少年サッカー【ポジションは固定するべきか?】実践的指導法を解説

こんにちは。講師のカズです。

少年サッカーの指導において、子どもたちのポジションを固定するべきか、それともいろんなポジションを経験させる方が子ども達が成長できるのか。

このような疑問・議論が起こる背景には、指導者側に以下のような問題意識があります。

  • ポジションを固定すると将来伸びない
  • プレーの幅が狭くなる
  • 固定するのはチームの勝利のためだ(偏見)

僕がサッカーコーチ留学したバルセロナ。
育成大国ですが、子どものうちからスペシャリストを育てるという考えもありますし、異なるポジションをさせてプレーの幅を広げるという話を聞いたこともあります。

僕自身、25年の指導経験やその後の選手の成長を見た時に、固定するケースもあれば異なるポジションでプレーさせるケースもありました。

実際にはどちらが正しいのでしょうか。

固定すること、いろんなポジションを経験をさせること、それぞれの長所と短所、そして実践的な方法について解説します。

この記事を読めばジュニア年代のポジションに関する理解が深まり指導の指針になるので、ぜひ最後まで読んでみてください。

動画で解説

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1.ポジションを固定する・しないに正解はない

①結論

✔︎どちらが正しいという正解はない

最初に結論ですが、育成年代のポジションを固定するかしないか、どちらの考えが正しいという正解はありません。

なぜなら、それぞれにメリット・デメリットがあるし、子どもたちの将来の成長との因果関係が証明できないからです。

例えば、ポジションを固定せず自由にやらせたからプレーに幅が出て高いレベルに行けたということもあります。

しかし反対に、あるポジションのスペシャリストとしてプレーし続けたからこそ高いレベルに行けた、ということもあります。

1つだけ言えるのは「正しい答えはない」ということです。

②海外のプロ選手の事例

以前、FCバルセロナで活躍したチャビ・エルナンデスは「子どもの頃からチャビだった」という言葉。

これはつまり、子どもの頃から中盤で同じような能力を発揮していたということですし、メッシがFW以外にもDFやサイドバックを経験したから今がある、という話は聞いたことがありません。

また、ポジションをコンバートされたことでトップレベルへ駆け上がった選手もいますし、敢えて別のポジションでプレーさせることでプレーの幅を広げさせたということもあります。

こう考えるとやはり、ポジションを固定する・しないのどちらが正しいという事に正解はないと言えます。

③固定する・自由にする、の二元論はやめましょう

日本の育成年代の議論を見ていると、常に二元論的な思考で結論づけようとする事が多く感じます。

ポジションを固定する・しないの議論も、どちらが正しい・正しくないの議論になりますよね。

そうではなく、いつどのような状況なら固定した方が良くて、どのような状況なら別のポジションでプレーさせた方が良いという『現場での調整力』がサッカーコーチには必要です。

選手個人、チーム事情や状態、時期など様々な状況によってコーチは判断しないといけませんが、それらを考慮せず「〇〇が正しい」と結論づけるのはナンセンスです。

こうなると思考停止してしまい、そこから更に考えることを止めてしまうのでサッカーコーチとしての成長はありません。

④ポジションを変えるのは毎回なのか、ある時期なのか?

もう1つ問題なのは、このような議論では「毎回ポジションを変える」のか、「いつまでも固定」なのかといった、指導現場に立つ場合の現実的な方法が語られていない事が多いという事です。

なんとなく理想的な抽象的な議論になってしまい、現実から離れているケースが多いですね。

抽象的になればなるほど、現実的には使えない考えになってきます。

僕らが議論しなければいけないのは、様々な事情や考え方、選手個人やチーム事情や状態を考慮した、リアルな指導現場での実践的な方法です。

後述しますが、最後に僕自身の具体的な取り組みについて解説しています。

2.ポジションを固定するメリット・デメリット


では一般的に言われているポジションを固定した場合に考えられるメリット・デメリットについて考えてみましょう。

以下に代表的なものを簡単にまとめました。

※ただし僕は、ポジションは基本的には固定して状況を見ながら変更・調整したりする、というスタンスなので偏りがあるかもしれませんのでご了承ください。

 ポジションを固定した場合のメリット・デメリット
メリット ①1つのポジションの動きを覚えやすい
 ②選手の特性に合ったポジションでプレーできる
 ③同じポジションの中での次のステップが踏める
デメリット ①他のポジションを覚える機会がない
 ②特性を間違う可能性がある
 ③指導によっては停滞する可能性がある


このようにまとめると、ポジションを固定することはメリットが大きく、デメリットは指導のアプローチによって改善できる可能性が高いと思えます。

デメリットの②③はコーチ側の問題ですね。

①ポジション固定のメリット

1つのポジションの動きを覚えやすい

同じポジションでプレーするので、1つのポジションの動きや役割をしっかりとマスターすることができます。
特に年齢が低い場合、ポジション固定する事でとりあえずサッカー的な動きができるようになるということがあります。

選手の特性に合ったポジションでプレーできる

ある程度のレベルに達すると、その選手に適したポジションが見えてきます。
フォワード向きなのか、中盤か、それともディフェンスか、中央かサイドか。

各ポジションにはそれぞれの役割や特徴があるので、選手の特性とマッチさせることで能力を発揮しやすくなります。

同じポジションの中での次のステップが踏める

同じポジションでも常に次のステップがあります。
例えば、FWの選手なら今現在何ができていて何が次の課題か。

育成年代でプレーが頭打ちになることはなく、課題をクリアしたら常に次の課題を設定することができます。

②ポジション固定のデメリット

他のポジションを覚える機会がない

当然のことですが、他のポジションでプレーする機会がなくなるので覚えることができません。

ただし、これが専門的なポジションでの成長に対して、それを上回るほどのデメリットかというとそうではありません。

覚えないよりは覚えた方が良いというもので、それが決定的なデメリットになるとは思えません。

2つ程度のポジションができるのが現実的には望ましいでしょう。

特性を間違う可能性がある

これは僕ら指導者が気をつけなければいけない点です。

そもそも選手の特性を見抜くことができていない場合、ポジションと選手の特徴があっていないという現象がおきます。

指導によっては停滞する可能性がある

指導者が、そのポジションでの次の課題を提示できない場合、その選手が成長できない場合があります。

例えば得点力のあるフォワードに更に得点力を上げるための課題など。

しかし、提示できれば問題は起きないので、これはポジションを固定するデメリットではなく、指導者の能力の問題かと思います。

以上がメリットとデメリットです。

3.いろんなポジションを経験させるメリット・デメリット

次に、いろんなポジションでプレーさせることのメリットとデメリットを見てみましょう。

 いろんなポジションを経験させる場合
メリット ①いろんなポジションを経験できる
 ②特性が見えにくい選手にとっては可能性が広がる
デメリット ①1つのポジションすら覚えられない可能性がある
 ②毎回変更されると混乱する
 ③適正ではないポジションでもプレー

①いろんなポジションのメリット

いろんなポジションを経験できる

当然、いろんなポジションでの経験が積めます。
ただし、リスクとしては各ポジションでの理解が積み上がる前に変えられると、混乱する可能生もあります。

特性が見えにくい選手にとっては可能性が広がる

指導者側が選手の特性が見えていない場合、選手の良さを潰さずに済みます。

②いろんなポジションのデメリット

1つのポジションすら覚えられない可能性がある

あるポジションでの役割や感覚を掴む前にポジションを変えられると、1つのポジションをまともに覚える事ができない可能性があります。
これはサッカー初心者や低学年生に多いですね。

毎回変更されると混乱する

ポジションによって役割やタスクが変わります。
戦術的な難易度が高くなると混乱する可能性があります。

適正ではないポジションでもプレー

選手の特性を考慮した、すなわち適正なポジション以外でのプレーの機会が増えます。
つまり苦手なポジションでのプレー。

後述しますが、基本的に選手の特性・良さを引き出すポジションでプレーする方が良いと考えているので、この点はデメリットになると思います。

以上、ざっくりとまとめてみました。

4.ポジションに対する実践的な例

ここからは僕自身の考えや実際の取り組みですが、選手に与えるポジションについては以下のように考えています。

選手の短所を隠し長所を発揮できるポジションを与える

ポジションに対する基本的なスタンスはこれです。
もちろん短所の克服も目指しますが、基本的には選手の良さを引き出す事が優先です。

ただ、だからと言っていつも固定する、絶対に固定した方が良いというのではなく、ケースバイケースで調整します。

以下に、実際の取り組みを年代毎のケースバイケースで解説します。

①低学年(1〜2年生)のポジション

僕の場合、低学年でもある程度選手の特性を見て、コーチである僕自身がポジションを決めます。

もちろんこの段階では、選手によっては特性が見える選手もいれば見えない選手もいるので、いろんなポジションでプレーさせる方が良いでしょう。

選手が〇〇のポジションをやってみたい、という意見も取り入れてやらせてみます。
このような意見が出るのは良いことですね。

それでも最終的には僕が決定します。

ただ、まだあまりポジションのイメージがつかめていない選手には、同じポジションでプレーを続け、まずは1つのポジションを覚えるのが優先です。

反対にどんなポジションでもすぐに理解できる選手には、複数のポジションをさせることも可能です。

何れにせよ、個人個人における適正ポジションのイメージを持ちますが、中・高学年でそれがズレる可能性も大いにあります。

その場合はその都度修正します。

②中学年(3〜4年生)のポジション

この年代になると選手の特徴が出てくるので、基本的にポジションを固定します。

2つ以上のポジションをさせる場合には、動きや役割が似ているけど異なるポジションが多くなります。

例えばサイドハーフとサイドバック。フォワードとサイドハーフなど。

これらは役割やプレーの感覚で共通する部分が多い、もしくは重なるポジションです。

反対にフォワードとセンターバックなど役割や感覚が共通しない2つのポジションでプレーさせるのは、選手のパフォーマンスを下げないためにも控えた方が良いでしょう。

その場合はコンバートという形になるので慎重さが必要です。

また選手によってはまずは1つのポジションを覚えることを優先した方が良い選手もいます。
ポジションをすぐに変えると混乱しそうなら、辛抱強く同じポジションで起用します。


ただし、最初はこのポジションが適正だろうと考えていた選手が別のポジションでの可能性を見せる事があります。

その時は今までのポジションに固執せず、新しいポジションを試す良い機会となるでしょう。

③高学年(5〜6年生)のポジション

中学年とほぼ同じ考えです。

少し違うのは高学年になると公式戦が増え、いつでも新しいポジションを試す事ができなくなる事です。

主要な大会が始まってからあれこれポジションを変えるのは選手が混乱しますし、チームとしてのパフォーマンスが上がりません。

ですので、ポジション変更を行うのは以下の状況の時が好ましいと思います。

  • 主要な大会が終わった後
  • 選手が伸び悩んでいる時
  • 出場時間が減少した時

つまり同じポジションでのプレーの質を高めるにせよ、別のポジションでの可能性を広げるにせよ、選手に新しい刺激が必要な時にポジションを変更する事が重要です。

適切なタイミングで新しいポジションでプレーさせる事で、可能性を広げ、また新しい刺激を与える事でプレーの幅を広げる事ができます。

5.まとめ

同じポジションでプレーしていても、まだまだそのポジションで積み上がって行くイメージができるならそのまま継続しても良いですし、反対に頭打ちになりそうならポジションを変えます。

大事なことは「ポジションを固定する・しないのどちらが正しい」ではなく、状況に応じて臨機応変に選手を成長させることです。

ポジションは毎回変えるのではなく適度に変えて刺激を与えましょう

まずは、目の前の選手たちのレベルやパフォーマンス、そしてチーム事情や目指すべき方向を見据えて、取り組みましょう。

コーチは失敗もしますが、常に葛藤の中で思考し続ける事が重要です。

ポジションの決め方に関しては、少年サッカーにおけるポジションの決め方【3つの要素を必ず考慮】を参考にして下さい!

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