ジュニアサッカーではロングとショートパスを使い分けることが重要

私がバルセロナにサッカーコーチ留学し、その前後日本でジュニア年代に指導する中で「ロングボールを何も考えずに蹴る」「ショートパスしか使わない」もしくは「ドリブルサッカー」などのキーワードをもとに「どれが正しいか?」といった議論がよく出てきます。

実際に日本のサッカーにおけるジュニア年代の試合の中で、ゴールキーパーやディフェンスの選手が「何も考えずにひたすらロングボールを蹴る光景」はよくありますよね。

今回は「育成年代においてサッカーコーチに必要な考え方」を解説します。

✅ロングボール主体の攻撃だと選手を育成できない?

✅ショートパスでつなぐ方が子どもは上手くなる?

✅ロングボールを蹴ると状況判断がなくなる?

①結論

先に結論から言うと「ジュニアサッカーではロングボールとショートパスを使い分けることが重要」とタイトルにあるとおりです。

なぜなら「使い分ける」ということは、相手のプレスに合わせて柔軟に対応することで、敵のプレスをかいくぐることで前進できて得点につながります。

ロングボールが通用しないのにそれをひたすら繰り返す、ショートパスだと全部はめられて前進できていないのにプレーアイデアが他にないとなると試合を有利に運ぶことができません。

「敵のプレスに応じてショートとロングを使い分ける」必要があります。

ただし、そこに状況判断が伴っていることが前提。

いつロングボールを蹴って、いつショートパスでつなぐか。

サッカーにおいてテクニックと同様に『状況判断』は重要な要素なので、ジュニア年代から「ショートとロングの使い分け」を理解し実践することでサッカー選手としての基礎を作ります。

これは「パスサッカーかドリブルサッカーか?」という問題にも同じことが言えますね。

そもそもサッカーにはドリブルもパスもショートもロングもあるので、それらをいかに使いこなせるか。

指導者としてはそれぞれの特徴やメリット・デメリットを選手に教え、いつそれらを使うと効果的かを選手に理解させる必要があります。

考えてみたら至極当然のことですが、どうして私たち指導者はそうしてロングボールだけ、ショートパスだけといった偏った考えになるのでしょうか?

②「ショートパスでビルドアップすることが育成だ」という幻想

サッカーコーチとして「選手にしっかりとサッカーを学ばせたい」という気持ちが強いコーチほど「ロングボールを蹴ってはいけない」と考える傾向が強いと思います。

過去の私もそうでしたが、「何も考えないロングボール」や「ドリブルサッカー」に否定的に反応すると極端な方向へブレてしまう。

そうすると「前からプレスが来てもなんとかショートパスで剥がそう」という思考になります。

ジュニア年代だと前線からマンツーマン気味にマークされているのにショートパスをつなごうとしてしまい、結果として失点のリスクを高めます。

実際は相手が前からプレスに来ているので、敵のDFラインは希薄になり「ロングボールが有効になる」のですが、ロングを蹴らせたくないという気持ちから無理やりショートパスで前進しようとしてプレスにかかる。

しかし失点してもそれが「育成している」という考えになるので「いつロングボールを入れるべきか」ではなく「テクニックレベルをもっと上げよう」という短絡的な思考になってしまいます。

もちろん攻撃を組み立てるのにテクニックレベルは重要ですが、それだけだと「状況判断を伴った選手の育成」という本来の目的から大きくズレてしまいます。

この点から考えても、いかにショートパスとロングボールを使い分けるかが「育成」という観点からも重要なポイントとなるということが見えてきます。

③3つの前進方法

結局のところ「ショートパスか」「ロングボールか」といった議論は「サッカーにおける前進の方法」についての考え方です。

私が学んだバルセロナの指導者学校では、相手のゴールまでボールを運ぶ「前進の方法」は2種類となっていましたが、ジュニアサッカー大学では「ミックス(混合)」も含めて「3つの前進の方法」があると考えています。

①ダイレクト攻撃

スペインだと「Juego Directo」(フエゴ・ディレクト)と呼ばるのもで、要はロングボールをFWに送る前進の方法

②ビルドアップ攻撃

これは「Juego Combinativo」(フエゴ・コンビナティーボ)と呼ばれ、コンビネーションプレーと訳せるものです。
コンビネーションというと分かりにくいので「ビルドアップ攻撃」としています。
ショートパスを使いながら前進する方法

③ミックス

これは指導者学校では出てきませんでしたが、①と②の混合です。

つまり状況によって「ショートとロング」を使い分ける

ジュニア年代ではこの「ミックス」が選手の状況判断を高めるために必要なものだと考えています。

④いつロングボールでいつショートパスか?

では、いつロングボールを使っていつショートパスを使うべきでしょうか?

これは相手のプレスのかけかたによって変わりますよね。

・ロングボール

相手が前からプレスに来て「高い位置でボールを奪おう」としているなら全体的に高くポジションを取っているので敵のDFラインが手薄になる。

自チームのフォワードが敵のディフェンスとマンツーマンになっているならロングボールが有効です。

また、一度ショートでつなぎ敵を前がかりにさせてからロングという方法もあります。

・ショートパス

ショートパスが有効になるのは「相手が前から奪おうとしていない」もしくは「一度つながせてからプレッシングをかける」ケース。

もしくはこちらがDFラインで敵のプレスの枚数に対して数的優位を作ろうとMFなどが下がってもついてこない場合は、前で「はめる」よりディフェンスラインで数的優位を保ちたいと考えているのでロングパスよりショートパスでつなぐ方が有効です。

ロングかショートかの判断する最初の基準は「敵が前からプレスに来ているかどうか」になります。

⑤ジュニア各年代のテクニックレベルによる問題と前進の解決方法

では実際の指導現場ではどのようなことが問題になるでしょうか?

私も今までの経験から各年代によって起きる問題が異なる経験をしてきましたので、よくある問題と解決方法について解説したいと思います。

・低学年(小学1〜2年生)

この年代だとそもそもロングボールはあまり蹴れませんよね。なのでショートかロングかというより「ピッチ中央にパスを出すかサイドに出すか」が問題になります。

ロングボールを蹴れる選手がいたら苦労しませんが、そうでない場合は団子になりやすい年代ではサイドを有効に使うことがポイントになります。

本当に個人差が大きいですが、ロングボールを蹴れないなら「遠くの選手には速いパスを入れること」を意識させましょう。

・中学年(小学3〜4年生)

この年代はある程度守備の意識やポジションを守ることができるので、基本的には前からプレスを行うケースが多いですよね。

私の個人的な意見としては、ショートパスでつなぐサッカーをしたい場合は、事前にしっかりとロングボールを蹴れるようにしておく必要があります。

ゴールキックやDFからのパスをサイドに散らしてもスライドされてすぐにプレスにかかってしまいます。

ただ、どちらかというと「守備では勢いでボールホルダーに集まる傾向が強い」ので、もしロングボールを蹴れる選手がいない場合は、一度サイドチェンジを入れることでショートパスで前進しやすくなるケースもあります。

・高学年(小学5〜6年生)

この年代では、ロングボールを蹴れることは必須です。

ロングボールが蹴れないと相手の前線からのプレスにはまってボールを前進させることができません。

自チームが能力的に相手より上回っている場合はテクニックでかわすことができますが、同格かそれ以上だと一気に前進できなくなります。

と同時に「ロングとショートの使い分け」を理解し実践できる年代でもあります。

※余談ですが、ロングボール攻撃を主体とするチームに対しては「ロングボールの処理」をトレーニングしておかないと勢いにおされます。

⑥まとめ

ということで今回は「ロングボールとショートパスの使い分けの必要性」について解説しました。

どちらが正しいとか勝利しやすいという議論ではなく、相手のプレスの状況に応じて使い分けることで「状況判断を磨く」ことになります。

もちろんショートパスやロングボールを正確に蹴れるテクニックも大事ですが、同じくらい「状況判断」も重要になりますね。

⑦動画で見たい方

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