予防的なアプローチが不可欠です。
②選手への期待と楽しみの設定
僕が実践している具体的な方法は、選手たちはもっとできる、もっと上手くなれるはずだと信じ込むことです。
選手たちに期待する、選手のプレーを楽しみにするという気持ちでマインドをセットしていきます。
「今日はどういうところを褒めようか」といった感じのマインドで一度セットしていくと、感情にブレーキがかかります。
この準備により、選手のミスやプレーに対しても建設的な視点で接することができるようになります。
③一人ひとりの良い点の事前イメージ
期待する、楽しみにするの具体的な方法として、一人ひとりの良いところをしっかりイメージしておくことが重要です。
「彼はここがいい」「彼はこういうところがいい」といった具体的な良い点を事前に整理しておきます。
そして、一人一人がもっとプレーが改善されるようなイメージを持っておくことも大切です。
この事前のイメージ作りにより、選手の成長に焦点を当てた指導ができるようになります。
4. 叱るべき明確な基準

①道徳的な部分での指導
僕が叱る時の基準は、まず道徳的な部分です。
人として当たり前にやるべきことができていない時、仲間を思いやる気持ちが欠けている時などは、しっかりと叱ります。
サッカーの技術的なミスではなく、人間性に関わる部分については、明確に指導する必要があります。
これは選手の将来を考えた時に、非常に重要な要素だからです。
②安全面での厳格な対応
もう一つの重要な基準は安全面です。
例えば、うちのクラブでは送迎を行っているのですが、車中で窓から手を出すといった行為は、めちゃくちゃ危ないので厳しく叱ります。
選手の安全に関わることについては、妥協することなく指導します。
一度の事故が取り返しのつかない結果を招く可能性があるからです。
③一般常識との照らし合わせ
叱るべきかどうかの判断基準として、一般常識と照らし合わせることが有効です。
社会人として、人として当たり前のことができているかどうかという視点で判断します。
挨拶、時間を守る、約束を守る、他人に迷惑をかけないといった基本的な事柄は、しっかりと指導します。
これらは技術的な成長以前に、人間として成長するために必要な要素だからです。
5. 効果的な叱り方とフォロー

①その場で完結させる原則
僕が叱る時に心がけているのは、その場で叱って選手が理解してくれれば、それでオッケーということです。
その後にうだうだ言わない、引きずらないということが重要です。
叱った内容について選手が理解し、改善の意思を示せば、そこで一度リセットします。
長々と説教を続けたり、後になって蒸し返したりすることは避けています。
②建設的な改善提案
単に叱るだけではなく、どうすれば改善できるかの具体的な提案も行います。
「なぜダメなのか」だけでなく「どうすれば良いのか」を明確に示すことで、選手にとって学習につながる指導となります。
叱った後は、選手が正しい行動を取れるようにサポートすることも指導者の重要な役割です。
この建設的なアプローチにより、叱ることが選手の成長につながります。
③信頼関係の維持
叱ることと選手との信頼関係は両立可能です。
むしろ、適切に叱ることで「この指導者は自分のことを真剣に考えてくれている」という信頼を得ることができます。
ただし、これは日頃からの関係性があってこそ成り立つものです。
普段から選手との良好なコミュニケーションを心がけ、信頼関係を築いておくことが前提となります。
6. 失敗から学んだ重要な教訓

①若い頃の感情的な指導の反省
僕も指導を始めた頃は、感情任せに怒ってばかりいました。
選手のプレーが思い通りにいかないと、すぐに感情的になって怒鳴ってしまうことが多々ありました。
しかし、そのような指導では選手が萎縮するばかりで、全くうまくならないということを痛感しました。
この失敗経験が、僕の指導スタイルを根本的に変えるきっかけとなりました。
②萎縮する選手への気づき
感情的な指導を続けていた時期、選手たちが明らかに萎縮していることに気づきました。
のびのびとプレーできず、ミスを恐れて消極的になってしまう選手が増えていました。
これでは本来の目的である選手の成長を阻害してしまっていることに気づき、指導方法を見直す必要性を強く感じました。
選手が安心してチャレンジできる環境を作ることの重要性を、身をもって学びました。
③コーチングの本質への回帰
この経験を通じて、僕らが行うコーチングの本質について深く考えるようになりました。
コーチングの目的は選手の成長であり、指導者の感情発散ではありません。
感情任せの指導は、この本質から大きく外れた行為であることを理解しました。
常にコーチングの本質に立ち返り、選手のための指導を心がけるようになったのは、この失敗があったからこそです。
7. 長期的な効果と選手の変化

①安心してチャレンジできる環境
感情的にならない指導を心がけることで、選手たちが安心してチャレンジできる環境を作ることができます。
ミスを恐れずに積極的にプレーする選手が増え、結果的にチーム全体のレベル向上につながります。
選手が「失敗しても大丈夫」という安心感を持てることで、より創造的で積極的なプレーが生まれます。
この環境作りこそが、指導者の最も重要な役割の一つだと考えています。
②建設的な成長サイクル
適切な叱り方と褒め方のバランスにより、選手の建設的な成長サイクルが生まれます。
道徳的な部分や安全面では厳しく指導し、プレー面では成長を認めて励ますことで、選手は確実に成長していきます。
この一貫したアプローチにより、選手は何が大切で何を改善すべきかを明確に理解できるようになります。
結果として、自立した判断力を持つ選手が育っていきます。
③指導者自身の成長
感情をコントロールした指導を心がけることで、指導者自身も大きく成長します。
冷静な判断力、適切なコミュニケーション能力、長期的な視点での選手育成など、多くのスキルが向上します。
また、選手との信頼関係が深まることで、より効果的な指導が可能になり、指導の楽しさも増していきます。
感情的にならない指導は、選手だけでなく指導者にとっても大きなメリットをもたらします。
まとめ
最後にまとめておきます。
・怒るは自分の感情が起点、叱るは相手を思った行動
・感情任せの指導では選手が萎縮するばかりで成長しない
・事前のマインドセットで感情的な指導を予防する
・選手に期待し、プレーを楽しみにする心構えを作る
・一人ひとりの良い点を事前にイメージしておく
・叱る基準は道徳的な部分と安全面での一般常識
・その場で完結させ、後に引きずらないフォローを心がける
・コーチングの本質は選手の成長であることを忘れない
・安心してチャレンジできる環境作りが指導者の重要な役割
この記事では、ジュニアサッカーにおける「怒る」と「叱る」の違いと感情的にならない指導方法について解説しました。
事前のマインドセットと明確な基準を持つことで、選手の成長を促す建設的な指導ができますので、皆さんのジュニアサッカー指導現場でも参考にしてみてください!