こんにちは、講師のカズです。
この記事ではサッカーにおけるインテンシティの概要とジュニア年代の指導の注意点について解説します。
・インテンシティとは何か?
・どうしたらインテンシティは上がる?
・どうやってインテンシティを調整する?
僕がバルセロナにサッカーコーチ留学した時に強く印象を受けたものの一つに、スペインサッカーはインテンシティが高いということが挙げられます。
特に守備での1対1やプレスの強さや速さ、そして攻撃のスピードの速さは日本との違いを感じました。
今回は日本でおもにプレー強度と訳されるインテンシティについて、戦術面と絡めて、そしてジュニア年代の指導に関係する要素も含めて解説します。
動画で解説
1.インテンシティの高さは考えることに関係する
ここ数年で普及したインテンシティという言葉を日本では「プレー強度」と一般的に訳しています。
「プレー強度」が何を意味するかというと以下の通りです。
(一般的)激しさ、強烈さ、強さ
(守備)あたりの強さ、プレスの速さ、球際の強さ
(攻撃)ボールの動かし方の速さ(パスワーク)、攻撃の鋭さ
こう考えるとインテンシティとはプレーの強さや速さと言えますが、実はこのインテンシティが高い・低いには『考える』という要素が大きく影響しています。
単純に言うと「迷いながらの動き」には「いくつかある選択肢の中からどれを選ぼうか?」としている状況なので動きが遅くなる。
また「どうしていいか分からない」といった状況でも当然動きは遅くなりますよね。
当然インテンシティが下がると守備でも攻撃でも相手を圧倒することができず試合を有利に運ぶことができません。
これを僕は『戦術的な負荷がかかっている状態』と呼んでいます。
つまり「何も考えていないとインテンシティは上がり」反対に「戦術的な負荷がかかっているとインテンシティは下がる」ということになります。
では、戦術的負荷とはどのようなものでしょうか?
2.戦術的負荷とは何か?
戦術的負荷がかかっているとはその言葉のとおり「戦術的な要素が選手に負荷を与えている」状態。
例えば守備の状況で「マークしている相手にボールが出たら素早くプレスに行くが、同時に他のパスコースを切らないといけない。
ただタイミングが遅くなったらスペースのケアを意識して、なおかつ2列目から飛び出してくる選手のケアも考える」
このように考える要素が多くそれを無意識に実行できないレベルだとすると、常にいろんな要素を「考えながらプレーする」必要があります。
もしほとんどサッカー経験がない選手にこのような複数のタスクを与えると、めまぐるしく状況が変わる中では上手く反応できません。
つまり「戦術的な負荷=戦術的に考える要素」が多すぎて動きが遅くなります。
これは攻撃面でも同じで、選手が「意識しないとできない戦術的なタスクが多い」とプレーに迷いが出たり、判断が遅くなり結果としてプレー強度、インテンシティが下がります。
※「戦術的負荷」以外にもインテンシティが下がる原因として、コンディションやメンタルの要因もあります。
3.考える要素を減らす2つの方法
考える要素が増えるとインテンシティが下がる場合、反対に言うと「インテンシティを上げたいなら考える要素を減らす」と表現できます。
この方法には2つあります。
・単純に戦術的なタスクを減らす
・戦術的なタスクを無意識で実行できるレベルに引き上げる
それぞれ解説します。
①戦術的なタスクを減らす
タスクを減らす作業は、試合中などに選手が迷いながらプレーしている時、やるべきことを明確化することで選択肢が減りポイントが絞られます。
つまり考える要素を減らすことでインテンシティを上げます。
どちらかというとサッカーコーチとしては、試合中に臨機応変に対応するために必要なアドバイスになりますね。
②タスクを無意識で実行できるレベルに引き上げる
無意識で実行できるレベルに引き上げることは、日々のトレーニングで行うものです。
トレーニングの中で選手にいくつかのタスクを与え、それが無意識でできるまで繰り返す。
そうすると無意識でできることは「考えていないことと同じ」なので「複数のタスクを抱えながら」もインテンシティを高く保つことができます。
このような考えはゲームモデルにおけるプレー原則と関係します。
>>参考:ゲームモデル作成-2【各フェーズ毎のプレー原則】設定方法を解説
当然選手のレベルアップには②の方が有効で、その積み上げによって「状況に応じたプレーができる選手」へと成長します。
4.ジュニア年代の課題
地域や学年によって違いはありますが、ジュニア年代では「インテンシティだけに頼ったプレー」が多く見られる傾向があります。
例えば小学3,4年生くらいなら守備のインテンシティをひたすら上げるだけでボールを奪いやすくなります。
当然守備において「プレー強度が高い」ことは必須で、最低条件なので問題ないですが、それだけを高学年まで継続して行くと、サッカーにおける重要な要素である「戦術を学ばない」ことにつながります。
このような守備の仕方は相手のレベルが上がると無効化します。
プレッシング方法やカバーリング、スタートポジションやゾーンでのマークなどの「守備の戦術」を実行できないレベルだと、相手がテクニックもありなおかつオーガナイズされた攻撃をする場合、「インテンシティの高さだけの守備」では対応できなくなります。
選手のレベルや学年が上がるにつれて、その年代で必要な、もしくは理解し実践できる戦術を教えて行くことはサッカーコーチとして重要なポイントです。
5.指導方法の注意点
では実際の指導現場において、僕ら指導者はどのようにアプローチするべきでしょうか?
僕が経験したいくつかの留意点をピックアップします。
・戦術的な要素を学ばせる時は以下の2つを考慮する
・所属するリーグや地域で試合中に必要なものか
・年齢やレベルに適切で選手が練習すれば獲得できるスキルか
・初めての戦術的なタスクはインテンシティが下がるが継続して行う
・トレーニング全体のインテンシティが下がりすぎる場合はタスクを減らす
・選手個々のレベルに応じてタスクを変える
・新たなタスクは「選手が少し頑張ったらできるレベル」を設定する
・できるようになったから次に進むという積み上げ方式の難しさは、次のタスクを与えると以前のタスクができなくなるといった現象を考慮しておく
・その場合は選手に責任はなく、どこまで習慣化(無意識)されているかを見直す
以上が注意点です。
6.まとめ
今回はインテンシティの概要と戦術的負荷との関係性、調整の仕方やジュニア年代の問題点などについて解説しました。
インテンシティとはサッカーにおいて「必ず必要な要素」です。
僕が指導現場で実践する日々のトレーニングの中でも「まずは練習のインテンシティを下げない」というのは毎回意識するところです。
よく間違うのは、インテンシティが低い中でプレーしているから上手くいっていると思い、実際の試合では全くプレーできなくなること。
そうすると、そもそも練習の強度が低いので指導者は注意が必要です。
常に「試合と同じようなインテンシティの中でトレーニングを行なっているか」といった視点を持つことが大切です。