こんにちは、講師のカズです。
この記事では、サッカー指導における「練習のテンポ」という、僕が非常にこだわっている部分について解説したいと思います。
練習のテンポが悪いと、子どもたちの集中力は驚くほど簡単に途切れてしまいます。
そして、その原因のほとんどは、実は指導者側にあるのではないかと、僕は長年の指導経験から感じています。
・うちの選手たちは、どうも練習に集中できていない…
・練習がグダグダになりがちで、どう改善したらいいか分からない
・選手の集中力を高める具体的な方法が知りたい
このような悩みを持つ指導者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、なぜ練習のテンポが重要なのか、そして具体的にどのような行動が選手の集中力を奪ってしまうのか、僕自身の経験や観察から得たリアルな視点でお伝えします。
この記事を読めば、明日からの練習が劇的に変わるヒントが見つかると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
1. 練習のテンポが悪いとなぜダメなのか?

① 子どもたちの集中力が低下する
練習のテンポが悪い、つまり練習がスムーズに進まず途中で間延びしたり、中断したりすると、子どもたちの集中力はあっという間に切れてしまいます。
これは小学生であっても中学生であっても同じです。
もちろん、年齢が低いほど、またサッカーへの興味がまだそれほど高くない選手ほど、その傾向は顕著になります。
練習がダラダラと進んでしまうと、子どもたちは手持ち無沙汰になり、おしゃべりを始めたり、関係のないことをし始めたりします。
そうなると、いくら良い練習メニューを用意していても、その効果は半減してしまいます。
② 指導者自身が原因を作っている可能性
「うちの選手たちは集中力がない」と嘆く前に、一度指導者自身の練習の進め方を見直してみる必要があるかもしれません。
僕が見てきた多くのケースで、選手の集中力が途切れる原因は、指導者側の準備不足や配慮不足に起因していることが少なくありません。
僕自身も、選手が集中していないと感じた時は、まず自分自身の指導に矢印を向けるようにしています。
「選手が集中しないのは当たり前、どうしたら集中させられるか」を考えるのが指導者の役割だと思います。
③ この問題を甘く見てはいけない理由
選手が集中力を欠いている状態で練習している。
集中していない状態でコーチングする。
一見、よくあるミスのように感じますが、実はこれは後に『メチャクチャ大きな問題』となって指導者に返ってきます。
その辺を深掘りしているので、下記の記事を参考にしてください。

2. 練習のテンポが悪くなる具体的なNG行動と改善策

では、具体的にどのような行動が練習のテンポを悪くし、選手の集中力を奪ってしまうのでしょうか。
僕が日頃から「これはやってはいけない」と感じているNG行動と、その改善策をいくつかご紹介します。
① シュート練習での長い待ち時間
シュート練習は多くの選手が好きなメニューだと思いますが、やり方によっては非常にテンポが悪くなりやすい練習の一つです。
よくあるのが、シュートを打った後、ボールを拾って、また長い列に並ぶというパターン。
この「ボール拾い」と「順番待ち」の時間が長ければ長いほど、選手は暇になり集中力を失います。
改善策:
僕の場合、シュートを打った選手がボールを拾った後、そのまま列に戻すのではなく、例えばドリブルのドリルを行わせながら列に戻るようにします。
そして、列に戻ったらすぐにまた自分のシュートの順番が回ってくるような人数調整や工夫をします。
こうすることで、選手は常に動き続けることになり、集中力を維持しやすくなります。
「早くドリルを終わらせてシュートを打ちたい!」という気持ちにもなります。
意図的にレスト(休憩)の時間を設けるのであれば問題ありませんが、そうでないならば、無駄な待ち時間は極力減らすべきです。
② 練習メニュー間の無駄な時間
一つの練習メニューが終わり、給水タイムを取った後、次の練習メニューがなかなか始まらない…これもよくあるテンポを悪くする原因です。選手たちは一度途切れた集中力を再び高めるのに苦労しますし、指導者もその間に選手の気持ちを引き戻すのに余計なエネルギーを使うことになります。
改善策:
給水は短時間で済ませ、すぐに次のメニューを開始できるように、事前に準備を徹底しておくことが大切です。
マーカーやコーンの配置、ボールの準備などをスムーズに行えるように段取りしておきましょう。
③ マーカーの色の工夫不足
例えば、コートを4つ作って同時にロンド(ボール回し)を行うとします。その際に、4つのグリッド(コート)全てを同じ色のマーカーで作ってしまうと、選手たちはどのグリッドが自分たちのエリアなのか一瞬戸惑うことがあります。
「ここが1つのグリッド?」「あっち?」といった混乱が生まれ、練習の開始が遅れたり、スムーズさを欠いたりします。
改善策
マーカーの色をグリッドごとに変える、もしくは隣り合うグリッドの色を変える(例:黄色と青を交互に使う、対角線で同じ色にするなど)だけで、選手は視覚的に自分のエリアを認識しやすくなります。
ほんの少しの配慮ですが、これで練習の導入が格段にスムーズになります。
④ 予備ボールの置き場所の不備
練習中にボールが外に出た際、すぐに予備のボールを投入できるように準備しておくことは大切ですが、その置き場所が整理されていないと、かえって練習のテンポを悪くすることがあります。
選手が適当にグリッドの周りにボールを置いてしまい、プレーの邪魔になったり、ボール集めに時間がかかったりするのは避けたいところです。
改善策:
例えば、4つのグリッドで練習する場合、その中央に予備のボールをまとめて置いておくように指示します。
「ボールが出たら、あそこから取ってね」と一言伝えるだけで、選手は迷うことなくスムーズに練習を再開できます。
⑤ ビブスの色が分かりにくい
これは初歩的なことかもしれませんが、意外と見落としがちなのがビブスの色です。
例えば、黄緑と黄色のビブスのように、遠目からだと判別しにくい色の組み合わせでゲームを行うと、選手たちは味方と相手を瞬時に区別できず、プレーに迷いが生まれます。
結果として、練習がストップしたり、意図したプレーが出にくくなったりします。
改善策:
誰が見ても明確に区別できる色のビブスを選ぶようにしましょう。
これは、試合形式の練習をスムーズに進めるための基本的な配慮です。
⑥ マーカーを重ねて置く
オーガナイズを作った後、余ったマーカーを片付けるのが面倒で、グリッドのマーカーの上に重ねて置いてしまう…これも避けるべき行動です。
なぜなら、プレー中に選手がその重ねたマーカーを蹴ってしまったり、ボールが当たったりした際に、マーカーが予期せぬ動きをすることがあります。
その一瞬の出来事に選手の集中がそれてしまうのです。
僕が某スペイン系スクールで指導していた時、スペイン人のコーチに「マーカーを2枚重ねて置いてはいけない」と指摘されたことがあります。
1枚ならズレる程度でも、2枚重ねだと弾け飛んで選手の注意を引いてしまうから、というのが理由でした。
プロフェッショナルな指導者は、本当に細部にまでこだわっているのだと感心したことを覚えています。
改善策:
余ったマーカーは必ず所定の場所に戻し、練習エリアは常に整理整頓された状態を保つようにしましょう。
3. 集中力を切らさないための指導者の心構え

① 細部へのこだわりを持つ
ここまで挙げてきた例は、どれも些細なことのように思えるかもしれません。
しかし、こうした細部への配慮の積み重ねが、練習全体のテンポや選手の集中力に大きな影響を与えます。
指導者は、常に「もっと良くできることはないか」という視点を持ち、練習環境の細部にまで気を配る必要があります。
② 常に選手の視点で考える
指導者にとっては当たり前のことでも、選手、特に子どもたちにとっては分かりにくかったり、集中を妨げる要因になったりすることがあります。
常に選手の視点に立ち、「どうすれば選手がもっとプレーに集中できるか」「どうすればもっと練習がスムーズに進むか」を考えることが大切です。
③ 準備を徹底する
質の高い練習を行うためには、事前の準備が何よりも重要です。
練習メニューの意図を明確にし、必要な用具を準備し、スムーズな進行をシミュレーションしておく。
こうした徹底した準備が、当日の練習のテンポ感を生み出し、選手の集中力を高めることに繋がります。
僕自身、指導現場では常に神経を張り巡らせて、少しでもテンポが悪くなる要因があればすぐに改善するようにしています。
これは長年の指導で培われた癖のようなものですが、それだけ練習のテンポは重要だと考えているからです。
まとめ
今回は、選手の集中力を高めるための「練習のテンポ」の重要性と、テンポを悪くしてしまう具体的なNG行動、そしてその改善策についてお話ししました。
最後に要点をまとめておきます。
・練習のテンポが悪いと選手の集中力が低下する。
・集中力が途切れる原因の多くは指導者側の準備不足や配慮不足にある。
・待ち時間を減らす、マーカーの色を工夫する、予備ボールの置き場所を整理するなど、具体的な改善策がある。
・指導者は細部にまでこだわり、常に選手の視点で考え、準備を徹底することが重要。
これらのポイントは、もしかしたら当たり前のことだと感じる方もいるかもしれません。
しかし、この「当たり前」を徹底できるかどうかが、指導の質を大きく左右すると僕は考えています。
皆さんの指導現場でも、ぜひ今日からこれらの点を意識して、練習のテンポアップに取り組んでみてください。
きっと、子どもたちの集中力が変わってくるはずです!