Junior Soccer College Written by ジュニアサッカー大学

判断力を鍛えるには【戦術メモリーを増やす】少年サッカー指導ポイント

戦術指導

こんにちは、講師のカズです。

日本人選手のストロングポイントとしてテクニックや俊敏性、規律の良さは世界でも評価が高い一方、戦術面での乏しさは世界と比較してよく問題視されます。

僕自身、育成年代に関わる指導者として、もっと子どもたちの戦術面でのレベルを上げたい思いでバルセロナ留学もしました。

ジュニア年代ではテクニックレベルを高めることはもちろんですが、同時に状況判断力を身につけることも重要です。
サッカーは状況判断のスポーツとも言われますが、では判断力を鍛えるにはどうしたら良いのか

基本的に判断力を鍛えるトレーニングというものはないと思います。
なぜなら日々の練習や試合の中での戦術的な知識と実践の経験が判断力を育むものだからです。

重要なことは、いかに戦術メモリーを蓄積していくか。

この記事では、戦術メモリーという概念と判断力を高める指導のポイントについて解説します。

1.判断力を鍛えるには戦術メモリーを増やす

①戦術メモリーとは何か

戦術メモリーとは日本では聞き慣れない言葉ですが、簡単に言うと戦術的な知識の記憶です。

日々の練習や試合で経験した戦術的な知識や実践したことが記憶として選手にインプットされ、それが蓄積されることでメモリーが増えていくというもの。
戦術的な経験値とも言えますね。

つまりメモリーが増えれば、それだけいろんな状況に応じた戦術的な判断の引き出しが増えるということです。

②判断力とPAD+E

判断力とは、状況に応じてベストな判断を下せるかというものです。

例えばどこにパスを出せばより有効的なのか、今はどのようなプレーを選択すれば一番相手が嫌がるのか。
そのような判断を下せる選手を、状況判断が素晴らしいと表現できます。

しかしこの判断力は選手の頭の中で起こっていることであり、コーチは選手の頭の中を見ることはできません。

選手がプレーするプロセスはスペイン語でいうPAD+Eという一連の流れを経ています。

よく分からないという方は下記を参考にしてください。
>>参考:サッカー選手がプレーする4つのプロセス「認知・分析・決断・実行」

判断力とはPADの部分=つまり認知・分析・決断という頭の中で起こる現象で、それは選手の戦術メモリーと大きく関係しています。

③戦術メモリーを増やすことで判断力が上がる

ここまで読んで頂ければ判断力は戦術メモリーに大きく依存しているということが理解して頂けたと思います。

つまり日々の練習や試合の中で、戦術的なプレーを繰り返すことでメモリーが少しずつ増えていく。
その結果、戦術メモリーが高まり判断力が良くなるということです。

余談ですが、PAD+Eや戦術メモリー、スペインサッカーの戦術の基本について詳しく知りたい方は、下記の書籍を参考に。

つまり何らかの特殊な練習をすれば判断力が鍛えられるのではなく、日々の積み重ねの中で指導者が選手に落とし込んでいく必要があるということです。

コーチの戦術的な指導スキルが鍵になります。

2.戦術メモリーを増やす指導のポイント

では実際の指導でどのように選手たちの戦術メモリーを増やすのか。

いくつかのポイントについて解説します。

①戦術的知識を与える

サッカー選手として高いレベルを目指すにはテクニックスキルも重要ですが、戦術的なプレーができるということは不可欠です。

当然子どもの頃から戦術を学んでいく必要があるのですが、注意すべき点があります。
それは子どもたちが勝手に戦術的な知識を得ることはないということ。

その辺は下記の記事で詳しく解説しています。
>>参考:ジュニアサッカー【状況判断を良くし選択肢を増やす方法】を解説

例えばマークを外す動きの2種類を選手が自ら発明することは不可能ですし、できたとしてもものすごく時間がかかり効率的ではありません。

そこで指導者が持っている戦術的な知識を選手に与えていく必要があります。

サッカーの原理原則や戦術は今までのサッカーの歴史の中で蓄積されているので、指導者が巨人の肩に乗り、選手に教える=落とし込んでいくことがポイントです。

まずは戦術的な知識を選手に理解させ、実践するところから始まります。

②プレーを分析させる

戦術的な知識を与えた後は実際にプレーして、その良し悪しを分析して選手自身に身をもって体験させることです。

  • なぜプレーが上手くいったのか
  • 上手くいったプレーの理屈は何か
  • なぜ上手くプレーできなかったのか
  • 上手くいかない理屈はどのようなことか
  • 他のアイデアと結びつけれるか

選手が良いプレーの成功体験を得るだけではなく、その理屈や上手くいかなかった時の戦術的な問題点を分析・フィードバックすることで少しずつ戦術メモリーが増えてきます。

これらの指導を、日々の練習や試合の中で事細かく繰り返すことが重要ですね。

③コーチングのポイント

戦術メモリーを増やすためのコーチングのポイントをざっくり解説します。

それぞれ詳細記事のリンクを貼っておくので、詳しく知りたい方はそちらを参照してください。

4つのステップを踏ませる

日々のトレーニングや試合でも以下のアプローチを繰り返します。

  1. 知識を得る
  2. 意識させる
  3. 思い出させる
  4. 無意識のレベルに到達

最初に新しい戦術的な知識を選手に与え、それを意識しながらプレーさせます。

選手はまだ意識しないとできないことなので、コーチは常に指示を送り意識するポイントを忘れないようにコーチングします。

ある程度できるようになると、今度は選手がそれを忘れるという現象が起きます。
この段階ではコーチは選手へ質問して思い出させるコーチングを行います。

そして最後に、選手が無意識で行えるようになっているかをチェックします。

>>参考:サッカーコーチが選手に戦術的スキルを獲得させる4つのステップ

結果論ではなく、目に見えない現象を指摘する

戦術的な指導の最大のポイントは選手の頭の中を見る作業です。

前述したプレーのプロセスであるPAD+EのPADの部分。
ここにフォーカスしてコーチングを行います。

実際、これはとても難しい方法にはなりますがコーチとしては必ず身につけておくスキルです。

現象として起きた結果に対して指摘するのではなく、選手の頭の中を深く観察しながらコーチングする。

これにより、戦術メモリーを増やすだけでなく、選手との信頼関係もできますね。

>>参考:選手が上手くならないサッカーコーチの特徴・現象を捉える基本スキル

コーチの指摘を聞いたら上手く行くという事が重要

最後にかなり本質的な事を。

それは、コーチの戦術的な指導を選手が実行したらプレーが上手く行くということです。

戦術的な指導をしてもそれが選手のプレー改善につながらなければ意味がありません。

また僕ら大人が持っている戦術的な知識を分かりやすく子どもたちに伝える必要もあります。

コーチが言っていることが難しすぎてよく分からない、言われた通りやってみたけど上手く行かなかった。

これらのことが続くとそもそも選手たちがコーチの話を聞いてくれなくなります。


常に選手の目線に立って、分かりやすい言葉と理屈で導いていく事が大切です。

以上、今回は戦術メモリーとは何か、指導のポイントについて解説しました。
子どもたちの戦術力を高めるには、コーチが持っている知識だけでなくそれを落とし込むコーチングもとても重要な要素ですね。