こんにちは、講師のカズです。
今回は、保護者の方から寄せられた「リフティングがなかなか上達しないお子さんへの関わり方」というご質問にお答えしたいと思います。
「うちの子、サッカーを始めて1年経つのですが、リフティングが全然上手くならなくて…周りの子との差も開いてきて、親としてどう声をかけたらいいのか、何ができるのか悩んでいます。」
このような悩みは、お子さんが一生懸命努力している姿を見ているからこそ、保護者として非常にリアルに感じることだと思います。
僕自身も指導現場で、結果がすぐには出なくても、黙々と努力を続ける子どもたちにどう寄り添い、その頑張りをどうサポートしていくべきか、常に考えてきました。
しかし、以下のような疑問を持つ指導者や保護者の方も多いのではないでしょうか。
・なぜ、あんなに練習しているのにリフティングの回数が増えないのだろう?
・親やコーチとして、どんな言葉をかければ子どものやる気を引き出せるのだろうか?
・努力しているプロセスを、どう評価し、次につなげてあげれば良いのだろうか?
この記事では、リフティングがなかなか上達しない背景にあるかもしれないいくつかの理由と、そんな時に親や指導者としてできる「見守る」関わり方、そして子どもの「内発的動機」を大切に育てるためのヒントについて、僕の経験を踏まえながら具体的にお話ししていきます。
この記事を最後まで読んでいただければ、努力を続ける子どもたちに対して、私たちがどのような視点を持ち、どんな言葉をかけ、どう関わっていけば彼らの成長を本当に支えることができるのか、そのヒントが見えてくると思います。
1. リフティングが上達しない子へのアプローチ

まず、リフティングがなかなか上手くならない、回数が増えないという状況に対して、僕が指導現場で感じていることや、試しているアプローチについてお話しします。
① 成長はまっすぐじゃない:“非線形”の理解
子どもの成長って、一直線に右肩上がりになることは稀で、むしろ停滞しているように見えても、ある日突然グンと伸びることがよくあります。
これが「成長の非線形性」というやつですね。
リフティングもまさにそうで、「コツコツ続けていれば、ある日突然できるようになる」瞬間が訪れることがあります。
僕の指導経験の中でも、ずっとリフティングが7回くらいしか続かなかった子が、ある練習の日に突然30回以上できるようになった、なんてこともありました。
その子自身も驚いていましたが、それまでの地道な努力が、見えないところで積み重なっていたんですね。
だから、今すぐに結果が出なくても、続けることには大きな価値があると思っています。
② フォームを見直すと、意外な発見があるかも
もし、どうしても回数が増えないという場合は、一度フォームを見直してみるのも良いかもしれません。
特にジュニア年代の子どもたちの場合、無意識のうちに効率の悪い蹴り方をしていることがあります。
例えば、
・足首が固定されず、ボールを蹴る瞬間に足首が返ってしまっている。
・ボールとの距離が近すぎて、窮屈な体勢(猫背気味)で蹴っている。
こういったケースでは、ほんの少し意識を変えるだけで改善されることがあります。
例えば、体を少し起こしてボールとの距離を適切に保つようにアドバイスするだけでも、ボールコントロールの感覚が変わることがあります。
親子で一緒に動画を撮って、客観的にフォームを確認してみるのも、新しい発見につながるかもしれません。
③ 「外的フォーカス」で自然なフォームを引き出す
「足首の角度はこう!」「膝の使い方はこう!」と細かく体の使い方を指示する「内的フォーカス」よりも、ボールや目標物に意識を向けさせる「外的フォーカス」の方が、子どもたちは自然と良いフォームを身につけやすいことがあります。
リフティングで言えば、「毎回、ボールを自分の顔の高さまで上げてみよう」と声をかける。
たったこれだけでも、ボールをコントロールするために必要な体の使い方を、子ども自身が工夫し始めることがあります。
これは、エコロジカルアプローチの考え方にも通じるもので、指導現場でもよく使うアプローチの一つです。

2. 子どもの「努力」そのものに価値を見出す

リフティングの回数という「結果」も気になるところですが、それ以上に僕が大切にしているのは、そこに至るまでの「努力のプロセス」です。
① 結果よりも「どれだけ頑張ったか」を評価する
リフティングが10回しかできなくても、その子が自分なりに一生懸命練習した結果なのであれば、その努力は十分に価値があります。
逆に、才能があって少し練習しただけで100回できてしまう子よりも、不器用でも諦めずに努力を続ける子の方が、長い目で見ると大きく成長する可能性を秘めていると僕は感じています。
だからこそ、保護者の方や指導者には、目に見える結果だけでなく、その背景にある子どもの頑張りや試行錯誤のプロセスをしっかりと見て、認めてあげてほしいと思います。
「今日は何回できた?」という結果確認だけでなく、「昨日より集中して練習できていたね」「新しい蹴り方にチャレンジしていたね」といった、過程に目を向けた声かけが、子どものモチベーションを支えることもあります。

上記の記事は、過去に書いたものですが、参考に。
※現在は、また違う角度からリフティングついて考えていますが、それについては別記事で書きます。
② 「モデリング効果」で上達のヒントを見つける
「上手な子の真似をする」というのは、どんなスキル習得においても有効な学習方法の一つです。
これを「モデリング効果」と言います。
例えば、
・リフティングが上手な選手の動画を一緒に見て、どんな体の使い方をしているか観察する。
・自分自身のリフティングの様子を動画で撮影し、上手な選手と比較してみる。
・上手な選手の動きを真似しながら、もう一度動画を撮って自分の動きを確認する。
この「見る→比較する→真似る→確認する」というサイクルを繰り返すことで、子どもは自分自身で課題点や改善のヒントに気づきやすくなります。
親や指導者が細かく指示するのではなく、子ども自身が発見するプロセスを大切にしたいですね。

3. 親や指導者にできる「見守る」という関わり方

子どもが何かに一生懸命取り組んでいる時、親や指導者として「何かしてあげたい」と思うのは自然な感情です。
しかし、時には「何もしないで見守る」ことが、最大のサポートになることもあります。
① 「見守る力」こそが、本当のサポートかもしれない
「干渉しすぎず、でも放任でもない」。このバランスは本当に難しいと感じます。
僕自身、指導現場で子どもたちが一生懸命何かにチャレンジしている姿を見たとき、つい口を挟みたくなるときもありますが、ぐっと堪えて見守るようにしています。
そして、練習が終わった後に「結果がどうであれ、今日の練習で諦めずにチャレンジし続けたことが一番大事だよ」と伝える。
結果ではなく、そのプロセス自体に価値があることを繰り返し伝えています。
② 「今、本当に手を出すべきか?」を考える
子どもが壁にぶつかっている時、その壁を子ども自身の力で乗り越えられそうなのか、それとも本当に助けが必要なのかを見極めることが、親や指導者の大切な役割だと思います。
・自力で乗り越えられそうな壁であれば、余計な手出しはせず、そっと見守る。
・どうしても自力では難しい壁であれば、ヒントを与えたり、一緒に考えるスタンスで手を差し伸べる。
この見極めが、子どもの自立心を育む上で非常に重要になってくると感じています。
③ 子どもの「やりたい」気持ちを尊重する(内発的動機づけ)
結局のところ、子どもが「うまくなりたい!」「もっとできるようになりたい!」と心から思えるかどうかが、成長の最大の原動力になります。これが「内発的動機づけ」ですね。
「リフティング100回できたら、おもちゃを買ってあげる」といった「外的動機づけ」は、一時的な効果はあるかもしれませんが、サッカーを続ける本質的な理由にはなりにくいものです。
ご質問のお子さんのように、自ら努力を続けているのであれば、その「やりたい」という気持ち、つまり内発的な動機を何よりも大切にしてあげてほしいと思います。
親や指導者の役割は、その小さな炎を消さないように、温かく見守り、時には励まし、そっと背中を押してあげることではないでしょうか。


まとめ
この記事では、「リフティングが上達しないお子さんへの関わり方」というテーマで、僕なりの考えやアプローチをお話しさせていただきました。
最後に、大切なポイントをもう一度整理します。
・子どもの成長は一直線ではない。焦らず、長い目で見守ることが大切。
・リフティングのフォームやボールとの距離感など、基本的な部分を見直すと改善のヒントが見つかることも。
・「外的フォーカス」を意識した声かけで、子ども自身が体の使い方を工夫できるように促す。
・結果だけでなく、努力のプロセスそのものを評価し、認めてあげる。
・上手な選手の動きを真似る「モデリング効果」も有効な学習方法の一つ。
・親や指導者の役割は、干渉しすぎず、でも放任でもない「見守る力」が重要。
・子どもの「やりたい」という内発的動機づけを尊重し、サポートする姿勢が大切。
サッカーの技術習得はもちろん大切ですが、それ以上に、努力することの尊さや、目標に向かって試行錯誤する経験そのものが、子どもたちの将来にとって大きな財産になると僕は信じています。
この記事が、指導者や保護者の皆さんにとって、お子さんとの関わり方を見つめ直す、何か少しでもヒントになれば嬉しいです。
皆さんの指導現場やお子さんとの日常で、ぜひ試してみてください!