こんにちは、講師のカズです。
この記事では8人制サッカーの基礎知識、そして指導者として理解しておくべきポイントについて解説します。
・なぜ小学生は8人制なのか
・8人制サッカーの特徴とは
・11人制サッカーとの違い
ジュニア年代の指導現場に立つと8人制サッカーに戸惑うことや、11人制の戦術を上手く落とし込めないなど、8人制サッカー特有の問題が出てきます。
もしかしたらコーチを始めたばかりだと、そもそもなぜ8人制サッカーなんだろうという疑問もあります。
実際には11人制サッカーと8人制サッカーは異なる要素があるのですがサッカーの本質は同じです。
重要なことはこの「本質」を理解することで改善できます。
僕がコーチ留学したバルセロナでは7人制サッカーでした。他のスペイン国内では8人制のところもあります。
細かな人数設定の違いは置いておいて、サッカー先進国ではジュニア年代において人数を減らした形で試合を行うことはもはや主流な考えで避けて通れないものになっています。
この記事を読めば8人制サッカーの基本的な考えと本質、ジュニア年代の指導のポイントが分かると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
では、解説します。
8人制サッカーの基礎知識
8人制サッカーの特徴
基本的に8人制サッカーの狙いは、11人制サッカーの大まかな構造を変えずに人数を減らしたメリットを得るということです。
メリットについては後述しますが、この大まかな構造は変えないというところがポイントです。
例えば、小学2,3年生なら構造をもう少し崩して5人制や6人制で行うという考えもありますが、小学生高学年という年齢を考えると理にかなっています。
では、11人制の大まかな構造を崩さないということはどういうことでしょうか。
例えばフォーメーションの基本的な考えである3つのラインが形成できるという点です。
7人制でも3ラインを形成できますが、6人制だとできなくはないがバランスが取りにくくなります。
このような理由から8人制サッカーの狙いを考えると納得できますね。
※厳密に言うと8人制と7人制では要素が変わってくるのですが、ここでは割愛します。
JFAが推奨するメリット(理由)
JFA=日本サッカー協会が8人制を推奨するメリットはいくつかあります。
・プレー面でのメリット
・大会運営
・クラブの所属人数
ここではオーガナイズや運営、そしてクラブの人数によるメリットは割愛してプレーそのものにおけるメリットについて解説します。
※JFAの考えを詳しく知りたい方は、8人制サッカー趣旨・開催ハンドブックをご覧ください。(JFAのサイトに飛びます)
ここではJFAの言葉をそのまま引用しながら話を進めて行きます。
それでは1つずつ見ていきましょう。
一人当たりのボールタッチ数が増える
人数が減る分だけ一人当たりのボールタッチ数は増えます。
ジュニア年代の育成を考えるとボールに多く触れることでテクニックスキルを向上させるという狙いです。
ただ、同じ試合時間で行うなら11人制より増えるということは言えますが、8人制サッカーになったからといって試合時間を短くすればタッチ数は増えません。
プレーに関わる回数が増える
ボールタッチ数と同じく、人数が減ることによって直接的にボールに触れなくても間接的にプレーに関わる割合が増えるということ。
11人制と比べて割りかしボールに近いエリアで全員がプレーするので関わる回数は増えます。
ただしJFAでは「判断の回数が増える」となっていますが、僕は少し違う意見です。
屁理屈的な言い方ですが、何も考えずにプレーしていたら判断する回数は増えないかなと。
この辺は後述する戦術と大きく関わってきますね。
11人制より見るものが減る
見るものが減るとは、考える要素が減るということです。
11人制に比べると相手と味方の人数が減るので、見なくてはいけない対象が少なくなります。
そのためサッカーの難易度が下がるとも言えます。
ただJFAでは「判断が明確になる」と言われてますが、すいません…ここも少し視点が違います。
この辺の状況判断の考え方は別記事で解説しているので、よかったら参考にしてください。
>>ジュニアサッカー【状況判断を良くし選択肢を増やす方法】を解説
>>少年サッカー【状況判断をよくする】選択的注意(心理学)の活用
どのポジションでも攻守に関わり続けられる
これは11人制でも同じかなと思います。
また、各選手にどのような役割やタスクを与えるかで変わってくるのでこれはチームによります。
ただ、ゴールまでの距離という点ではそう言えるかもしれません。
ゴール前の攻防が増える
ピッチサイズが11人制の半分のため、お互いのゴールどうしの距離はとても近くなります。
そのため攻守にわたってゴール前での攻防が増えるというのは納得です。
これは11人制における3ゾーンと8人制の違いとも考えられます。
基本的には11人制サッカーではピッチを縦に3分割してゾーンを区分けしますが、8人制だと2ゾーンで考えるという方法もあります。
>>参考:サッカーにおける3つのゾーンを解説【8人制では2つに考える】
以上がJFAが提唱している8人制サッカーのメリットです。
最大のメリットは戦術的な負荷が下がること
僕自身、最大のメリットはここだと思っています。
戦術的な負荷とは難易度と言っても問題ありません。11人制と比べてサッカーが少し単純化することで戦術のレベルが下がります。
ポイントは以下の2つです。
①複雑性が下がる
少し難しい話になりますが、サッカーというスポーツを複雑系だと考えた時、人数が減れば減るほど複雑性が下がります。
要素が単純化され、起こる現象の数は少なくなりますし判断すべき要素が減ります。話をわかりやすくするために、極端に人数を減らして考えるとイメージしやすいです。
例えば2対2を行う場合、様々な戦術的な要素が減り選択肢も少なくなります。
②考える要素が簡単になる
複雑性が下がるということは、考える要素が減り簡単になるということです。
考える要素が少なくなるので頭の中への負荷が下がり、戦術的な難易度が下がります。
頭の中への負荷が下がるということはインテンシティ(プレー強度)が上がりますね。
>>参考:サッカーにおけるインテンシティとは? 戦術的負荷によって変化する
人数が減ることにより複雑性が下がり、考える要素が減るということはサッカーが単純化します。
つまり戦術の難易度が下がる
ここまで読んで頂いたら分かると思いますが、結果として戦術の難易度は下がるということはご理解頂けたのではないでしょうか。
8人制サッカーと11人制の違い【本質は同じ】
結局のところ11人制サッカーと8人制ではサッカーの本質は変わりませんが、戦術的な難易度は下がるというということです。
これが何を意味しているかというと以下の2点です。
・小学生年代への戦術指導がしやすい
・8人制の方が指導者の戦術指導の難易度は下がる
それぞれ解説します。
小学生への戦術指導
中学生や高校生と比べて、まだまだ戦術的な知識が乏しい小学生年代では難易度を下げることによって、基礎的な戦術指導がしやすくなるというメリットを得ることができます。
サッカーが単純化されることで戦術の要素が減り、また認知すべき対象や状況が簡略化することでこの年代に合った戦術を指導することができます。
普遍的な戦術、例えばサポートの仕方やカバーリング、マークを外す動きやスライドなど、戦術コンセプトと呼ばれる基礎的なものを理解・実行しやすい環境を子どもたちに与えることができますね。
11人制は指導できるが8人制はできない、はない
指導者の方にとっては少し耳が痛い話かもしれませんが、僕自身、そして僕のクラブのスタッフ間では以下のような認識を持っています。
✔︎11人制の戦術は指導できるが8人制はできないということはない。
年齢が上がると選手たちが勝手に上手くプレーする(そもそもできる)という要素が増えるので、それっぽい形にはなります。
しかし人数により戦術の難易度が下がるということは要素が減りサッカーの要素が単純化するなら、当然指導面でも難易度が下がります。極端に言うと11対11の戦術は理解して指導できるが、2対2はできないということは起こりません。
もちろん、子どもたちのテクニックレベルや戦術理解度の問題から、ジュニア年代特有の指導の難しさはありますね。
サッカーコーチとしてのスキルアップはジュニアから
そう考えると僕がコーチ留学していたバルセロナでの指導者のシステムはよくできています。
サッカーコーチを始める時には、基本的に下の年代から始めて、そこで指導できるようになったら上の年代へチャレンジできる。
7人制サッカーをクリアしたら11人制を指導できるという仕組みは指導者のレベルアップのプロセスにおいても理にかなってますね。
今回は8人制サッカーの基本的な目的や特徴と小学生年代における戦術指導の基本的な考え方について解説しました。
8人制サッカーの戦術指導を考える上で参考になれば幸いです。