こんにちは、講師のカズです。
ジュニアサッカー大学では、日々たくさんの指導者の方からご相談をいただきます。
その中でも、技術や戦術の悩みと同じくらい多いのが、「チーム内の人間関係」や「組織のあり方」に関する悩みです。
先日も、読者の方から非常にリアルで、そして根深い問題を含んだご相談をいただきました。
・特定のコーチが、保護者との馴れ合いからチームを私物化しているように見える
・試合の選手起用が、勝利を優先するあまり育成の視点を欠いている
・リーダーであるはずの監督が機能せず、チームの空気がおかしい
このような問題、結構質問が届く内容です。
一見、特定の個人の問題に見えるかもしれませんが、実はその背景には「組織の構造的な欠陥」が隠れていることが少なくありません。
この記事では、いただいたご相談を元に、なぜこのような問題が育成年代のスポーツ現場で起きてしまうのか、そのメカニズムを組織論の視点から紐解き、僕たち指導者がどう向き合っていくべきか、僕自身の経験も踏まえてお話しします。
この記事を読めば、あなたが今感じているチームへの違和感の正体がわかり、理不尽な状況に振り回されず、指導者として自分の軸を保つためのヒントが得られるはずです。
少し重たいテーマかもしれませんが、すべての指導者にとって非常に重要な内容だと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
※【注意!】この記事は特定の人物を批判するものではなく、あくまで一般的に起こりうる組織構造の問題について考えることを目的としています。
読者の方からのご相談(要約)
小学生のチームでコーチを始めましたが、特定のコーチ(40代)が試合後に急にバーベキューや反省会を企画したり、保護者を呼び捨てにしたりと、勘違いした振る舞いが目立ちます。
70代の監督は何も注意できず、他の保護者も問題視していないようです。そのコーチと仲の良い父親が指導に口出ししてくることもあります。
勝ちたい試合では、戦力にならない6年生をほとんど使わないなど、選手起用にも疑問を感じています。この状況に強い違和感を持っていますが、どうすれば良いのでしょうか。
ご質問ありがとうございます。
この内容は、多くのチームが抱える可能性のある、非常に根深い問題だと感じました。
これは単に「困ったコーチがいる」という話ではなく、チームという「組織」がどう機能不全に陥っていくか、その典型的なプロセスを示しているように思います。
ここからは、僕の指導経験と、これまで見てきた様々なチームの事例を踏まえながら、この問題の本質に迫っていきたいと思います。
1. その違和感、間違っていません。それは「組織崩壊のサイン」です。

まず、大前提としてお伝えしたいのは、ご質問者さんが感じている「違和感」は、指導者として非常に健全で、正しい感覚だということです。
文面から察するに、このチームはすでに組織として健全な状態ではなく、特定の個人の「空気感」によって支配され始めている危険な状態にあると言えます。
① 声の大きい人が「ルール」になる恐怖
なぜ、このような状況が生まれてしまうのか。
スポーツの現場、特に少年団や地域のクラブでは、明確なリーダーシップが不在だったり、年功序列や馴れ合いが優先されたりする環境が生まれがちです。
今回のケースで言えば、70代の監督がリーダーとして機能しておらず、そこに生まれた「権力の空白」に、声が大きく、積極的に動く40代のコーチが入り込んでしまった、という構図が見て取れます。
こうなると、チームの公式なルールや方針よりも、そのコーチが作り出す「空気」や「非公式なルール」が優先されるようになります。
・試合後に急な反省会を強いる → 選手の生活や家庭の時間を奪う
・保護者と馴れ合う → 公私混同の人間関係で影響力を行使する
・仲の良い保護者が指導に口を出す → 非公式な権力構造の形成
これらはすべて、チームを私物化し、健全な組織運営を破壊していく危険な兆候です。
② 正しい意見が言えなくなる「同調圧力」
このような「空気」が支配する組織で最も怖いのは、正しい意見を言う人が孤立してしまうことです。
「バーベキューは、各家庭の都合もあるので事前に計画しませんか?」
「試合に出られない選手のケアも必要ではないですか?」
こうした当たり前の意見さえも、「空気が読めない」「和を乱す」と見なされ、異端者扱いされてしまう。
他の保護者の方々が「子どもは(そのコーチを)嫌いとは言っていない」と言うのも、この同調圧力の表れかもしれません。
本当は違和感を持っていても、波風を立てたくない、自分の子どもが不利益を被るのが怖い、という心理が働き、見て見ぬふりをしてしまうのです。
これは、指導現場で起こる体罰問題と全く同じ構造です。
周りは「おかしい」と気づいていながら、誰も止められない。その結果、悪い文化が固定化され、負の連鎖が続いていくのです。
なぜ、このような指導者が生まれてしまうのか。
そして、もしあなたが同じような状況に直面した時、どう考え、どう行動すべきかについて、僕自身の哲学も交えながら、より深く解説します。