
こんにちは。講師のカズです。
サッカーコーチをしていると「子どものやる気やモチベーション」に関して悩む指導者の方は多いと思います。
・試合に負けても悔しくなさそう。
・練習中にダラダラしている。
・どうやったらもっとやる気が出るのか?
不安になっていろいろ調べると、だいたい「褒めるコーチング」とか「選手の気持ちを聞こう」などの答えに行き着きます。
でも実際に指導現場に立つと上手く行かない…
今回はジュニアサッカーコーチがよく陥る「子どものモチベーションのステップを理解せず適切でないコーチングをしてしまう」という問題について詳しく解説します。
ぼくも過去には上手くやる気を引き出せない事もありましたが、25年の指導経験を経て今ではレベルに応じてどのようなコーチングが必要か分かるようになりました。
この記事はこんな方が対象です。
✅子どもにやる気を感じない時どうすればいい
✅褒める声かけをすればいいの?
✅もっと向上心を持って欲しい
✅チーム内にやる気がある子とそうでない子が混在する
今回はこういった問題を解決します。
ポイントは子どもが現在どの地点にいるか?でコーチングを変化させることです。
すぐに実践できる内容なので指導現場でぜひ試してみてください。
✔︎Contents
①コーチングのポイントは「今どの段階にいるかを見極める」こと
②うまく行かない原因はコーチング内容がレベルに合っていない
③好きになるまでの具体的なコーチング
④好きになった後の具体的なコーチング
⑤まとめ
⑥動画で見たい方
①コーチングのポイントは「今どの段階にいるかを見極める」こと

上の図は子どもがサッカーを始めてから高いレベルを目指すようになるまでのモチベーションのステップのイメージ図です。
大きく2つの段階に分かれます。
①「サッカーが好きになる」
②「高いレベルを目指す」
注意:
この記事ではAを低学年、Bを中学年、Cを高学年と大まかなイメージで解説していますが、実際には個人によって異なります。
これは選手のサッカーに対する動機が現在どこにあるかによってコーチングの内容や選手へのアプローチを変える目安になっています。
解説します。
①A君の場合
この段階では
「まだサッカーを始めたばかりで、友達がいるから、何となく」
という状態。
ここでのコーチの仕事は
「もっと上手くなりたい」という状態に動機を変化させることを目標とします。
従って
「身体を動かすことを楽しませる」
「褒めるコーチング」
がメインになります。
現場よりの具体策で言うと
「コーチといて楽しい・面白い」
「コーチから褒められた」
ということで
「次も練習に行きたい」や「自己肯定感を高める」
必要があります。
この段階で「サッカーが上手くなりたければもっと練習しよう」などのコーチングは響きませんし苦痛になります。
②B君の場合
この段階では
「もっとサッカーをしたい・もっと上手くなりたい」
という状態から次の
「本格的にサッカーをしたい・サッカー選手になりたい」
といったステップを目指します。
サッカーにのめり込んで行く段階です。
他の遊びよりも「サッカーをしたい」と思うのもこの段階で、ここが「競技としてのサッカーのスタート地点」になります。
C君の場合
この辺りになると
「サッカー選手になりたいなどの具体的な目標」
が生まれます。
そしてここからは「サッカーが好き」な気持ちを失わないようにしながら
「サッカー選手として高いレベルを目指すなら」といった教育的な要素が増えてきます。
例えば「ライバルに勝つには努力を継続する」こと。
この段階は「サッカーが楽しいの質」がA君の段階とは大きく異なります。
子どものサッカーに対するモチベーションの段階が違えば、アプローチの方法を変えるのは当然ですよね。
②うまく行かない原因はコーチング内容がレベルに合っていない

この図から分かるように、選手に対するアプローチがレベルに合っていない時には「選手には何も伝わらない」どころか「サッカーが嫌になるきっかけ」を与えてしまいます。
例えばAの段階にいる子どもに対して「もっと練習しないと上手くならないよ」と言ったところで、まだそれは必要な声かけではありません。
反対にCの段階にいる子どもに対して「褒めるコーチングだけ」を繰り返しても「コーチの要求レベルが低すぎて」必要な刺激を与えられません。
日本のジュニア年代のコーチングの議論では「褒める指導」とか「自主性」、「やる気を出すには〇〇」など漠然といしたものが多く、そもそも「選手の状態」や「どのステップを踏ませるか」といった具体的な方法が見当たりません。
私はこの「選手のモチベーションの段階」をよく観察し、それぞれのレベルで選手が必要とする声かけを行なっています。
③好きになるまでのコーチング
最初は何となく始めたサッカーですが、コーチの仕事は「サッカーが大好きになること」に全力を注ぎます。
✔︎ポイント
・カンタンなことでもできたら褒める
・できなくても励ます or 少し頑張ればできることをさせる
・成功体験を積み上げる
・退屈しないように工夫する
・ユーモアを交えて盛り上げる
・ケンカやルールを守らないなどはキチンと注意する
ひたすら選手を楽しませ『次の練習が楽しみ!』という状態を目指します。
④好きになった後のコーチング
子どもがサッカーが好きになって「もっと上手くなりたい」と思い始めたら「競技としてのサッカー」のスタート地点です。
ここからは「サッカー的な内容」を深く掘り下げていきます。
コーチングも「サッカーが上手くなるには」といったことを諭して行きます。
ただ、この段階に入ったからといって、いきなり過度な要求はダメです。
「勝利を目指すことの重要性」「努力を継続しないと上手くならない」「仲間を助けること」などなど、「真剣にサッカーに取り組む上での必要なこと」を積み上げていきます。
ただし、焦ってはいけません。
つねに「今一番ベストなアプローチは何か?」を模索しながら「選手の心に響くコーチング」を行います。
時には一つ前の段階に戻ることも必要で、選手の状況に応じて調整を繰り返します。
⑥まとめ
日本での「ジュニア年代のコーチング」に関する議論を見ていると、「確かにそうだけどしっくりこない」や「それって全てに当てはまらない」という漠然とした疑問があると思います。
が、結局のところ「対象となる選手の段階が明確になっていない」ことがほとんどです。
サッカー指導のリアルな現場では、「サッカーを始めたばかりの子ども」「試合に勝たせたい」「チーム内の選手のやる気がバラバラ」などいろんな問題を含んでいます。
そういった「様々なケース」「指導者の葛藤」を抜きにした「教科書的なもの」では指導は上手くいきません。
自身のコーチングを考える時に、この「子どものモチベーションのステップ」を参考にアプローチ方法を考えてみてください。