こんにちは、講師のカズです。
ジュニア年代のサッカー指導では、チームのプレイモデル(ゲームモデル)をどう設計するかが、選手の成長を大きく左右すると感じています。
プレイモデルというと難しく聞こえるかもしれませんが、要するに「そのチームが戦術的にどう戦うか」という設計図のことです。
ただ、この設計図を「監督がやりたいサッカー」だけで作ってしまうと、せっかくの選手の良さが消えてしまうことがよくあります。
僕自身、スペインから帰国したばかりの頃は、プレイモデルをかなり細かく作り込んでいて、うまくいかないと、さらに細かく修正する、ということを繰り返していました。
今振り返ると、選手の良さよりも自分のアイディアを優先していたなと思うことがあります。
過去の僕と同じように、以下のような悩みを持つ指導者の方も多いのではないでしょうか。
・毎年似たようなサッカーになってしまい、選手が伸び悩んでいる気がする
・伝えたいことが、選手になかなか伝わらない
・選手の良さを引き出せているのか、自分の指導に自信が持てない
この記事では、プレイモデルを「監督のアイディア」と「選手のキャラクター」という2つの軸から整理し、育成年代でどちらを起点にすべきかを、僕の現場での経験も交えて解説します。
読み終える頃には、明日からの選手の見え方が少し変わってくると思いますので、最後までご覧ください。
音声で解説
1.プレイモデルは何で決まるのか

①監督のプレイアイディアという要素
プレイモデルには、いくつかの要素があります。
まずわかりやすいのが、監督のプレイアイディアです。
そのチームを率いる監督・コーチが、どういうサッカーを好み、どんなプレイのアイディアを持っているか。
これは確かに大切な要素の一つです。
シーズン前に一度、自分なりのプレイモデルを言語化してみると、自分がどんなサッカーをしたいのかがはっきりしてくると思います。
②もう一つの軸、選手のキャラクター
ただ、本来のプレイモデルは、監督のアイディアだけで決まるものではありません。
育成年代において、同じくらい、僕の場合はそれ以上に重要なのが、チームにいる選手のキャラクターです。
今いる選手がどんなプレイを得意とし、どんな特徴を持っているか。
これがプレイモデルを決めると言っても言い過ぎではないと思っています。
クラブの文化や地域性も要素にはありますが、現場で一番効いてくるのは、監督のアイディアと選手のキャラクター、この2つだと感じています。
③日本の育成は監督のアイディアに偏りやすい
日本の育成年代、特にジュニアやジュニアユースを見ていると、監督のプレイアイディアの影響がとても強いなと感じることがあります。
実際、過去に別のカテゴリーの試合を観に行ったときも、「このチームは毎年同じサッカーをしているな」と感じる場面がありました。
毎年フォーメーションも展開も似ているということは、選手が変わってもプレイモデルが変わっていない、つまり監督のアイディアが基準になっている可能性が高いと思います。
2.監督のアイディアが強すぎると起こること

①「できないこと探し」になってしまう
監督のアイディアが8割、9割を占めるプレイモデルになると、選手の評価の仕方が変わってきます。
「このポジションでこういうプレイをしてほしい」という基準が先にあるので、それに合わない選手を見たときに、「テクニックが足りないのかな」「周りが見えていないのかな」と、できない部分ばかりが気になってしまいます。
気づくと、選手の良さよりも、苦手なところを探す指導になっていることがあります。
②選手が叱られ、息苦しくなる
プレイモデルが監督のアイディアに寄っているチームほど、選手が叱られている場面が多いように感じることがあります。
先日もある試合で、「今のはなぜそうしないんだ」と指摘される場面を見て、監督のアイディアにそぐわないプレイだったのだろうな、と感じました。
真面目な選手ほど「言われた通りにやらないと」と考えてしまい、自分の良さが出せず、苦しくなっていくことがあると思います。
③矯正ではなく、良さを伸ばすという発想
選手が本来やりたいプレイとは違うことを求め続けると、それは「矯正」に近くなります。
もともとの形を無理に変えていくイメージです。
選手がもともと持っている「良さ」を引き出すよりも、監督のアイデアに合うように矯正される。
こうなると、同じような選手ばかりになってしまう可能性もあります。
一方で、「この選手はこういう部分が良い」「この特徴を、このポジションやタスクで生かせないか」と見ていくと、同じ選手でもまったく違う可能性が見えてきます。
どちらが育成年代に向いているかというと、僕は後者だと考えています。
3.選手のキャラクターを起点にする育成

①「もともと持っているプレイ」を探る
僕が育成で大切にしているのは、「その選手がそもそも持っているプレイは何か」を探ることです。
これは、僕らが特別に教えたわけでもないのに、選手が自然とやってしまうプレイのことです。
今はキンダーの年代も見ていますが、小さい子でもなんとなく見えますし、小学校3〜4年生、中学生になるとはっきり見えてきます。
この自然とできるプレイこそが、その選手のキャラクターだと思います。
②自己決定論と内発的動機づけ
選手のキャラクターを起点にすると、選手は主体的に取り組み、サッカーを楽しんでくれることが多いです。
これは自己決定論、つまり「自分で自分の行動を選んでいる感覚」と関係していると考えています。
宿題でも、自分でやろうと決めて始めるのと、親に言われて渋々始めるのとでは、動機づけがまったく違います。
サッカーでも、すべて指示されると自分でコントロールしている感覚がなくなり、やる気が下がっていくことがあります。
選手が自分で選び、取り組める環境をつくることが、内発的動機づけや主体性につながると思います。
③30年やってきて見えてきたこと
恥ずかしながら、僕も昔は監督のアイディアに固執した指導をしていて、その頃の選手は本当の意味では伸びにくかったように思います。
ここ数年、エコロジカルアプローチや複雑系の考え方で取り組むようになってから、プレイモデルの見え方そのものが変わり、選手が生き生きとして伸びていくのを現場で感じるようになりました。
30年かけて、やっと自分が進むべき指導のあり方が少し見えてきたかな、と思うことがあります。
まとめ
今回のポイントを整理しておきます。
・プレイモデルは「監督のアイディア」と「選手のキャラクター」の2つの軸で考える
・監督のアイディアが強すぎると、できないこと探しや矯正になりやすい
・育成年代では、選手がもともと持っている良さを起点にする方が伸びやすい
・自分で選び取り組める環境が、内発的動機づけと主体性につながる
この記事では、育成年代におけるプレイモデルと選手のキャラクターの関係について解説しました。
プロのトップレベルのチームのように、やりたいサッカーに合わせて選手を集められるわけではないのが育成現場です。
まずは目の前の選手のキャラクターを見てから、プレイモデルを考えてみてください。
選手の見え方が変わり、指導が少し楽になると思いますので、皆さんの指導現場でも試してみてください!
