ゲームモデル(プレーモデル)とは何か?【基本的な概念を解説】

こんにちは。講師のカズです。

ここ数年サッカー界の中で使われる「ゲームモデル」(プレーモデルとも言う)という言葉。

これは特に、プロチームに必要なものだと考えている方もいますが、実際はそうではなく小学生や中学生といった育成年代のチームにとっても活用できる概念です。

  • ゲームモデルとはそもそも何か?
  • ゲームモデルは選手の自由を奪う?
  • 小学生にゲームモデルは必要?

専門的な話は別記事で解説するので、まずは基本的な考えを理解しましょう。

この記事では、あくまでもざっくりとしたイメージで「ゲームモデルとは何か」「なぜ小学生年代にも必要なのか」など、基本的なことについて分かりやすく解説します。

動画で解説

ゲームモデルの考えについては、僕がバルセロナのコーチングスクールで学んだものをベースに、その後に得た知識と実践したケースを合わせているので、より指導現場で生きる内容となっています。

ちなみにゲームモデルはプレーモデルとも呼ばれますが、ここではゲームモデルと表記します。

ではさっそく解説します。

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1.ゲームモデルとは何か?

ゲームモデルとは何かを一言で表現するのはとても難しいのですが、大まかに言うと以下のようになります。

ゲームモデル=プレーのガイドライン

※実際にゲームモデルを作成する際にはチームのプレースタイルやフォーメーション、目指すべきサッカーの方向性、現実の対戦相手との調整など、たくさんの項目を設定しないといけないのですが、まずは中心概念となるプレー原則をベースに解説します。

プレー原則とはサッカーの試合における各フェーズにおいてどのようなプレーを優先的に行うか、個人、グループ、チームとしてのプレーの意思決定に関わるものです。

もう少し分かりやすく表現すると、ある状況の中でどのようなプレーを優先的に行うか、その際の大まかな方向性を示すものがプレー原則であり、ゲームモデルの中心となる概念です。

とりあえずゲームモデルにはプレー原則というものがあって、それはプレーのガイドラインになるものだと認識しておけば大丈夫です。

なぜガイドラインなのかと言うと、ゲームモデルとは選手のプレーに対して「必ずこうしなさい」というプレーを制限するものではなく、あくまでもプレーの方向性を示すものだからです。

例えば攻撃のフェーズにおいてチームとして以下のようなプレー原則を設定したとします。

  • ピッチを広く使いサイド攻撃を起点にする
  • サイドが詰まった場合は素早く逆サイドからの攻撃を目指す

こうすると、選手全員に共通した大まかな攻撃のイメージができます。

その約束事に従うことにより、全員が共通認識のもとでプレーできますね。

このように攻撃や守備、切り替えのフェーズにおいてプレーの方向性を示すものがプレー原則でゲームモデルの中心的概念です。

つまりゲームモデル=プレーのガイドラインであると、ざっくり考えることができます。

2.ゲームモデルを設定するメリット

ゲームモデルを設定することにより、各シチュエーションにおける大まかなプレーの方向性ができると以下のようなメリットが生まれます。

  • プレーの意思決定がしやすくなる
  • チーム全体の共通認識ができる

順番に解説します。

①プレーの意思決定がしやすくなる

サッカーというスポーツはとても複雑で、さらに状況に応じた判断力が求められます。

複雑な状況の中で全てのプレーにおいて状況を正しく把握し、適切な判断をするというのはかなり難易度が高くなりますよね。

そのように考えるとゲームモデルを設定することで、プレーの意思決定を助けることができます。

なぜなら各フェーズにおいてガイドラインがあることで、意思決定の方向性が定められているからです。

※この部分はサッカーにおけるフェーズ・サブフェーズを理解していないと分からないと思うので、知らない方は、サッカーの基本構造【4つの局面と11のサブフェーズ】戦術の基礎をご覧ください。

いくつか例を見てみましょう。
サブフェーズにおいて以下のようにプレー原則を設定したとします。

例1)ビルドアップの始まり
・相手のプレスの方法によってショートとロングパスを使い分ける

このように設定すると、パスの優先順位が決まってきます。
相手が引いているならショートパスを使い、前からプレスが来ている時にはロングフィードを使う。

■例2)フィニッシュ
・コンビネーションとモビリティで崩す

この設定では最初に狙うのはワンツーだったり裏へ抜け出すアクションが必要になります。

■例3)組織化された攻撃の始まり
 ・ボールを奪ったらボール保持を優先する

この場合は、例えば中盤でボールを奪ったら一度、センターバックやゴールキーパーへバックパスを行い素早くポジションを取って攻撃を作り直すといったプレーが必要になります。

以上、いくつか例をピックアップしました。

こんな感じでプレー原則が設定され、それらは各フェーズにおいてどのようなプレーを優先的に行うかといった意思決定を助けています。

②チーム全体の共通認識ができる

ゲームモデルを設定すると個人の意思決定を助けるだけでなく、チーム全体の共通認識が深まります。

なぜなら各フェーズにおいてプレー原則が設定されるとそれは個人的な意思決定だけでなく、チーム全体の方向性も示すものだからです。

つまり選手どうしの間に「今は何を優先的にプレーするべきか?」に対する共通のイメージが生まれます。

このように設定することとで、めまぐるしく変化する状況の中でもシチュエーションごとのチーム全体としての共通認識をもたせることができます。

当然、あるシチュエーションにおいて全員が同じイメージを持っているのでチーム全体のプレーがスムーズになります。

3.ゲームモデルは選手の創造性を奪うか?


ここまで読んで頂くと、ゲームモデルという概念を採用するメリットが理解できる反面、以下のような疑問が生まれると思います。

  • ゲームモデルを設定すると選手の創造性や判断を奪うのではないか
  • 機械的な動きになってしまいコーチの言う通りにしか動かなくなるのではないか

このようなイメージを持ってしまうのは仕方がないことだと思いますが、僕の経験上または理屈的にもそのようなことはありません。

なぜならゲームモデルとはシチュエーションごとのパターンや、選手一人一人の細かな動きを規定するものではないからです。

あくまでもガイドライン的な存在で、意思決定の基準をある程度そろえておくためのものであり、選手には自由が与えられます。

そのため選手の創造性や判断を奪うものにはなりません。

もう一度、先の例を見てみましょう。

ビルドアップの始まり
・相手のプレスの方法によってショートとロングパスを使い分ける

ここでは、相手が前からプレスに来た時にはロングを使い、下がったらショートパスを優先的に行うと設定しています。

その中で選手は、状況を見ながらパスを使い分けなければなりません。

もしこれが「絶対にショートパス」となれば選手の自由度を奪うどころか、適切でない判断を繰り返すことになります。

そうではなく、あくまでも大まかな状況の中でどんなプレーを優先するかの設定なので、細かな部分に関しては選手の判断力が求められます。

状況によってはプレスがかかっているけどロングフィードが蹴れない状況なのでドリブルで外すプレーやコンビネーションで回避するプレーなども出てきます。

あくまでも選手のプレーを細かく規定し判断を奪うものではなく、選手の判断を助けるものであると言えます。

※厳密にはどこまで細かく設定するかによって、プレーの自由度は変化します。
この辺はとても複雑な話になるので割愛しますが、まずはそういうものだと理解しましょう。

4.小学生年代にゲームモデルを採用する意義

僕の経験からすると選手側にも指導者側にもメリットが多いと感じていますので、小学生年代にゲームモデルという考えを採用する意義について解説します。

①選手側のメリット

ゲームモデルを採用した際、選手側が得るメリットは以下のようなものが挙げられます。

  • 状況に応じてどのようなプレーを優先すべきかが明確になる
  • 状況判断が楽になる
  • コーチに求められているプレーがわかりやすい
  • 共通認識ができるので味方にコーチングしやすい

また実際にゲームモデルを作成すると分かりますが、ジュニア年代ではゲームモデルがオーソドックスなものになりやすかったり、できることが少ないのでざっくりしたものになる傾向があります。

そのため戦術面では基礎的なものがベースになるので、選手にとってはサッカーを理解することにもつながります。

②指導者側のメリット

僕が実際に経験して、指導者側にも以下のようなメリットがあると感じています。

  • サッカーを構造的に捉えられるようになる
  • 選手のプレーの良し悪し(ジャッジ)が明確になる
  • ランダムコーチングにならない
  • 戦術指導のスキルが上がる

実際にゲームモデルを作成して指導を行うと難しい点が多々あるのですが、それでも指導のスキルアップに関してメリットの方が大きいです。

サッカーを漠然と捉えるのではなく、かなり詳細に理解していかないといけなくなるのですがそれにより指導の質が向上します。

以上のような考えから、小学生年代でもチームに応じたゲームモデルを作ることは非常に有意義なものだと言えますね。

5.まとめ

今回はざっくりとゲームモデルとは何かについて解説しました。
まとめると以下のようになります。

  1. ゲームモデルとはプレーのガイドライン
  2. プレー原則で意思決定が容易になる
  3. チーム全体の共通認識ができる
  4. ゲームモデルは選手の創造性を奪わない
  5. 育成年代の選手・指導者にもメリットがある

基本的にはサッカーの指導において、ゲームモデルがあるから良いとか悪いの話ではなく、あくまでもツールとして使うべきかなと思います。

また深堀して行くと戦術的ピリオダイゼーションという指導の方法論と深くリンクしており、かなり難解な概念になるのですが、とりあえず自分なりに作ってみるのをお勧めします!

基本的なイメージがつかめた方は、ゲームモデル作成-1【サッカーの方向性を決める】最初のコンセプトへ進みましょう。

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