こんにちは、講師のカズです。
この記事ではトレーニングのメソッド=教授法におけるグローバルトレーニングについて解説します。
動画で解説
グローバルトレーニングという練習方法をご存知でしょうか。
詳しく言うと「ゲームモデルと関連しない普遍的なトレーニング方法」というものですが、それだと何のことか分からないので今回詳しく解説します。
サッカーの練習方法における基本的なものなのでしっかりと理解して、ジュニア年代の指導現場でも実践してみてください。
1. サッカーの練習方法は3種類ある

僕がスペイン・バルセロナのコーチングスクールで学んだ授業の中には3つのトレーニング方法がありました。
1.アナリティコ(日本でいうドリル)
2.グローバル
3.システミコ
アナリティコとは日本でいうドリルトレーニングで、システミコとはゲームモデルが含まれた練習方法。
今回は『②のグローバルトレーニング』について。
スペインではほとんどがグローバルトレーニングで練習している、という話も聞きますね。
この3つの練習方法は小学生年代でもコーチが知っておくべき項目なのでしっかりと理解しておきましょう。
2. グローバルトレーニングとは
① 味方や敵がいて状況判断を伴うトレーニング
グローバルトレーニングとは何かというと、味方や敵がいて状況判断を伴うトレーニングと言えます。
サッカーは必ず状況判断を伴うスポーツだから、味方や敵がいないドリルトレーニングではなくて、グローバルトレーニングを行うべきだ、というのも納得ですね。
例えば以下のような3対3+1フリーマンのボールポゼッション。

下の図のようなミニゲーム形式など。

これらはグローバルトレーニングに含まれます。
見ての通り、味方や敵がいて状況判断が伴う練習方法ですね。
② 普遍的な戦術を学べる練習方法
普遍的な戦術とは難しい表現ですがチーム特有のゲームモデルによらない、サッカーの基本的な戦術と理解してもらえればOKです。
どんなゲームモデルでも必要となる戦術コンセプト。
戦術コンセプトってなに?という方は別記事を参照してください。
テクニックスキルの反復性は低いですが、戦術的な判断をしながらプレーするのが特徴です。
③ 実践的なテクニックを磨くことも可能
より厳密に言えば、グローバルトレーニングでテクニックスキルを上げることも可能です。
例えば4対2のロンド(鬼回し)をイメージしてください。

これは戦術の基本的なサポートのトレーニングとも言えますが、僕はサポートの練習にはならないと考えています。
それよりもコントロール&パスの実践的なテクニック練習と位置付けています。
※考え方はどっちでもいいですね。
このように人数やスペースが狭くなるとテクニックを発揮する反復性が高まり、ドリルトレーニングとは違う形でテクニックを向上させることができます。
3. グローバルトレーニングの特徴
① 基本的な特徴
グローバルトレーニングの特徴をいくつか。
・ゲームモデルと関係性がない
・対戦相手のシチュエーションや文脈がない
・試合の文脈によらない戦術の側面を改善できる
・複雑な状況判断がある
・メニューによってはテクニックの反復性は低い
ざっとこんな感じです。
僕の場合はジュニア年代の指導において、テクニックレベルがまだぼくの基準より低い場合にはアナリティコを多く行い、基準をある程度満たしているグループではグローバルを中心にメニューを組みます。
サッカーはサッカーをすることで上手くなるから、全てグローバルだ!という考えもありますので、自分に合った方法、考え方を持つことが大事ですね。
② ゲームモデルと関係しない
グローバルトレーニングとアナリティコの違いは、みなさん明確に分かると思います。
では、グローバルトレーニングとシステミコの違いは何かと言うと「ゲームモデルと関係ないのがグローバル」という部分です。
システミコの特徴は別記事で解説します。
グローバルトレーニングでは自チームのゲームモデルのプレー原則やシステムと関連せず、あくまで全てのサッカーに共通の、つまり普遍的な戦術や判断を含んだ練習方法だと言えます。
簡単に言えばグローバルトレーニングにゲームモデルの要素が加わればシステミコになる、というものです。
4. 小学生年代に適した練習方法とは

グローバルトレーニングでは普遍的な戦術やテクニックアクションが必要になるため、小学生年代に適した練習方法であると言えます。
が、これはチームの文脈によるところが実際多いですね。
あくまで方法論なので、自チームに適した方法論を活用しましょう。
① 実際の指導ケース
僕の場合、テクニックレベルが問題で試合が上手くいかないと判断すればアナリティコを多めに。
テクニックは問題ない、時期的にも時間があって普遍的な戦術をもっと浸透させたい場合にはグローバルトレーニングを中心に。
早くゲームモデルを浸透させたい場合にはシステミコの割合を増やす。
先にシステミコでプレー原則を浸透させたてから、グローバルトレーニングで判断をさせる、ということもやります。
以前担当したU-13(中学1年生)ではほとんどグローバルと少しのシステミコ。
現在担当しているU-9(小学3年生)はほとんどアナリティコでU-11(小学5年生)は大会まで時間があるので7割がアナリティコで3割がグローバル。
ゲームモデルは練習試合で調整という形をとっています。
大会が近づけばシステミコを増やす。
結局のところ、やはりチームの状態や目指すべき方向、レベルや時間を加味して方法論を選ぶ必要があります。
5. まとめ
◾️グローバルトレーニングとは?
・敵や味方がいて、状況判断を伴う「実戦に近い」練習方法。
◾️特徴
・テクニックと戦術を同時に育成できる
・特定のゲームモデルに依存せず、汎用性の高い戦術が身につく
・小学生〜中学生のジュニア年代にも適用可能
◾️アナリティコとの違い
・アナリティコ(ドリル練習)は技術の反復が目的、
・グローバルは「実戦の中で技術を使う力」を育てる。
◾️ジュニア世代での実践ポイント
・まずは簡単な3vs1や4vs2のロンドから導入
・コーチは「判断」を促す声かけを心がける
・週の練習構成で、アナリティコと組み合わせて使うのがおすすめ
◾️具体的な効果
・判断力が高まり、試合でのプレーの質が上がる
・テクニックが“使える技術”として定着する
・練習のインテンシティ(強度)が自然と上がる
今回はグローバルトレーニングについて解説しました。
人数やスペースの設定ではテクニックと判断を同時に伸ばすこともできますし、普遍的な戦術を選手に理解させることもできます。
ぜひそれぞれのトレーニング方法の違いを理解して、皆さんの指導現場で役立てて下さい!