ゲームモデルにおけるプレー原則とは何か【概要と設定方法】解説

こんにちは、講師のカズです。

この記事ではゲームモデルにおけるプレー原則の設定方法について解説します。

プレー原則については以下のような疑問があると思います。

  • プレー原則とは何か
  • プレー原則の設定方法が分からない
  • 普段の練習とプレー原則の関係性は?


ゲームモデルに関心を持つと必ずぶつかるのがプレー原則という言葉です。

プレーの方向性を示すもの、チームとしての決まりごとなど、何となくイメージはできますが具体的にどのようなものか分からないという問題が起こります。

そこで今回はプレー原則の具体的な設定方法をベースに掘り下げてみたいと思います。

プレー原則が理解できると、ゲームモデルの作成の根幹が分かるようになり、なおかつ普段のトレーニングをどのように組むべきかが理解できるようになります。

またジュニア年代におけるゲームモデルのポイントも解説しているので最後まで読んでみてください。

動画で解説

では解説します。

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1.プレー原則の設定方法

①プレー原則とは何か

最初にプレー原則とは何かについてですが簡単に説明すると以下のようになります。

  • 各フェーズにおけるチーム全体の共通認識となるもの
  • 選手全員が優先的に行うプレー
  • 意思決定のガイドライン


少しイメージしにくいですが、もっと噛み砕いて言うと各フェーズにおけるチーム全体の狙い、と考えると理解しやすいですね。

サッカーにおける様々なフェーズでどのような狙いを持ってチーム全体としてプレーするか。
そのためのルール作り、そのためのガイドラインと考えるとイメージしやすいかと思います。

具体的な例を挙げると以下のようになります。

【フェーズ】
サリーダ・デ・バロン(ビルドアップの始まり)〜前進

【目的】
・確実にロング・ショートパスをつなぎ、崩しの状況を作り出す

【プレー原則】
1.ボールホルダーに対してサイド、中央、斜め、遠くにバランスよくポジションをとる

2.相手が前からプレスに来た時は高い位置でパスコースを作りロングパスを狙う

3.DFがブロックを作っている時はショートパスから起点を作る


上記は僕が実際に指導しているジュニア年代のゲームモデルからプレー原則を抜粋したものです。

こんな感じでフェーズにおける目的と、それを達成するため具体的に選手たちが意識するポイントを設定します。

※補足:目的やプレー原則という言葉を「主原則」「準原則」や「コンセプト」「サブコンセプト」と表現する事もできます。また、言葉の階層は考え方によって変わってきても問題ありません。
あくまでも自分がイメージしやすい分類にしましょう。

②全体のコンセプトとプレー原則

プレー原則とはどんなものかが分かったところで補足です。

それはチーム全体のコンセプトとプレー原則とが大きくかけ離れてはいけないという事です。

>>参考:ゲームモデル作成-1【サッカーの方向性を決める】最初のコンセプト


全体のスタイルとして「攻撃的なサッカー」をコンセプトを掲げているのに、プレー原則がそれを実現しないような守備的なものばかりになると矛盾が生じます。

少し難しい表現ですが、コンセプト(概念)とは言葉の階層なので上位にくる言葉や下位にくる言葉どうしの関係性を整理しておかないとわかり難くなります。

③サブフェーズ毎にプレー原則を設定する

先ほどの例のように、各フェーズにおける目的やプレー原則を設定していきます。

僕の場合、サッカーのサブフェーズは11と設定しているのでそれぞれに対して設定します。

  • 組織化された攻撃
    1.ビルドアップの始まり
    2.前進とボール保持
    3.フィニッシュ
  • 攻撃から守備への切り替え
    1.プレッシング
    2.後退(レプリゲ)
    3.プレッシングと後退
  • 組織化された守備
    1.ビルドアップの始まりに対する守備
    2.前進とボール保持に対する守備
    3.フィニッシュに対する守備
  • 守備から攻撃への切り替え
    1.カウンターアタック
    2.組織化された攻撃の始まり


基本的にはこれらの11のサブフェーズに対してそれぞれ設定して行くのですが、ジュニア年代では注意点があります。

それはここまで細かく設定しなくて良いということです。

そもそも8人制サッカーだと3ゾーンが設定しにくいため、僕は攻撃のフェーズを2つにしています。

  • 組織化された攻撃
    1.ビルドアップの始まり〜前進と保持
    2.前進〜フィニッシュ


こんな感じで攻撃においては2つのサブフェーズだと設定する事もできます。
当然守備も同じように2つのサブフェーズになるので、プレー原則を設定する量が減りますね。

またトランジション(切り替え)も含めてどこからどこまでがそのサブフェーズなのかを設定することは不可能ですし、曖昧な部分があります。

特に8人制サッカーでは境界が曖昧になりがちです。

そのため、フェーズやプレー原則という言葉も自分たちが理解しやすいように設定することが大切です。

>>参考:サッカーにおける3つのゾーンを解説【8人制では2つに考える】

2.プレー原則とトレーニング


プレー原則がどういうものか理解できたところで、では実際にトレーニングにおける注意点を見てみましょう。

①プレー原則を無意識レベルへ


もう一度先ほどのプレー原則を見てみます。

  1. ボールホルダーに対してサイド、中央、斜め、遠くにバランスよくポジションをとる
  2. 相手が前からプレスに来た時は高い位置でパスコースを作りロングパスを狙う
  3. DFがブロックを作っている時はショートパスから起点を作る


上記のようなプレー原則を習慣化する=無意識レベルで行えるようにすることがトレーニングのポイントです。

無意識レベルと言うと選手から状況判断を奪ってしまうのではないかという意見もありますが、実際はそうではありません。

状況判断や選択肢の増やし方については、下記の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

>>参考:ジュニアサッカー・状況判断を良くし選択肢を増やす方法

選手は意識しないとできないプレーに関してはスピードが落ち、また判断が鈍くなります。

試合でスピーディーに的確な判断を下すためにはそれを無意識レベルで行える必要があります。

つまり各フェーズにおけるチーム全体のアクションがスムーズになる事を目的として、プレー原則を繰り返しトレーニングするという事です。

②同じシチュエーションで練習しない

チーム全体のアクションをスムーズにする=形にはめるではありません。

あくまでも単一の同じ形を練習するのではなく、同じような文脈の中で応用も含めてプレー原則をトレーニングすることが重要です。

ある特定のシチュエーションにおいて決まったパターンをトレーニングするのではなく、幅のあるシチュエーション(文脈)の中での解決策をトレーニングすることで、結果としてそれがパターンに見えてくることはあります。

これは当然のことで、チームとしての方向性(ガイドライン)を設定しているのでそこに法則性が見えてきます。

イメージとしてはビルドアップのプレー原則を意識しながら、5対5+2フリーマンや6対6、方向性の有無など異なるシチュエーションで同じプレー原則をトレーニングするという感じです。


余談ですがゲーム分析する時にも、相手のプレー原則を探ることは有効ですね。

実際に相手が設定していることなので正しくは分かりませんが、それによりどのような法則性を持ってプレーしているか、アクションの発動条件は何かなど分析することも可能です。

3.ジュニア年代におけるポイント

①プレー原則設定のポイント

ジュニア年代でゲームモデル、プレー原則を設定するにはいくつか注意点があります。

  • あまり多く設定しない
  • サブフェーズを大まかに捉える
  • レベル的に実現可能かを見極める


1つずつ簡単に説明します。

あまり多く設定しない

ジュニア年代の子どもたちは、まだまだ戦術の知識が足りません。
また、一度に多くのことを要求すると混乱する可能性がありますし、頭に負荷がかかってしまいプレーがスムーズに行えません。

プレー原則を増やすにしても段階毎に追加することがポイントです。

サブフェーズを大まかに捉える

先に書きましたが、細かくフェーズ設定すると現実的ではない現象が起こります。

しかし反対にサブフェーズを設定せず、4つの局面だけで設定しようとするとあまりにも大雑把になりすぎてそれも問題が起こります。

関連するサブフェーズを合わせるなどして、大まかに捉えましょう。

それによりプレー原則を少なめに設定することにもつながります。

レベル的に実現可能かを見極める

例えばビルドアップに関してショートとロングを使い分けるように設定した時、そもそもロングパスがフォワードへ蹴れなければ実現できません。

現在の選手たちのレベルに合ったものかどうかを見極める必要がありますね。

理想だけではなく、現実的に到達可能なものでなければ意味がなくなってしまいます。

②ジュニア年代では原理原則を意識する

もう1つ注意すべき点は、育成年代、特にジュニア年代ではサッカーの原理原則を基にしながらプレー原則を落とし込むというものです。

伝えるニュアンスが難しいのですが、先ほどのプレー原則から考えると、ポジショニングの基準やサポートの仕方をサッカーの原理原則を理解させながらプレーさせるということ。

ビルドアップでも「いつセンターバックはドリブルを行い、いつサイドにパスをつけるか」などはプレー原則ではなくサッカーの原理原則と関わってきます。

この辺の指導の仕方を間違うと、プレー原則にとらわれすぎて判断をミスる現象や、選手が型にハマってプレーしているように見えてきます。

また僕ら指導者もゲームモデル通りにプレーすることを求めすぎるために、その選手が本来持っている良さを消してしまうことがあるので注意が必要です。

4.まとめ:あくまでもガイドライン

今回はゲームモデルにおけるプレー原則について解説しました。

注意すべき点は、ゲームモデルやプレー原則はあくまでもプレーのガイドラインであり、それを持って選手のプレーを助けるものです。

もしゲームモデルやプレー原則を設定することによって選手がプレーしにくいと感じたり、選手の良さが消えてしまうことがある場合はコーチングの方法や伝え方も一緒に見直しましょう。

あくまでも選手の状況判断を助け、チーム全体のプレーに一体感を与え、そして個人の良さを引き出すためプレー原則を設定します。

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