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少年サッカー【状況判断をよくする】選択的注意(心理学)の活用

こんにちは、講師のカズです。

ジュニアサッカーの指導現場で、「ボールを持った選手がなかなか周りを見れていない」「顔は上がっているけれど、効果的なパスやプレーに繋がらない」といった悩みを抱えることがあります。

選手たちに、

・「もっと顔を上げて周りを見よう!」と伝えているけど、なかなかプレーが改善されない…。
・「他に良い選択肢があったんじゃないか?」と後から思うことが多い…。
・そもそも「具体的にどこを見れば良いのか」をどう教えればいいのか分からない…。

こんな風に感じるのは、もしかしたら「見る」ということに対するアプローチが、少し漠然としているからかもしれません。

僕自身も、指導を始めた頃は「とにかく周りを見ろ!」と声をかけるばかりで、選手たちが本当に何を見て、どう判断すれば良いのかを具体的に伝えられていなかった経験があります。

この記事では、選手たちがボールを持った時に、より効果的な判断ができるようになるためのヒントとして、心理学の「選択的注意」という概念をサッカーの指導にどう活かすか、具体的な考え方やアプローチについて解説します。

この記事を読めば、「周りを見る」ことの質を高め、選手の状況判断能力を引き出すための指導のポイントが分かると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

Content

1. 「周りを見る」だけでは不十分?状況判断の優先順位

ジュニア年代の選手たちに「周りを見よう」と伝えることの重要性は、多くの指導者の方が認識していると思います。

しかし、それだけでは選手たちのプレーが劇的に改善されないことも少なくありません。

① 漠然と『周りを見よう』ではなく何を見させるか

「周りを見る」と言っても、ピッチ上には敵、味方、スペースと、非常に多くの情報が存在します。

これら全てを一度に把握し、的確な判断を下すのは、プロの選手であっても難しいことです。

よく「敵・味方・スペースを見ろ」と言われますが、これらを漠然と伝えられても、選手、特にジュニア年代の選手にとっては、「で、結局何を見ればいいの?」となってしまいがちです。

大切なのは、チームの戦術や選手のレベル、その時の状況に応じて、「最初に見るべきもの」「優先的に見るべき情報」を具体的に限定してあげることです。

例えば、「まず、一番近くの味方と、そのマークについている相手の位置を確認しよう」とか、「パスを受ける前に、ゴール方向のスペースが空いているかを見よう」といった具体的な指示です。

このように「見るべき対象」を絞り込むことで、選手はプレーの優先順位をつけやすくなり、迷いが減り、結果としてプレーの判断スピードや質が向上することが期待できます。

③ 情報が多すぎるとプレー強度が下がる?

僕が指導現場で経験してきたことの一つに、選手に一度に多くの選択肢や情報を提供しすぎると、かえって迷いが生じ、プレーのインテンシティ(強度)が下がってしまうという現象があります。

選手がまだ無意識に実行できないプレーや判断を、一度に複数要求してしまうと、頭の中で情報を処理しきれず、動きが遅くなったり、判断ミスが増えたりすることがあります。

特に、試合中のプレッシャーがかかる状況では、「必要な情報が見つからない」「情報が多すぎて何を信じればいいか分からない」といった状態に陥りやすいものです。

このような時に役立つのが、次にお話しする「選択的注意」という考え方です。

2. プレーの質を高める「選択的注意」とは?


「選択的注意」とは心理学の用語ですが、サッカーの指導においても非常に有効な概念だと僕は考えています。

① 必要な情報だけを選び取る力

「選択的注意」をサッカーの文脈で簡単に言うと、ピッチ上の多くの情報の中から、その選手にとって今まさに必要な情報だけに注意を向け、それを効果的に認識する能力のことです。

例えば、騒がしい場所でも自分の名前や興味のある単語が聞こえてくる「カクテルパーティー効果」や、自分が意識している特定の色や物が街中でやたらと目につく「カラーバス効果」などが、この選択的注意に関連する現象としてよく挙げられます。

これらは、人間が自分にとって重要だと判断した情報に対して、無意識的に注意を向けやすくなるという脳の働きを示しています。

② サッカーにおける選択的注意の活用

この心理学的な働きをサッカーの指導に応用すると、「見るべき対象をあらかじめ選手に意識させる」ことで、状況判断のスピードや精度を高めることができると考えられます。

漠然と「周りを見ろ」と指示するのではなく、「〇〇を最初に見よう」「△△の状況になったら□□を確認しよう」と、見るべきポイントや優先順位を事前に選手と共有しておく。

そうすることで、選手はプレー中にその特定の情報に注意を向けやすくなり、より迅速かつ的確な判断を下せるようになる可能性が高まります。

例えば、ビルドアップの際にセンターバックの選手に対して、「まず相手FWのプレスの状況と、ボランチの選手の立ち位置を見よう」と伝える。

そうすれば、その選手はボールを受けた瞬間に、その2つの情報に優先的に注意を払い、パスを出すべきか、ドリブルで持ち運ぶべきかの判断をしやすくなる、といった具合です。

3. 指導現場での具体的なアプローチ

では、この「選択的注意」を意識した指導を、具体的にどのように行えば良いのでしょうか。

① 見るべき対象を段階的に増やす

最初から多くの情報を見るように求めるのではなく、まずは最も重要な1つか2つの情報に絞って意識させます。

そして、それが無意識レベルで出来るようになってきたら、次に見るべき情報を少しずつ増やしていく、というステップを踏むことが大切です。

このプロセスについては、別の記事でも詳しく解説していますので、そちらも参考にしてみてください。

② 「なぜそれを見るのか」という理由を伝える

単に「〇〇を見ろ」と指示するだけでなく、「なぜそれを見る必要があるのか」「それを見ることでどんな良い判断ができるのか」という理由やメリットをセットで伝えることが、選手の理解を深め、主体的な行動を促します。

③ 成功体験を積ませる

「〇〇を見たら、良いパスが出せた!」「△△を意識したら、相手のプレスをかわせた!」といった成功体験を積ませることで、選手は「見ることの重要性」を実感し、積極的に情報を取りに行こうとするようになります。

まとめ

今回は、選手の状況判断やルックアップの質を高めるためのヒントとして、心理学の「選択的注意」という概念とその指導への応用について解説しました。

「周りを見る」の質を高める: 漠然と全体を見るのではなく、状況に応じて「何に優先的に注意を向けるべきか」を選手に具体的に伝えることが重要です。

選択的注意の活用: 選手が見るべき情報を限定し、意識させることで、判断のスピードと精度を上げることが期待できます。

段階的な指導: 最初は見るべき情報を絞り、徐々に増やしていくことで、選手は無理なく状況判断能力を高めていくことができます。

理由と成功体験: 「なぜ見るのか」という理由を伝え、成功体験を積ませることで、選手は主体的に「見ること」に取り組むようになります。

「周りを見る」という言葉はシンプルですが、その中身を深く掘り下げ、選手が本当に必要としている情報にアクセスできるようサポートしていくことが、僕たち指導者の大切な役割だと思います。

皆さんの指導現場でも、ぜひこの「選択的注意」の視点を取り入れて、選手たちの判断力をさらに引き出してみてください!

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